ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の小さな会社を経営しています。先日、30代の社員から「最近、眠れなくて仕事に集中できない。うつ病かもしれないので、休みたい」と相談を受けました。
確かに、ここ数週間、元気がなく、ミスも増えている様子でした。会社としては本人の健康が一番ですが、「すぐに休職させてよいのか」「診断書は必要か」「他の社員への影響はどうするか」など、どう対応すべきか分かりません。
このような相談を受けたとき、会社として最初に何をすべきでしょうか。
お悩み
- 「うつ病で休みたい」と言われたら、まず何をすればいい?
- 診断書は必要?すぐに休ませるべき?
- 会社として気をつけるべきポイントは?
結論:まず「話を聴く」「医師の診断を促す」「休職制度を説明する」の3ステップ
結論から申し上げますと、「うつ病で休みたい」と相談されたときに会社がすべき初動対応は、「話を丁寧に聴く」「医師の診断を受けてもらう」「休職制度を説明する」の3つです。
初動対応の3ステップ
- まずは落ち着いて、本人の話を聴く(否定しない・焦らせない)
- 専門医(心療内科・精神科)の受診を促し、診断書の提出を求める
- 就業規則の休職制度を説明し、今後の流れを共有する
焦って判断せず、一つずつ丁寧に進めることが、本人にとっても会社にとっても最善の結果につながります。
まずは本人の話を丁寧に聴く
プライバシーに配慮した場所で話を聴く
- 周りに人がいない個室や会議室を使う
- 時間に余裕を持って、焦らせずに話を聞く
- 可能であれば、人事担当者や信頼できる上司が同席する
言ってはいけない言葉の例
× 「気のせいじゃない?」
× 「みんな大変なのは同じだよ」
× 「そんなことで休むの?」
× 「うつ病なんて甘えだ」
× 「前にも同じようなこと言ってたよね」
こうした言葉は、相談者を追い詰め、症状を悪化させるおそれがあります。
適切な対応の例
○ 「話してくれてありがとう。詳しく聞かせてください」
○ 「最近、つらい思いをしていたんですね」
○ 「会社としてできることを一緒に考えましょう」
○ 「無理をしないでくださいね」
本人が安心して話せる雰囲気をつくることが、第一歩です。
聞いておきたいポイント
- いつ頃から、どんな症状があるか(眠れない、食欲がない、気持ちが沈む、など)
- 病院には行ったか、通院しているか
- 現在、仕事を続けるのはどれくらいつらいと感じているか
- どんな配慮があれば、今は働けそうか(時短・業務調整など)
この段階では、無理に詳しく聞き出す必要はありません。本人のペースに合わせることが大切です。
医師の診断を受けてもらう
専門医への受診を促す
うつ病かどうかの判断は、会社ではできません。必ず、専門医(心療内科・精神科)の診断を受けてもらうよう促します。
受診を促す際のポイント
- 「会社として、あなたの健康が一番大事です」
- 「専門の先生に診てもらって、正しい対応を一緒に考えましょう」
- 「診断書を出してもらえれば、会社としても休職などの手続きがスムーズに進みます」
強制ではなく、「あなたのために必要なこと」として伝えることが大切です。
診断書の提出を求める
休職や勤務の調整を行う場合、会社として客観的な根拠が必要です。
医師の診断書には、次のような内容が記載されます。
- 病名(うつ病、適応障害など)
- 休養の必要性と期間(「〇週間の自宅療養が必要」など)
- 勤務についての注意事項(「残業禁止」「軽作業のみ」など)
診断書は、就業規則に基づいた休職手続きを進めるための重要な書類になります。
受診を拒否された場合
本人が受診を拒否する場合は、無理に強制することはできません。
ただし、「診断書がないと、会社として正式な休職手続きができない」ことを説明し、理解を求めましょう。
休職制度を説明する
就業規則の休職制度を確認する
自社の就業規則に、休職に関する規定があるか確認します。
休職制度でよく定められている内容
- 休職の事由(病気、ケガなど)
- 休職期間(最長〇か月まで、など)
- 休職中の給与の扱い(無給、一部支給、など)
- 休職中の社会保険料の取り扱い
- 復職の条件
本人に今後の流れを説明する
診断書が提出されたら、次のような流れを丁寧に説明します。
- 休職の開始日と期間
- 休職中の給与の有無
- 傷病手当金の申請方法(健康保険から支給される制度)
- 休職中の連絡方法(月1回程度の状況確認など)
- 復職の流れ(診断書の提出、面談、段階的復職など)
不安を取り除くため、「分からないことがあればいつでも相談してください」と伝えておくことも大切です。
職場環境を見直す
うつ病の原因を振り返る
本人の体調不良が、職場環境に原因がある場合、会社として改善が必要です。
よくある原因
- 長時間労働・過重な業務
- 上司や同僚との人間関係
- ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)
- 業務内容の急激な変化
- プライベートの問題(家族の介護、経済的な悩みなど)
再発防止のための配慮
職場に原因がある場合は、次のような対応を検討します。
- 業務量の見直し・分担の調整
- 上司や配属先の変更
- 残業の削減・勤務時間の調整
- ハラスメント防止研修の実施
- 相談窓口の設置(産業医・外部相談窓口など)
他の社員への配慮
プライバシーを守る
休職することになった場合、他の社員への説明は慎重に行います。
- 本人の病名や詳しい事情は、必要最小限の関係者のみで共有
- 他の社員には「体調不良のため休職」と伝える程度にとどめる
- 噂話にならないよう、管理職から注意を促す
業務の引き継ぎをスムーズに
休職によって他の社員に負担が集中しないよう、
- 業務の引き継ぎを計画的に行う
- 必要に応じて、派遣社員やアルバイトの補充を検討
- 他のメンバーの残業時間や負担感を定期的に確認
「休職者を支えるために、他の社員が潰れる」ことのないよう、配慮が必要です。
よくある質問
Q1:診断書がないと、休ませてはいけない?
A:診断書がなくても、本人が「体調が悪い」と訴えている場合は、有給休暇や欠勤扱いで休ませることは可能です。
ただし、正式な休職手続きには診断書が必要になります。
Q2:休職中の給与は支払う必要がありますか?
A:法律上、休職中の給与を支払う義務はありません。
ただし、就業規則で「休職中は〇割支給」と定めている場合は、それに従います。
また、健康保険から「傷病手当金」が支給される制度があります。
Q3:小さい会社で休職制度がない場合は?
A:就業規則に休職制度がない場合でも、欠勤扱いで休ませることは可能です。
ただし、トラブル防止のため、今後のために休職制度を整備することをおすすめします。
まとめ
「うつ病で休みたい」と相談されたときの初動対応は、
- まずは本人の話を丁寧に聴き、否定しない
- 専門医の受診を促し、診断書の提出を求める
- 就業規則の休職制度を説明し、今後の流れを共有する
- 職場環境を見直し、再発防止策を検討する
- 他の社員への配慮も忘れない
という流れで進めることが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、
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などを通じて、中小企業でも無理なく実行できるメンタルヘルス対応をサポートしています。
「社員から相談を受けたが、どう対応すればよいか分からない」
「休職制度を整えたい」
そんなときは、まずはお気軽にご相談ください。

