ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員30名の会社を経営しています。先日、部下から「上司の言い方がキツい。これ以上続くならパワハラで訴えます」と言われました。
上司本人は「指導のつもりだった」「仕事なので当然の注意だ」と言っていますが、部下はかなり怒っており、「もう一緒に働けない」とまで言っています。
このまま放置すると、会社としてパワハラを放置したと言われないか不安ですし、上司・部下どちらの言い分が正しいのかも判断がつきません。
このような場合、会社として、まず何をすべきでしょうか。
お悩み
- 「パワハラで訴える」と言われたら、まず何をすればいい?
- 上司と部下のどちらの言い分を信じればいい?
- 会社として自分を守るために、最初にやっておくべきことは?
結論:感情的にならず「事実を集める」ことが最優先。
結論から申し上げますと、「パワハラで訴える」と言われたときに、会社がまずすべきことは、感情的に反応せず、事実を集める体制を整えることです。
初動で押さえたい3つのポイント
- 相手の話を最後まで聴き、「記録」に残す
- すぐに上司側の話も聞き、「一方の話だけで判断しない」
- 必要に応じて、一時的に距離をとる(配置・指示の出し方の工夫など)
「うちにはパワハラなんてない」「訴えるなんて大げさだ」と片付けてしまうのが一番危険です。
一方で、その場で「パワハラ認定」してしまうのも早計です。冷静に事実を集めることが、会社を守る一番の近道になります。
まずは「話を聴き、記録する」
「訴える」と言われても、慌てて否定しない
- 「そんなのパワハラじゃないよ」とすぐに否定しない
- 「一度、詳しく状況を聞かせてください」と落ち着いて対応する
- 感情的になっている場合は、時間と場所を変えて改めて話を聞く
聞いておきたいポイント
可能な範囲で、次のようなことを整理します。
- いつ(日時・期間)
- どこで(会議室・現場・チャット上など)
- 誰から(上司・先輩・同僚など)
- どんな言葉・態度があったのか(できるだけ具体的に)
- そのとき、どう感じたのか(怖かった、屈辱的だった、など)
- メール・チャット・録音など、残っているものがあるか
必ずメモを残す
- 面談した日付・時間
- 誰と話したか
- 話の要点
を簡単で構いませんので、メモに残してください。
これは、後から「会社はちゃんと話を聞いていたのか」と問われたときの、大切な証拠になります。
上司側(指摘された側)からも話を聞く
一方の話だけで判断しない
- 部下から話を聞いた後、別のタイミングで上司側からも事情を聞きます
- このとき、「あなたが悪いと決めつけている」という雰囲気にならないよう注意します
聞き方の例
- 「こういう相談が来ています。まずは、あなたの見方や状況を教えてください」
- 「どのような指導をしたつもりだったのか」
- 「相手の表情や反応をどう感じていたか」
上司側の言い分も、記録に残す
- いつ・どんな場面で、どのような指導をしたのか
- 他の社員にも同じような指導をしているのか
- 注意したきっかけになったミスや行動
などを聞き取り、こちらもメモに残します。
一時的に距離をとる配慮も検討する
同じ部署・同じチームで顔を合わせ続けると、感情が悪化しやすい
- 一時的に業務の指示系統を変える(他の管理職から指示を出す)
- 座席配置やシフトを工夫して、直接の接触を減らす
- 在宅勤務や別業務への一時的な配置替えを検討する
これだけで問題が「解決」するわけではありませんが、
「とりあえずこれ以上、関係がこじれないようにする」ための大事な一歩になります。
「パワハラかどうか」の前に、会社としてのルールを確認
パワハラの典型パターンを押さえておく
一般的に、次のような言動はパワハラになりやすいと言われています。
- 人前で執拗に怒鳴る、人格を否定する
- 明らかにこなせない量の仕事を一人に押し付ける
- 仕事とは関係のない私生活に過度に立ち入る・からかう
- 無視・隔離・仲間外れにする
一方で、仕事上必要な範囲の注意や指導は、パワハラには当たらない場合もあります。
ただし、「言い方がきつすぎる」「何度も同じことを執拗に責める」といった場合は、注意が必要です。
就業規則やハラスメント規程の確認
- 自社の就業規則に、パワハラに関する条文があるか
- ハラスメント防止のルール・相談窓口が決まっているか
- 管理職にどこまでの権限と責任があるか
こうしたルールがあいまいな場合は、今回のケースをきっかけに、整備を進めることも大切です。
会社としての「対応方針」を整理する
事実に応じて、次のような対応を検討します
- 上司の言動が行き過ぎている場合
→ 言い方・指導の仕方の見直し、注意・指導、場合によっては懲戒の検討 - 双方のコミュニケーションのすれ違いが大きい場合
→ 第三者を交えた面談、業務の進め方の整理、期待値のすり合わせ - 部下側にも問題がある(度重なるミスや遅刻など)場合
→ 指導内容自体は必要だが、「やり方」を変える(人前で怒鳴らない、言い方を変える など)
大事なのは「会社として動いた」という事実
- 相談を受けた
- 話を聞いた
- 双方から事情を確認した
- 必要な配慮や指導を行った
この流れを、きちんと記録に残しておくことが、会社を守る大きな力になります。
よくある質問
Q1:「訴える」と言われたら、すぐ謝ったほうがいい?
A:すぐに「会社が悪かった」と謝るのは避けた方がよいです。
事実関係がはっきりしないうちに謝罪すると、「会社もパワハラを認めた」と受け取られるおそれがあります。
まずは、「話を聞かせてください」「きちんと確認します」と伝えましょう。
Q2:録音されているかもしれないと思うと不安です
A:今の時代、会話を録音されている前提で話すくらいがちょうどよいです。
裏を返せば、「冷静に・丁寧に対応していれば、録音されても困らない」と考えることもできます。
Q3:小さな会社でも、ハラスメントの相談窓口は必要?
A:従業員が少なくても、「相談があれば誰が対応するのか」を決めておくことが大切です。
経営者本人でも構いませんし、社労士・産業医など外部の相談先を決めておく方法もあります。
まとめ
「パワハラで訴える」と言われたときこそ、
- 感情的にならず、冷静に話を聴き、記録する
- 一方の話だけで判断せず、上司側にもきちんと事情を聞く
- 必要に応じて、一時的に距離をとるなどの配慮を行う
- 会社としてのルールと対応方針を整理し、「動いた事実」を残す
ことが、会社と従業員の両方を守る初動対応になります。
上本町社会保険労務士事務所では、
- パワハラ相談があったときの社内フロー作り
- ハラスメント規程・就業規則の整備
- 管理職向けの「言い方・指導の仕方」研修
などを通じて、中小企業でも無理なく実行できるハラスメント対策をサポートしています。
「このケースはパワハラに当たるのか不安」
「対応を間違えてトラブルになるのが怖い」
そんなときは、一度ご相談いただければ、自社の状況に合わせた対応方法を一緒に整理していきます。

