最新の雇用・労働関連ニュースをお届けします
春の訪れとともに、新年度を迎える準備が本格化する時期となりました。
企業の人事労務担当者の皆様におかれましては、年度末の業務と新年度の計画策定でご多忙のことと存じます。
今回は、2025年の法改正情報や最新の雇用・労働関連ニュースをお届けし、皆様の業務に役立つ情報を提供してまいります。
今月は、2025年4月から施行される育児・介護休業法の改正や雇用保険法の改正など、就業規則の見直しが必要となる法改正情報を中心に、人事労務担当者が押さえておくべきポイントをご紹介します。
また、厚生労働省が発表した「外国人労働者の雇用状況」や「出生数の統計」など、企業の人材戦略に影響を与える最新データについても解説いたします。
企業の持続的な成長と健全な労働環境の維持に向けて、本ニュースレターが皆様のお役に立てれば幸いです。
2025年の法改正に対応する就業規則見直しのポイント
就業規則の見直しは、法令遵守と従業員の働きやすい環境づくりのために不可欠です。特に2025年の法改正に対応するためには、具体的なポイントを押さえた見直しが必要です。
2025年の主要法改正と就業規則への影響
育児・介護休業法の改正
- 子の看護休暇から子の看護等休暇への変更:対象範囲が小学校3年生修了までに拡大され、感染症に伴う学級閉鎖や入園・入学式、卒園式などの事由も追加されるため、就業規則の該当条項の修正が必要です。
- 所定外労働制限対象の拡大:3歳未満から小学校就学前の子を養育する労働者まで対象が広がるため、関連規定の見直しが必要です。
- テレワーク規定の整備:短時間勤務制度の代替措置としてテレワークが追加されるため、テレワーク関連規定の新設または改定が必要です。また、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務が課されます。
高年齢者雇用安定法の改正
- 65歳までの雇用確保が完全義務化:2025年4月1日以降は、希望者全員を65歳まで雇用する必要があります。労使協定による継続雇用対象者の限定措置が終了するため、就業規則の改定が必要です。
雇用保険法の改正
- 給付制限期間の短縮:自己都合退職者の給付制限期間が2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。
- 就業手当の廃止:就業促進手当の見直しにより就業手当が廃止され、就業促進定着手当も引き下げられるため、関連する説明や案内の修正が必要です。
就業規則見直しの基本ステップ
- 現状の就業規則の分析
- 運用実態と規定内容の乖離がないかチェック
- 過去の労務トラブルの原因となった規定の確認
- 他社の同様の規定との比較
- 法的要件の確認
- 2025年法改正への対応事項の洗い出し
- 労働基準法の必要記載事項の確認
- 関連する労働関係法令との整合性確認
- 従業員からのフィードバック収集
- 従業員アンケートの実施
- 部門別ヒアリングの実施
- 労働組合との協議(組合がある場合)
就業規則見直しの注意点
法的リスクの回避
- 不利益変更への対応:労働条件の不利益変更となる場合は合理性の確保と従業員との協議プロセスの記録保持が重要です。
- コンプライアンス対策:法改正への適時対応と監督官庁への届出手続きの遵守が必要です。
従業員への周知徹底
- 効果的な周知方法:説明会の開催(対面・オンライン)や社内イントラネットでの告知を行いましょう。
- 周知時の重要ポイント:改定理由の明確な説明、変更点の具体的な解説、施行時期の明確化が重要です。
専門家の意見を取り入れる
- 相談すべき専門家:社会保険労務士、弁護士、産業医(健康管理に関する規定)に相談しましょう。
- 専門家活用のポイント:法的妥当性の確認、労務リスクの事前把握、業界特有の課題への対応を依頼しましょう。
就業規則見直し後の効果測定
従業員満足度の向上
- 定量的な測定指標:離職率の変化、有給休暇取得率、残業時間の推移を確認しましょう。
- 定性的な評価方法:従業員満足度調査、1on1面談での意見収集を実施しましょう。
業務効率の改善
- 生産性指標の測定:一人当たりの業務処理時間、時間外労働の削減率を確認しましょう。
- 働き方の変化:フレックスタイム制度の利用率、テレワーク実施率を測定しましょう。
法令遵守の強化
- コンプライアンス体制:労務監査の実施結果、法令違反件数の推移を確認しましょう。
- リスク管理指標:労務トラブルの発生件数、ハラスメント相談件数を測定しましょう。
就業規則の見直しは単なる法的対応にとどまらず、企業文化や従業員満足度の向上にも直結する重要な取り組みです。2025年の法改正に備え、計画的かつ丁寧な見直しを行うことで、企業の持続的な成長と健全な労働環境の維持につながります。
上本町社会保険労務士事務所の「就業規則の見直しポイント:最新法改正に対応するために」からもご確認いただけます
【最新の雇用・労働関連ニュースピックアップ】
1. 外国人労働者、最多230万人に増加
日本で働く外国人労働者は2024年10月末時点で過去最多の230万2587人となりました。前年比25万3912人増で、増加率は12.4%です。人手不足の深刻化を背景に増加が続いており、特定技能の在留資格を持つ外国人も増加しています。企業の人材確保戦略において重要な情報です。
ニュースソース: NHK, 2025年1月31日
2. 「130万円の壁」対策で企業に補助金
厚生労働省は、会社員に扶養されるパートらの社会保険料負担が生じる「130万円の壁」対策として、従業員の手取り収入の減少を賃上げなどで緩和した企業に対し、従業員1人当たり最大75万円を補助する方針を発表しました。中小企業の人事制度に関わる重要な情報です。
ニュースソース: 日本経済新聞, 2025年2月20日
3. バイト学生の健康保険料免除、「年収150万円未満」に拡大へ
厚生労働省は、アルバイト学生の健康保険料免除の基準を「年収150万円未満」に拡大する方針です。現行制度より適用範囲が広がり、学生を雇用する企業の人事管理に影響する重要な情報です。
ニュースソース: 日本経済新聞, 2025年2月24日
4. 出生数72万人余りで過去最少を更新
2024年の出生数は72万988人と、前年より3万7000人余り減少し、統計開始以降最少となりました。少子化の進行は労働力人口の減少につながり、中小企業の人材確保や事業継続に影響する重要な情報です。
ニュースソース: NHK, 2025年2月27日
5. 同一労働同一賃金見直しへ――厚労省
厚生労働省が同一労働同一賃金制度の見直しに着手します。正規・非正規労働者間の待遇差の是正に関する現行制度の課題や改善点について検討が進められる見込みです。
ニュースソース: 労働新聞社, 2025年2月18日
【助成金・補助金情報】
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給額変更について
令和7年度の変更点
令和7年度からキャリアアップ助成金(正社員化コース)の支給額が大幅に見直されます。現行制度では有期契約労働者を正社員に転換した場合、中小企業に対して1人あたり80万円(2期に分けて各40万円)が支給されていますが、令和7年度からは対象者によって支給額が異なる仕組みとなります。
支給額の変更内容
【重点対象者】支給額:80万円(変更なし)
以下のいずれかに該当する方を正社員化する場合は、現行通り80万円(第1期40万円、第2期40万円)が支給されます。
- 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
- 雇入れから3年未満でも過去から不安定雇用が継続している労働者
- 人材開発支援助成金の対象訓練を受けた者
- 派遣労働者
- 母子家庭の母または父子家庭の父
【上記以外の対象者】支給額:40万円(半減)
重点対象者に該当しない有期雇用労働者を正社員化する場合は、第1期分の40万円のみの支給となり、実質的に支給額が半減します。
変更の背景
この変更は、厚生労働省の令和7年度予算概算要求において示されたもので、キャリアアップ助成金全体の予算規模も令和6年度の1,106億円から962億円へと約15%減少しています。長期的に不安定な雇用状態にある労働者や特に支援が必要な対象者への支援に重点を置く方針への転換と考えられます。
企業の対応策
正社員化を検討している企業は、対象者が重点対象者に該当するかを確認し、該当しない場合は令和7年3月31日までに正社員転換を完了することで、現行の支給額を受けられる可能性があります。また、人材開発支援助成金の対象訓練を実施することで、重点対象者として80万円の支給を受けられる可能性もあります。
なお、正社員化の際には、賃金が減額されていないことや、就業規則に必要な規定が整備されていることなど、他の支給要件も引き続き満たす必要があります。
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