ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員25名の会社を経営しています。半年前にメンタル不調で休職した社員から、「体調が良くなったので、来月から復職したい」と連絡がありました。主治医の診断書には「復職可能」と書かれています。
しかし、以前も一度復職した後にまた休職になった経緯があり、今回も本当に大丈夫なのか不安です。会社としては「戻ってきてほしい」という気持ちもあれば、「また同じことになるのでは」という心配もあります。
復職の可否を、会社としてどう判断すればよいのでしょうか。また、復職を認める場合、どんな準備や配慮が必要でしょうか。
お悩み
- 主治医が「復職可能」と言っても、会社はそのまま受け入れるべき?
- 復職の可否を判断する基準は?
- 復職させた後、また休職にならないための工夫は?
結論:主治医の意見は参考にしつつ、会社として「働ける状態か」を総合的に判断する
結論から申し上げますと、主治医の「復職可能」という診断書があっても、それだけで復職を決めるのではなく、会社として「実際に働ける状態かどうか」を総合的に判断する必要があります。
復職可否の判断で重要な3つのポイント
- 主治医の診断書だけでなく、産業医や会社の面談を通じて本人の状態を確認する
- 「通勤ができるか」「定時勤務ができるか」など、具体的な基準で判断する
- 復職後の配慮(業務内容・勤務時間の調整など)を事前に準備する
無理な復職は、本人にとっても会社にとってもマイナスになります。慎重に、しかし前向きに判断を進めることが大切です。
主治医の診断書と会社の判断の違い
主治医の「復職可能」は、あくまで医学的な意見
主治医が「復職可能」と判断するのは、主に次のような観点です。
- うつ症状や不安症状が軽減している
- 通院治療を継続できる状態にある
- 日常生活が送れるようになっている
ただし、主治医は職場の業務内容や労働環境を詳しく知らない場合も多く、「日常生活ができる=フルタイムで働ける」とは限りません。
会社が判断すべきは「実際に働ける状態か」
会社としては、次のような点を確認する必要があります。
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤できるか
- 週5日・1日8時間(所定労働時間)の勤務ができるか
- 業務に必要な集中力・判断力が戻っているか
- 職場の人間関係やストレスに耐えられる状態か
主治医の意見を尊重しつつ、会社として独自に判断することが認められています。
復職前に本人と面談する
面談で確認したいポイント
復職希望の連絡を受けたら、まずは本人と面談の機会を設けます。
体調・生活リズム
- 毎日決まった時間に起きられているか
- 食事・睡眠は規則正しく取れているか
- 通院や服薬は続けているか
復職への意欲と不安
- 復職に対してどう感じているか(前向きか、不安が強いか)
- 以前休職した原因について、どう考えているか
- 復職後、どんな配慮があれば安心して働けそうか
通勤・勤務のイメージ
- 通勤ラッシュの時間帯に通勤できそうか
- 最初から定時勤務ができそうか、それとも時短勤務が良いか
産業医がいる場合は、産業医面談も実施
産業医がいる場合は、産業医にも本人の状態を確認してもらい、復職可否についての意見を求めることが望ましいです。
復職可能かどうかの判断基準を確認する
一般的な復職可能の目安
厚生労働省の指針などでは、次のような状態が復職可能の目安とされています。
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
- 決まった勤務日に、決まった勤務時間の就労が継続してできる
- 業務に必要な作業ができる
- 職場の上司・同僚とコミュニケーションが取れる
「7~8割の回復」が一つの目安
完全に元通りでなくても、「残業なしで定時勤務ができる」レベル(7~8割程度の回復)であれば、復職を検討できると考えられています。
就業規則の復職基準も確認
自社の就業規則に、復職の条件が書かれている場合は、それに従って判断します。
例:「復職には、主治医の診断書の提出と、会社が指定する医師の診察を受けることが必要」など
復職を認める場合の「復職プラン」を作る
いきなりフルタイム勤務ではなく、段階的な復帰も検討
復職直後から以前と全く同じ勤務を求めると、再発のリスクが高まります。
段階的復職の例
- 最初の1か月:9時~15時の短時間勤務(残業なし)
- 2か月目:9時~17時の定時勤務(残業なし)
- 3か月目以降:通常勤務に戻す
業務内容の調整
- 最初は負担の軽い業務から始める
- 責任の重い判断や、プレッシャーの大きい業務は当面避ける
- 上司や同僚が様子を見守りやすい配置にする
定期的な面談の実施
復職後も、定期的に(1週間~2週間に1回程度)本人と面談し、体調や業務の負担感を確認します。
復職を見送る(延期する)場合の対応
復職が難しいと判断した場合
面談や産業医の意見をもとに、「まだ復職は難しい」と判断した場合は、その理由を本人に丁寧に説明します。
説明のポイント
- 「まだ生活リズムが整っていないようだ」
- 「通勤の練習がもう少し必要だと思う」
- 「あと1か月様子を見て、再度面談しましょう」
一方的に拒否するのではなく、「あなたが安心して働けるように」という姿勢で伝えることが大切です。
休職期間の上限も確認
就業規則で定めた休職期間の上限が近づいている場合は、その点も含めて本人と話し合います。
上限を超えても復職が難しい場合、自然退職や解雇となる可能性があることも、事前に説明しておく必要があります。
再発を防ぐための職場環境の見直し
休職の原因を振り返る
メンタル不調の原因が、
- 長時間労働
- 人間関係
- 業務の過重な負担
- ハラスメント
など、職場環境にあった場合は、同じ環境に戻すと再発のリスクが高まります。
配置転換や業務分担の見直しも検討
- 上司を変える
- 部署を変える
- 業務の一部を他の人に分担する
といった対応が可能であれば、検討することも大切です。
よくある質問
Q1:主治医の診断書と、会社の判断が違う場合はどうなる?
A:主治医の意見は尊重しますが、最終的な復職の可否を判断するのは会社です。
ただし、一方的に拒否すると不当な扱いと言われるリスクもあるため、産業医の意見や面談内容などをもとに、慎重に判断しましょう。
Q2:復職後、すぐにまた体調を崩した場合は?
A:再度休職となる可能性があります。その場合、前回の休職期間と通算されることが多いです。
就業規則に「通算○か月まで」と定めがある場合は、その上限を超えないよう注意が必要です。
Q3:小さい会社で産業医がいない場合は?
A:産業医がいない場合は、主治医の診断書と、人事や経営者による面談で判断します。
必要に応じて、外部の産業医サービスや、社労士・専門家に相談することもできます。
まとめ
メンタル不調で休職した社員の復職可否は、
- 主治医の診断書だけでなく、会社として「働ける状態か」を総合的に判断する
- 復職前に面談を行い、生活リズム・通勤・業務遂行能力を確認する
- 復職を認める場合は、段階的な勤務や業務調整などの「復職プラン」を作る
- 再発を防ぐため、職場環境の見直しも並行して行う
という流れで進めることが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、
- メンタル不調社員の休職・復職に関する就業規則の整備
- 復職面談の進め方・判断基準の作り方
- 産業医との連携や外部相談窓口の紹介
などを通じて、中小企業でも無理なく実行できる復職支援の仕組みづくりをサポートしています。
「復職を認めてよいか判断に迷う」
「復職後の対応に不安がある」
そんなときは、まずはお気軽にご相談ください。

