健康診断と就業規則【健康経営と就業規則】4

健康経営と就業規則

健康診断と就業規則

前回は、メンタルヘルス対策と就業規則の関係について解説しました。今回は、健康経営の重要な柱である健康診断に焦点を当て、就業規則における健康診断関連の規定について詳しく見ていきます。

健康診断の実施に関する就業規則の規定

健康診断実施の法的根拠

労働安全衛生法では、事業者に対して従業員の健康診断実施を義務付けています。具体的には以下の健康診断が法定されています。

  • 雇入時健康診断(労働安全衛生法第66条第1項):従業員を雇い入れる際に実施
  • 定期健康診断(労働安全衛生法第66条第1項):1年以内ごとに1回、定期的に実施
  • 特殊健康診断(労働安全衛生法第66条第2項):有害業務に従事する労働者に対して実施
  • 海外派遣労働者の健康診断(労働安全衛生法第66条第3項)
  • 給食従業員の検便(労働安全衛生法第66条第3項)

中小企業においても、これらの健康診断は法的義務であり、確実に実施する必要があります。特に、常時使用する労働者が50人未満の事業場であっても、定期健康診断の実施は免除されません。

就業規則に盛り込むべき健康診断関連の規定

健康診断に関する就業規則の規定には、以下の内容を盛り込むことが重要です。

1. 健康診断の種類と実施時期

第〇条(健康診断)
会社は、従業員に対して、以下の健康診断を実施する。
(1) 雇入時健康診断:従業員を雇い入れる際に実施する。
(2) 定期健康診断:年1回、定期的に実施する。
(3) 特殊健康診断:有害業務に従事する従業員に対して、特別の項目について実施する。
(4) その他法令で定められた健康診断:必要に応じて実施する。

中小企業の場合、特に定期健康診断の実施時期を明確にしておくことが重要です。例えば、「毎年4月から6月の間に実施する」など、具体的な時期を規定しておくと良いでしょう。

2. 健康診断の受診義務

第〇条(健康診断の受診義務)
従業員は、会社が指定する健康診断を受診しなければならない。ただし、医師による健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出した場合は、この限りではない。
2 従業員が正当な理由なく健康診断の受診を拒否した場合、会社は就業を禁止することがある。

健康診断は労働者の安全と健康を守るために実施するものであり、従業員には受診義務があることを明確にしておくことが重要です。特に中小企業では、「忙しい」などの理由で健康診断を受けない従業員がいる場合があるため、受診の重要性と義務を強調する規定が効果的です。

3. 健康診断費用の負担

第〇条(健康診断費用)
会社が指定する健康診断の費用は、会社が負担する。
2 従業員が自主的に受診する人間ドックなどの費用については、別に定める基準に従い、会社は補助金を支給することがある。

法定健康診断の費用は事業者負担であることを明確にするとともに、任意の健康診断(人間ドックなど)に対する会社の補助制度がある場合は、その概要も規定しておくと良いでしょう。

4. 健康診断結果の通知と記録

第〇条(健康診断結果の取扱い)
会社は、健康診断の結果を従業員に通知するとともに、健康診断個人票として5年間保存する。
2 健康診断の結果は、従業員の健康管理及び適正配置、作業環境の改善等の目的以外には使用しない。

健康診断結果の通知義務と記録の保存期間を明記するとともに、健康情報の取扱いに関するプライバシー保護の観点も盛り込むことが重要です。

5. 健康診断実施時の勤務扱い

第〇条(健康診断受診時間)
会社が実施する健康診断は、原則として所定労働時間内に行うものとし、その時間は労働時間として取り扱う。
2 会社の指示により所定労働時間外に健康診断を受診した場合は、別に定める基準により手当を支給する。

法定健康診断は事業者の義務であるため、その受診時間は労働時間として扱うべきです。特に中小企業では、業務の都合で健康診断の時間確保が難しい場合もありますが、従業員が安心して受診できるよう配慮することが重要です。

6. 健康診断結果に基づく就業上の措置

第〇条(健康診断後の就業上の措置)
会社は、健康診断の結果、従業員の健康を保持するために必要があると認めるときは、医師の意見を聴いた上で、当該従業員の実情を考慮して、次の措置を講じることがある。
(1) 就業場所の変更
(2) 作業の転換
(3) 労働時間の短縮
(4) 深夜業の回数の減少
(5) その他健康保持上必要な措置
2 従業員は、前項の措置を受けた場合には、その指示に従わなければならない。

健康診断の結果、健康上の問題が見つかった従業員に対して、適切な就業上の措置を講じることは事業者の義務です。特に中小企業では、代替要員の確保が難しい場合もありますが、従業員の健康保持を優先する姿勢を明確にしておくことが重要です。

7. 健康診断結果の報告義務

第〇条(健康診断結果の報告)
従業員は、会社が実施する健康診断以外で受診した健康診断において、業務遂行に支障をきたす可能性のある所見が認められた場合は、速やかに会社に報告しなければならない。

従業員自身が受診した健康診断で業務に影響する可能性のある所見が見つかった場合の報告義務を規定しておくことで、会社として適切な対応を取ることができます。

8. ストレスチェックとの関連

第〇条(ストレスチェックと健康診断)
会社は、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止を図るため、定期健康診断とは別に、年1回、ストレスチェックを実施する。
2 ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、面接指導を希望する従業員に対しては、医師による面接指導を行う。
3 会社は、面接指導の結果に基づき、必要に応じて就業上の措置を講じる。

従業員50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務付けられています。50人未満の事業場では努力義務ですが、メンタルヘルス対策の一環として実施することが望ましいため、就業規則に規定しておくと良いでしょう。

中小企業向けの健康診断規定作成のポイント

中小企業が健康診断に関する就業規則を作成する際は、以下のポイントに留意すると効果的です。

1. シンプルで実行可能な内容にする

中小企業では、人的・財政的リソースの制約があるため、理想的だが実行困難な規定よりも、シンプルでも確実に実行できる内容にすることが重要です。例えば、健康診断の実施時期を集中させて効率的に管理するなどの工夫を規定に反映させると良いでしょう。

2. 外部リソースの活用を前提とした規定にする

中小企業では、産業医の選任義務がない場合も多いため、地域産業保健センターや健康保険組合、自治体の保健師など、外部リソースの活用を前提とした規定を盛り込むことも有効です。

第〇条(外部資源の活用)
会社は、従業員の健康管理を効果的に行うため、地域産業保健センター、健康保険組合等の外部資源を積極的に活用する。

3. 健康診断の受診率向上策を盛り込む

中小企業では、健康診断の受診率が低いことが課題となる場合があります。受診率向上のための具体的な取り組みを規定に盛り込むことも効果的です。

第〇条(健康診断の受診促進)
会社は、従業員の健康診断受診率100%を目指し、以下の取り組みを行う。
(1) 健康診断実施日の複数設定
(2) 受診しやすい健康診断実施場所の選定
(3) 未受診者への個別フォロー

4. 健康診断結果の活用方法を明確にする

健康診断を実施するだけでなく、その結果を従業員の健康管理や職場環境の改善にどのように活用するかを明確にすることが重要です。

第〇条(健康診断結果の活用)
会社は、健康診断の結果を以下の目的で活用する。
(1) 従業員個人の健康管理支援
(2) 職場環境の改善
(3) 健康増進施策の立案
2 会社は、健康診断結果の集団分析を行い、全体的な健康課題の把握に努める。

健康診断に関する就業規則の規定は、単なる法令遵守のためだけでなく、従業員の健康保持・増進と企業の持続的成長を支える重要なツールです。特に中小企業では、経営者の健康経営に対する理解と熱意が規定に反映されることで、より効果的な健康管理が実現します。

規定の作成後も、その内容を従業員に周知し、実際の運用状況を定期的に確認・改善していくことが、健康経営の成功には不可欠です。

健康診断結果に基づくフォローアップの方法

健康診断を実施するだけでなく、その結果に基づいて適切なフォローアップを行うことが健康経営の要です。特に中小企業では、限られた資源の中で効果的なフォローアップを行うことが重要になります。ここでは、健康診断結果に基づくフォローアップの方法と、それを就業規則に反映させる際のポイントを解説します。

1. 事後措置の法的義務と就業規則への反映

労働安全衛生法第66条の7では、事業者は健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師の意見を聴いた上で、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講じなければならないと定めています。この法的義務を就業規則に明確に規定することが重要です。

第〇条(健康診断後の就業上の措置)
会社は、健康診断の結果、従業員の健康を保持するために必要があると認めるときは、医師の意見を聴いた上で、当該従業員の実情を考慮して、次の措置を講じる。
(1) 就業場所の変更
(2) 作業の転換
(3) 労働時間の短縮
(4) 深夜業の回数の減少
(5) その他健康保持上必要な措置
2 従業員は、前項の措置を受けた場合には、その指示に従わなければならない。

特に中小企業では、代替要員の確保が難しい場合もありますが、従業員の健康保持を優先する姿勢を明確にしておくことが重要です。

2. 保健指導と健康相談の実施

健康診断で異常所見が見つかった従業員に対する保健指導は、労働安全衛生法第66条の7に基づく事業者の義務です。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが効果的です。

第〇条(保健指導)
会社は、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める従業員に対して、医師または保健師による保健指導を行う。
2 前項の保健指導の対象となった従業員は、保健指導を受けなければならない。
3 会社は、従業員の健康保持増進のために必要な健康相談の機会を提供する。

中小企業では、産業医の選任義務がない場合でも、地域産業保健センターなどの外部資源を活用して保健指導を実施することが可能です。例えば、以下のような外部資源活用の規定も有効です。

第〇条(外部資源の活用)
会社は、従業員の健康管理を効果的に行うため、地域産業保健センター、健康保険組合等の外部資源を積極的に活用する。
2 従業員は、会社の指示または自らの希望により、地域産業保健センターの医師等による面接指導や健康相談を受けることができる。

3. 再検査・精密検査の受診勧奨と管理

健康診断で「要再検査」「要精密検査」と判定された従業員の二次検診受診率を高めることは、疾病の早期発見・早期治療につながります。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが効果的です。

第〇条(再検査・精密検査)
会社は、健康診断の結果、再検査または精密検査が必要と判断された従業員に対して、医療機関での受診を勧奨する。
2 従業員は、前項の勧奨を受けた場合には、速やかに医療機関を受診し、その結果を会社に報告するよう努めなければならない。
3 再検査または精密検査に要する時間は、可能な限り就業時間外に設定するものとするが、やむを得ない場合は就業時間内の受診を認めることがある。

特に中小企業では、従業員一人ひとりに声をかけて受診を促すことが効果的です。また、再検査・精密検査の受診状況を管理するための仕組みを整備することも重要です。

4. 健康管理区分に基づく体系的フォローアップ

健康診断結果を健康管理区分として整理し、それぞれの区分に応じた事後措置を明確にすることで、組織的・体系的な健康管理が可能になります。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが効果的です。

第〇条(健康管理区分)
会社は、健康診断の結果に基づき、従業員の健康状態を以下の区分に分類し、適切な事後措置を講じる。
(1) A区分(異常なし):特に措置は必要ない
(2) B区分(要観察):経過観察、生活指導
(3) C区分(要医療):医療機関の受診勧奨、就業上の措置の検討
(4) D区分(要就業制限):就業制限、配置転換等の実施
2 健康管理区分の判定は、産業医または会社が委託した医師が行う。

中小企業では、シンプルな区分けにすることで、管理の負担を軽減することも検討すると良いでしょう。例えば、「健康」「要観察」「要医療・要就業制限」の3区分にするなどの工夫も有効です。

5. 長期的な健康管理計画の策定

健康診断結果に基づいて、従業員一人ひとりの長期的な健康管理計画を策定することも効果的なフォローアップ方法です。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが考えられます。

第〇条(健康管理計画)
会社は、健康診断の結果に基づき、必要に応じて従業員の健康管理計画を策定する。
2 健康管理計画には、健康上の課題、改善目標、具体的な取り組み内容、フォローアップの方法等を記載する。
3 従業員は、自らの健康管理計画に基づき、健康保持・増進に努めなければならない。

中小企業では、全従業員を対象とした健康管理計画の策定が難しい場合もあるため、健康リスクの高い従業員を優先的に対象とするなどの工夫も考えられます。

6. 職場環境の改善

健康診断結果の集団分析を行い、職場全体の健康課題を把握した上で、職場環境の改善につなげることも重要なフォローアップです。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが効果的です。

第〇条(職場環境の改善)
会社は、健康診断結果の集団分析を行い、職場全体の健康課題を把握するとともに、必要に応じて以下の職場環境改善を行う。
(1) 適切な温度・湿度・照度の維持
(2) 受動喫煙防止対策の実施
(3) 作業環境の定期的な測定と改善
(4) 人間工学に基づく作業環境の整備
2 従業員は、職場環境の改善に協力するとともに、整備された環境の維持に努めなければならない。

中小企業では、大掛かりな環境改善が難しい場合もありますが、コストをかけずに実施できる改善策(例:作業台の高さ調整、休憩時間の見直し、換気の徹底など)から取り組むことが重要です。

7. 健康教育・健康増進活動の実施

健康診断結果から見えてきた健康課題に対応するための健康教育や健康増進活動を実施することも効果的なフォローアップです。就業規則には以下のような規定を盛り込むことが考えられます。

第〇条(健康教育・健康増進活動)
会社は、健康診断結果から見えてきた健康課題に対応するため、以下の健康教育・健康増進活動を実施する。
(1) 健康セミナーの開催
(2) 運動促進プログラムの提供
(3) 食生活改善のための情報提供
(4) 禁煙支援プログラムの実施
2 従業員は、自らの健康保持・増進のため、前項の活動に積極的に参加するよう努めるものとする。

中小企業では、外部の健康増進プログラムの活用や、地域の健康イベントへの参加など、コストを抑えた取り組みも検討すると良いでしょう。

8. 中小企業向けフォローアップ実践のポイント

中小企業が健康診断結果に基づくフォローアップを効果的に実施するためのポイントは以下の通りです:

優先順位の明確化

限られた経営資源の中で効果的なフォローアップを行うためには、健康リスクの高い従業員や重要な健康課題に優先的に対応することが重要です。例えば、以下のような優先順位付けの規定を設けることも考えられます。

第〇条(フォローアップの優先順位)
会社は、健康診断結果に基づくフォローアップを効果的に実施するため、以下の優先順位に従って対応する。
(1) 就業制限が必要な従業員への対応
(2) 生活習慣病リスクの高い従業員への対応
(3) メンタルヘルス不調リスクのある従業員への対応
(4) その他の健康課題への対応

外部資源の積極的活用

中小企業では、健康管理の専門家を社内に配置することが難しい場合が多いため、地域産業保健センターや健康保険組合、自治体の保健師など、外部資源を積極的に活用することが効果的です。

従業員の自主性の尊重

中小企業の強みである「顔の見える関係性」を活かし、従業員の自主性や相互支援を促すアプローチも効果的です。例えば、健康づくりのための小グループ活動を奨励するなどの取り組みも考えられます。

定期的な見直しと改善

フォローアップの方法や優先順位は、従業員の健康状態や会社の状況に応じて定期的に見直し、改善することが重要です。就業規則にも、定期的な見直しに関する規定を盛り込むことが望ましいでしょう。

第〇条(フォローアップ方法の見直し)
会社は、健康診断結果に基づくフォローアップの方法について、年1回以上見直しを行い、必要に応じて改善する。

健康診断結果に基づくフォローアップは、単なる法令遵守のためだけでなく、従業員の健康保持・増進と企業の持続的成長を支える重要な取り組みです。特に中小企業では、限られた資源の中で効果的なフォローアップを実施するための工夫が求められますが、それが従業員の健康と企業の生産性向上につながることを認識し、積極的に取り組むことが重要です。

健康診断に関連する休暇や特別措置の規定

健康診断の受診を促進し、健康管理を支援するための休暇制度や特別措置を就業規則に規定することは、健康経営の重要な要素です。特に中小企業では、限られた人的資源の中で従業員の健康を守るために、効果的な休暇制度や特別措置の整備が求められます。

1. 健康診断受診のための時間的配慮

法定健康診断は事業者の義務であるため、その受診時間は労働時間として扱うべきです。これを就業規則に明確に規定することで、従業員が安心して健康診断を受診できる環境を整えることができます。

第〇条(健康診断受診時間)
会社が実施する健康診断は、原則として所定労働時間内に行うものとし、その時間は労働時間として取り扱う。
2 会社の指示により所定労働時間外に健康診断を受診した場合は、別に定める基準により手当を支給する。
3 会社は、業務の都合上、所定労働時間内に健康診断を実施することが困難な場合、健康診断実施日の勤務時間を調整することがある。

特に中小企業では、業務の都合で健康診断の時間確保が難しい場合もありますが、シフト調整や業務分担の見直しなどを行い、従業員が健康診断を受診しやすい環境を整えることが重要です。

2. 人間ドック・がん検診等のための休暇制度

法定健康診断以外の任意の健康診断(人間ドック、がん検診等)の受診を促進するための休暇制度を設けることで、従業員の健康意識向上と疾病の早期発見につながります。

第〇条(健康管理休暇)
会社は、従業員が人間ドックや各種がん検診等を受診する場合、年間2日を限度として健康管理休暇を付与する。
2 健康管理休暇を取得する場合は、原則として事前に受診予定日を会社に申請しなければならない。
3 健康管理休暇は、有給とする。
4 健康管理休暇は、半日単位で取得することができる。

中小企業では、予算の制約から有給の健康管理休暇の導入が難しい場合もあります。その場合は、無給の特別休暇とする、または年次有給休暇の取得を奨励するなどの方法も考えられます。また、半日単位での取得を認めることで、より利用しやすい制度となります。

3. 再検査・精密検査のための休暇制度

健康診断で「要再検査」「要精密検査」と判定された従業員が医療機関を受診するための休暇制度も重要です。

第〇条(再検査休暇)
会社は、健康診断の結果、再検査または精密検査が必要と判断された従業員が医療機関を受診する場合、必要な時間について再検査休暇を付与する。
2 再検査休暇は、年間3回を限度とし、1回につき半日を上限とする。
3 再検査休暇を取得する場合は、医療機関の予約証明書等を提出しなければならない。
4 再検査休暇は、有給とする。

中小企業では、再検査・精密検査の受診率が低いことが課題となる場合があります。休暇制度を設けることで受診のハードルを下げ、疾病の早期発見・早期治療につなげることができます。

4. 治療のための通院休暇

健康診断で発見された疾病の治療のための通院を支援する休暇制度は、従業員の健康回復と重症化予防に役立ちます。

第〇条(通院休暇)
会社は、健康診断の結果、治療が必要と診断された従業員が医療機関に通院する場合、月2回を限度として通院休暇を付与することがある。
2 通院休暇を取得する場合は、医療機関の診察証明書等を提出しなければならない。
3 通院休暇は、無給とする。ただし、本人の希望により年次有給休暇を充当することができる。

特に中小企業では、柔軟な勤務時間調整と組み合わせることで、より効果的な支援が可能になります。例えば、通院のための時差出勤や早退を認めるなどの柔軟な対応も検討すると良いでしょう。

5. 健康増進活動のための特別措置

健康診断結果に基づく健康増進活動への参加を促進するための特別措置も、健康経営の重要な要素です。

第〇条(健康増進活動)
会社は、従業員の健康増進を図るため、以下の活動を実施する。
(1) 健康セミナーの開催
(2) 運動促進プログラムの提供
(3) 食生活改善のための情報提供
(4) 禁煙支援プログラムの実施
2 前項の活動に参加する時間は、原則として就業時間外とするが、会社が特に認めた場合は、就業時間内の参加を認めることがある。
3 就業時間内に健康増進活動に参加する場合は、その時間は労働時間として取り扱う。

中小企業では、外部の健康増進プログラムの活用や、地域の健康イベントへの参加など、コストを抑えた取り組みも検討すると良いでしょう。また、就業時間外の健康増進活動に対するインセンティブ(参加ポイント制度など)を設けることも効果的です。

6. 健康優良者への特典

健康診断結果が良好な従業員や健康増進に積極的な従業員に対するインセンティブ制度は、従業員の健康意識向上に効果的です。

第〇条(健康優良者特典)
会社は、健康診断の結果が優良で、かつ健康増進活動に積極的に参加している従業員に対して、以下の特典を付与することがある。
(1) 健康奨励金の支給
(2) 健康関連グッズの贈呈
(3) 特別休暇の付与
2 前項の特典の詳細は、別に定める健康優良者特典規程による。

中小企業では、金銭的なインセンティブだけでなく、表彰制度や少額の健康グッズ提供など、予算に応じた特典を検討すると良いでしょう。

7. 病気休職からの復職支援措置

健康診断をきっかけに発見された疾病により休職した従業員の円滑な職場復帰を支援するための措置も重要です。

第〇条(復職支援措置)
会社は、健康診断の結果をきっかけに発見された疾病により休職した従業員の円滑な職場復帰を支援するため、以下の措置を講じることがある。
(1) 段階的な就業時間の延長
(2) 業務内容の段階的な拡大
(3) 定期的な面談によるフォロー
(4) 産業医等による復職支援プログラムの実施
2 前項の措置は、原則として最長3ヶ月間とし、従業員の状況に応じて個別に適用する。

中小企業では、専門的な復職支援プログラムの実施が難しい場合もありますが、地域産業保健センターなどの外部資源を活用することで、効果的な支援が可能になります。

8. 中小企業向け休暇・特別措置制度設計のポイント

中小企業が健康診断に関連する休暇や特別措置を効果的に設計するためのポイントは以下の通りです:

段階的な導入

すべての休暇制度や特別措置を一度に導入するのではなく、自社の状況や従業員のニーズに応じて段階的に導入することが現実的です。例えば、まずは健康診断受診時間の労働時間扱いを明確にし、次に再検査休暇を導入するなど、優先順位をつけて進めることが効果的です。

柔軟な制度設計

中小企業では、業務の都合や人員配置の制約から、画一的な休暇制度が機能しない場合があります。そのため、半日単位の取得を認める、時差出勤と組み合わせるなど、柔軟な制度設計を行うことが重要です。

コスト負担の考慮

有給の休暇制度は従業員にとって利用しやすいものですが、企業の財政状況によっては負担が大きい場合もあります。その場合は、一部を有給、一部を無給とするなど、バランスの取れた設計を検討することも一つの方法です。

外部資源の活用

健康増進活動や復職支援などでは、自社だけでの対応が難しい場合も多いため、地域の健康イベントや地域産業保健センターなどの外部資源を積極的に活用することが効果的です。

従業員の意見反映

休暇制度や特別措置の設計にあたっては、従業員の意見を聞き、実際のニーズに合った制度にすることが重要です。特に中小企業では、従業員との距離が近いという強みを活かし、使いやすい制度設計を心がけましょう。

健康診断に関連する休暇や特別措置の規定は、単なる福利厚生ではなく、従業員の健康保持・増進と企業の持続的成長を支える重要な投資です。特に中小企業では、限られた資源の中で効果的な制度設計を行うことが求められますが、それが従業員の健康と企業の生産性向上につながることを認識し、積極的に取り組むことが重要です。


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