従業員10名未満でも就業規則は必要?

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で小さな美容室を経営しています。
現在、スタイリスト3名とアシスタント2名の計5名で営業しています。
最近、従業員から「有給休暇は何日?」「ボーナスの基準は?」といった質問が増えました。遅刻が多いスタッフへの対応も悩みです。
知人からは「就業規則を作った方が良い」と言われましたが、「うちは少人数だから不要では?」という思いもあります
。法律的には必要でしょうか?作らないと何が問題になるのでしょうか?

お悩み

  • 従業員10名未満でも就業規則は必要?
  • 作らないと罰則はある?
  • 作成するメリットは?
  • 作るならどう進める?

結論:10名未満なら作成義務はありません(ただし作成推奨)

常時10名未満の職場には、就業規則の「作成・提出」の義務はありません。従業員5名の貴社は、法律上は作らなくても罰則はありません。ただ、人数が少なくてもルールが曖昧だとトラブルの芽は同じです。職場の決まりを見える化するため、作成をおすすめします。

「常時10名以上」とは?正確な基準を理解する
従業員数の数え方(誰を数えるか)

  • 含まれる人:正社員/パート・アルバイト(時間に関係なく)/契約社員/嘱託社員
  • 含まれない人:経営者・役員/派遣社員(派遣元でカウント)/業務委託・フリーランス

ポイント:「出勤人数」ではなく「雇用している人数」

  • 毎日10人が出勤している必要はありません。雇用契約が10人以上なら、作成義務が生じます。

事業場(店舗)単位で数える

  • 複数店舗がある場合は、企業全体ではなく店舗ごとに判断します。
    例:本店8名、A店5名、B店4名 → 各店が10名未満なら義務なし。

「常時」の意味

  • 日常的にその人数がいる状態を指します。
  • 繁忙期だけ一時的に10名を超えても「常時」にはあたりません。
  • ふだん8名で、短期間だけ12名でも、直ちに義務が生じるとは限りません。

10名未満でも就業規則を作成するメリット
メリット1:トラブルの予防

  • 口頭だけだと「聞いていない」「そんな約束はしていない」と食い違いが出やすくなります。文書で共通認識を作れば予防できます。

よくあるトラブル例

  • 有給休暇の日数・取り方が曖昧
  • 遅刻・欠勤の対応が不明確
  • 退職時の引き継ぎルールがない
  • ボーナスや昇給の基準が不透明

メリット2:従業員が安心して働ける

  • ルールが分かれば迷いが減り、新人も早く馴染めます。

メリット3:会社の秩序が守られる

  • 指導や注意の基準が明確になり、公平な対応ができます。

メリット4:業務の効率化

  • 勤務時間、休暇、給与計算などの決まりがはっきりして、判断の手間が減ります。

メリット5:助成金の準備がしやすい

  • 一部の助成金は就業規則の提出が必要な場合があります。整備しておくと手続がスムーズです。

10名未満の就業規則の効力は?

従業員10名未満でも、就業規則を作って周知すれば、社内ルールとして有効に機能します。提出義務はありませんが、社内の基準として運用できます。

よくある質問

Q1:10名未満なら労基署への届出は不要?
A:はい、不要です。任意で提出することもできますが、義務ではありません。

Q2:将来10名以上になったらどうする?
A:10名以上になった時点で、作成・届出の義務が生じます。すでに就業規則があれば、労基署への届出と従業員代表の意見書を追加するだけで済みます。

Q3:パートだけで10名いる場合は?
A:パート・アルバイトも従業員数に含まれます。パート10名なら、作成・届出の義務があります。


従業員10名未満の事業場には、就業規則の作成義務はなく、罰則もありません。ただ、作ることで得られる効果は大きく、

  • トラブルの予防
  • 従業員の安心感
  • 業務の効率化
  • 会社の秩序維持
    が期待できます。「義務がないから作らない」ではなく、「会社を守るため、従業員のために作る」という視点で検討してみてください。

上本町社会保険労務士事務所では、小規模事業者向けの「シンプルで使いやすい就業規則」づくりをサポートしています。

  • 「何から始めればいいか分からない」
  • 「自社に合った就業規則を作りたい」
    という方は、まずはお気軽にご相談ください。

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