ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の小さな会社を経営しています。ここ最近、
・始業時刻ギリギリ、あるいは数分遅れてくる社員
・事前申請なく早退してしまう社員
・スマホをいじりながらダラダラ仕事をしている社員
が目立つようになってきました。
就業規則には勤務時間や服務規律、懲戒の条文も入れているのですが、「注意しても、結局また同じことの繰り返し」で、どう対応すべきか悩んでいます。
懲戒処分を重くすれば良いのでしょうか?それとも、まずは指導から始めるべきでしょうか。懲戒規程をどう運用すればよいのか教えてください。
お悩み
- 勤務ルールが守られない社員に、どこまで注意・指導すべき?
- いきなり懲戒処分にしても良い?
- 懲戒規程を適切に運用するポイントは?
結論:いきなり懲戒ではなく、「ルールの明確化 → 指導 → 記録 → 段階的な対応」が基本
結論から申し上げますと、勤務ルール違反があるからといって、すぐに懲戒処分に踏み切るのは適切ではありません。
- まずは、就業規則に定めたルールを具体的に周知・説明する
- そのうえで、注意・指導を行い、その事実を記録しておく
- 改善が見られない場合に、就業規則に沿って段階的に懲戒を検討する
という流れが原則です。
懲戒処分は、最終的な手段と位置づけ、「指導しても改善が見られない」「他の社員にも悪影響が出ている」場合に、慎重に検討することが重要です。
勤務ルールを「具体的に」明確化する
ルールがあいまいだと、懲戒も運用できない
- 始業・終業時刻
- 休憩時間の取り方
- 無断遅刻・早退・欠勤の扱い
- スマホ使用や私用電話のルール
- 服装・身だしなみ・服務規律
これらが就業規則に書いてあっても、「社員から見ると分かりにくい」「どこまでがアウトか分からない」状態だと、トラブルになりやすくなります。
就業規則+社内ルールで具体化する
- 就業規則は「大枠のルール」
- 社内ルール・ハンドブック・朝礼での説明などで、「具体的な運用」を補う
たとえば、
- 「始業5分前には持ち場で作業開始できる状態にしておく」
- 「遅刻しそうなときは◯分前までに電話連絡」
- 「スマホは休憩時間以外はロッカーに保管」
といったレベルまで落とし込んで伝えると、社員もイメージしやすくなります。
注意・指導は「口頭だけで終わらせない」
まずは口頭での注意から
- 初回であれば、上司や経営者から個別に口頭で注意し、期待する行動を具体的に伝える
- その際、「何が・どの点で・どう問題なのか」をはっきりと伝える
例
「8時30分始業なのに、ここ数日8時35分前後の出社が続いています。会社としては、8時25分には職場にいる状態にしてほしいと考えています。」
注意したことをメモで残す
- メモで構いませんので、
- いつ
- 誰に
- どのような内容で注意・指導をしたか
を簡単に残しておきましょう。
これは、
- 「きちんと指導していた」という証拠
- 後で本人と話し合うときの整理材料
になります。
繰り返される場合は「書面での指導」へ
注意しても改善しない場合
- 同じことが何度も繰り返される場合は、書面で注意する段階に進みます。
- 「始末書」や「注意文書」などの形で、本人に反省や今後の取り組みを書かせる方法もあります。
書面指導のポイント
- 事実関係を具体的に記載(日時・内容・回数など)
- 就業規則の該当条文に触れ、「このまま改善がないと懲戒の対象になりうる」ことを明示
- 本人にも内容を確認させ、署名・押印をもらう(可能な範囲で)
ここまで行うことで、
- 本人の意識が変わるきっかけになる
- 将来的に懲戒処分を検討せざるを得なくなった場合の、重要な資料になる
という意味があります。
懲戒処分を検討する際の注意点
懲戒の種類は「段階」を踏む
就業規則に、たとえば次のような懲戒の種類が定められていることが多いです。
- けん責(注意処分:始末書提出など)
- 減給
- 出勤停止
- 諭旨解雇・懲戒解雇
勤務ルール違反の程度や回数、会社への影響を踏まえ、
- いきなり重い処分を出さない
- 同じような違反には、原則として同じレベルの処分を適用する
- 特定の社員だけ極端に重くしない(公平性)
といった点が重要です。
懲戒処分が「行き過ぎ」と判断されると…
- 懲戒処分自体が無効と判断されるリスク
- 不当な扱いとしてトラブルに発展する可能性
があります。
そのため、
- 事実関係がはっきりしているか
- 注意・指導のステップを踏んだか
- 他の社員とのバランスが取れているか
を確認したうえで、慎重に判断する必要があります。
ルール違反を「個人だけの問題」にしない
現場の実態とルールが合っていないことも多い
勤務ルールが守られない背景には、
- 業務量が多すぎて、ルール通りに動けない
- 管理職自身がルールを守っていない
- 現場の慣行と、就業規則の内容がズレている
といった、会社側の問題が隠れていることもあります。
ルールの見直しも並行して行う
- 守ることが現実的に難しいルールになっていないか
- 時代に合っていない規定が残っていないか
- 在宅勤務・フレックスなど、働き方との整合性が取れているか
勤務ルール違反が続く場合、「社員のマナーの問題」と片付ける前に、会社側のルール・運用にも課題がないかを一度確認することが大切です。
まとめ
勤務ルールが守られない社員への対応では、
- まずはルールの明確化と周知
- 次に、口頭での注意 → 記録 → 書面での指導
- それでも改善しない場合に、就業規則に沿って段階的な懲戒処分を検討
という流れが基本です。
同時に、
- ルールそのものが現場と合っているか
- 管理職も含め、会社全体でルールを守る雰囲気があるか
も見直すことで、「個人の問題」から「職場全体の改善」へとつなげることができます。
上本町社会保険労務士事務所では、
- 就業規則・懲戒規程の見直し
- 勤務ルールの整え方・伝え方
- 個別の問題社員対応についてのご相談
などを通じて、トラブルになりにくい懲戒規程の運用をサポートしています。
「注意はしているのに改善しない」
「懲戒を検討してよいのか不安がある」
そのようなお悩みがあれば、一度ご相談いただければ、自社の状況に合わせた対応方針をご一緒に整理していきます。

