ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で物流会社を営んでいます。従業員は正社員15名、契約社員10名、パート5名の計30名です。
これまで採用時期や条件交渉によって給与を個別に決めてきたため、同じような仕事をしていても給与がバラバラです。正社員の中でも差がありますし、パートと契約社員の時給も統一されていません。
最近、「同じ仕事をしているのに給料が違うのはおかしい」という声が従業員から上がってきました。「同一労働同一賃金」という言葉も聞きますが、何をどう対応すればいいのでしょうか?
お悩み
- 同一労働同一賃金とは何?
- 給与体系を統一しないとダメ?
- どこまで同じにする必要がある?
- 対応しないとどうなる?
結論:待遇差に合理的な説明が必要です
結論から申し上げますと、同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員(契約社員・パート・派遣社員)の間で、不合理な待遇差を設けることを禁止するルールです。
2020年4月から大企業、2021年4月から中小企業に適用されています。
ポイントは「すべて同じにする」ことではなく、待遇差がある場合に合理的な理由を説明できることです。
罰則はありませんが、説明義務違反や裁判で敗訴すると、賠償金の支払いや企業名公表のリスクがあります。
同一労働同一賃金とは
制度の目的
同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員の間で、不合理な待遇差をなくし、どのような雇用形態でも公正な待遇を確保することを目的としています。
対象となる従業員
- パート・アルバイト
- 契約社員(有期雇用労働者)
- 派遣社員
正社員同士の賃金格差は、原則として対象外です。
禁止される「不合理な待遇差」とは
同じ仕事をしているのに、雇用形態が違うという理由だけで待遇に差を設けることは不合理とされます。
ただし、以下の3つの要素を総合的に判断して、合理的な理由があれば待遇差は認められます。
① 職務の内容(業務内容と責任の程度)
② 職務内容・配置の変更範囲(転勤や配置転換の有無)
③ その他の事情(勤続年数、能力・成果など)
従業員から「なぜ正社員と待遇が違うのか」と質問された場合、合理的な理由を説明する義務があります。
説明義務違反には、行政指導や企業名公表のリスクがあります。
対応方法:今からできること
職務内容を比較する
正社員と非正規社員の業務内容と責任を比較しましょう。
待遇差の理由を明確にする
「なぜこの手当は正社員のみなのか」を説明できるようにします。
就業規則・賃金規程を見直す
待遇の決定基準を明文化します。
従業員への説明資料を作成する
質問された時に説明できるよう、資料を準備しておきましょう。
よくある質問
Q1:正社員とパートの時給を同じにしないとダメ?
A:いいえ、必ずしも同じにする必要はありません。
責任の重さや配置転換の範囲が異なれば、差を設けることは可能です。ただし、その理由を説明できることが重要です。
Q2:賞与は正社員だけでもいい?
A:理由次第です。
会社への貢献度に応じて支給する場合、同じ貢献をしている非正規社員にも支給が必要です。
Q3:対応していないと罰則がある?
A:直接的な罰則はありません。
ただし、説明義務違反は行政指導の対象となり、裁判で負けると賠償金を支払うリスクがあります。
同一労働同一賃金は、
正社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁止するルールです。
- 待遇差には合理的な理由が必要
- 説明義務が強化されている
- 対応しないと裁判リスクや企業名公表のおそれ
今のうちに待遇差の理由を整理し、
説明できる状態にしておきましょう。
上本町社会保険労務士事務所では、
同一労働同一賃金の診断から対応策の立案までサポートしています。
「自社の待遇差は問題ないか不安」
「説明できる基準を作りたい」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

