職場のルールを整えたい。就業規則を初めて作るには

ご相談内容【想定相談事例】

創業5年目、従業員が12名になった大阪市内の飲食店を経営しています。これまでは口頭での約束で回してきましたが、最近は勤務時間や休暇で行き違いが増えました。「そんなルール聞いていない」「他の人と条件が違う」といった声もあり、現場が混乱しています。知人から「就業規則を作った方が良い」と言われましたが、何から始めれば良いか分かりません。手間や費用も不安です。

お悩み

  • 就業規則は必ず作らないといけないの?
  • 何をどう書けばいいのか分からない
  • 作成にどれくらいの時間と費用がかかるの?
  • 従業員に反対されたらどうすればいいの?

結論:従業員10名以上なら作成・届出が必要です

いつも10人以上が働く職場では、就業規則を作って、所轄の労働基準監督署へ提出します(職場ごとの人数で判断、正社員・契約社員・パート・アルバイトを含みます)。
作成していないと、30万円以下の罰金になることがあります。
ただし、就業規則は「罰則を避けるため」のものではありません。職場のルールを見える化し、トラブルを防ぎ、日々の運用を楽にするための道具です。

就業規則とは?なぜ必要なのか

「職場のルールブック」
就業規則は、働くときの決まりをまとめた「会社のルール集」です。主に次の内容を定めます。

  • 勤務時間(いつからいつまで働くか)
  • 休日・休暇(いつ休めるか)
  • 賃金(いくら・どう支払うか)
  • 退職・解雇(やめるときの決まり)
  • 服務規律(職場でのマナーや守ること)

就業規則を作る4つのメリット

  • トラブルの予防
    ルールが文書で共通化され、「聞いていない」「言った・言わない」を避けられます。
  • 公平な運用
    全員に同じ基準を適用でき、不公平感が減ります。
  • 経営者の負担軽減
    判断基準が明確になり、都度の対応が少なくなります。
  • 信頼性の向上
    しっかりしたルールがある会社として、従業員や取引先の信頼が高まります。

就業規則に必ず書くこと(主な基本事項)
次の3領域は、必ず具体的に決めます。

  1. 時間のこと
    始業・終業時刻(例:9:00~18:00)、休憩(例:12:00~13:00)、休日(例:日曜・祝日)、有給休暇の付与・使い方
  2. お金のこと
    給料の決め方(例:月給・時給)、計算方法、締切日・支払日、支払い方法(振込など)、昇給の有無
  3. やめるときのこと
    退職の申し出期限(例:1カ月前)、解雇の理由と手続きの基本
    これらは生活に直結し、もっともトラブルになりやすい部分です。あいまいにせず、分かる言葉で書きます。

制度があれば書くこと(任意項目)
会社に制度がある場合は、次も記載します。

  • 退職金制度
  • ボーナス(賞与)
  • 各種手当(交通費など)
  • 懲戒(どんな場合に、どのような処分があるかの基本)
    制度がなければ書かなくて構いません。将来導入すると決めた制度は、開始日を決めてから規定できます。

就業規則を作る7つのステップ

ステップ1:現状の労働条件を整理する
今の運用をすべて書き出します。
チェックリスト例:

  • 勤務時間・休憩・休日
  • 有給休暇の付与と使い方
  • 賃金・残業代・各種手当
  • 制服やまかないの有無
  • 退職時のルール
    飲食店では、シフト制や深夜勤務など特有のルールも整理が必要です(締切・変更期限、終電配慮など)。

ステップ2:厚生労働省の「モデル就業規則」を参考にする
国のひな形が無料で公開されています。「モデル就業規則 厚生労働省」で検索すれば見つかります。そのまま使わず、自社の実態に合わせて直しましょう。

ステップ3:自社に合わせて原案を作成する
作成のポイント:

  • 分かりやすい言葉で書く
  • できるだけ具体的に書く
  • 実際に守れる内容にする

ステップ4:法律との整合性をチェック
次の基本ルールを確認します。

  • 労働時間:1日8時間・週40時間以内
  • 休憩:6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上
  • 休日:週1回または4週で4日以上
  • 最低賃金の遵守
  • 有給休暇の付与日数
    シフトや深夜が多い職場は、割増賃金の割合や、働く時間の上限、変形労働時間制の要否を先に決めるとスムーズです。不安がある場合は、社会保険労務士へご相談ください。

ステップ5:従業員代表の意見を聞く
原案を作成したら、従業員代表に内容を確認してもらい、意見書をもらいます(労働組合がない場合は、みんなで代表を選びます)。反対意見があっても効力は直ちに失われませんが、理解を得るために意見を取り入れる姿勢が大切です。

ステップ6:労働基準監督署に届け出る
提出書類は次の3点です。

  • 就業規則(2部)
  • 従業員代表の意見書(1部)
  • 届出書(労基署の様式)
    受付印が押された1部を会社で保管します。

ステップ7:従業員に周知する
作って終わりではありません。従業員がいつでも見られる状態にします。
周知方法の例:

  • 社内掲示板に掲示する
  • コピーを配布する
  • 共有フォルダに保存する
  • タブレットや端末で閲覧できるようにする
    周知が不十分だと、ルールとして争いになることがあります。改定した際は、適用日と変更点も分かるように示します。

よくある失敗と注意点

失敗例①:他社の就業規則をそのままコピーした
→ 自社に合わない内容となり、運用でつまずきます。
対策:必ず自社の実態に合わせてカスタマイズ。

失敗例②:理想を追いすぎた
→ 守れない内容は、後から変更しづらくなります。
対策:まずは運用可能なラインで設計。

失敗例③:作成後に放置した
→ 法改正や環境変化で内容が古くなります。
対策:年1回の見直しを目安に。

失敗例④:パート・アルバイトのルールが不明確
→ 正社員だけの規定だと、パートとのトラブルに。
対策:パート用の規定を別に作るか、本則に明記。

飲食店ならではの注意

  • シフトの決め方・変更期限、残業の事前申請
  • まかない・制服の貸与と返却
  • 深夜勤務・終電配慮、安全面の取り扱い
  • クレーム対応時の手順と記録
    これらを具体的に書くと、現場の混乱を防げます。

次のステップ:今すぐできること

  • 今の労働条件を書き出す(今日から可能)
  • モデル就業規則をダウンロード(厚生労働省サイト)
  • 従業員代表を誰にするか検討(1週間以内)
  • 社労士への相談を検討(不安な場合)

分からないことがあれば、まずは気軽にご相談ください。

上本町社会保険労務士事務所では、貴社の業種・規模・実情に合わせた「使える就業規則」づくりをサポートしています。
ご相談はお気軽にお問い合わせください。

上部へスクロール