賞与支給日在籍要件による受給権の合理性【大和銀行事件】

大和銀行事件

賞与の支給日に在籍していることを受給権の要件とする就業規則の合理性と効力に関するものです。

事案

原告は、大和銀行の行員であったが、昭和54年5月31日に退職した。大和銀行は、就業規則により、賞与の支給日に在籍している者に対してのみ賞与を支給すると定めており、原告に対しては、昭和54年度の賞与を支給しなかった。原告は、この賞与の支払いを求めて訴えを提起したが、一審、二審ともに敗訴したため、最高裁に上告した。

争点・結論

賞与の支給日に在籍していることを受給権の要件とする就業規則は、合理性を有するとして、原告の上告を棄却した。賞与は、労働に対応して発生する賃金と異なり、労使間の合意や使用者の決定を待って支給の都度確定されるものであるという考えに基づき、賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則は、労働者のモチベーションや離職防止のために必要かつ合理的なものであると判断した。

判旨

最高裁判所第一小法廷は、昭和57年10月7日に判決を言い渡し、原告の上告を棄却した。

解説

この判決は、賞与の支給日に在籍していることを受給権の要件とする就業規則の合理性と効力について、明確に示した重要な判例です。賞与は、労働に対応して発生する賃金と異なり、労使間の合意や使用者の決定を待って支給の都度確定されるものであるというのが、最高裁の基本的な考え方です。しかし、それだけでは、賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則が合理的であるということを示すには不十分です。そこで、最高裁は、賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則が、労働者のモチベーションや離職防止のために必要かつ合理的なものであるということを示しました。このように、賞与の支給日に在籍していることを受給権の要件とする就業規則は、合理性を有するということになります。この判決は、賞与の支給日に在籍していることを受給権の要件とする就業規則が多くの企業で採用されていることを考えると、実務上の意義が大きいと言えます。

関連条文:労働基準法第24条、第26条、民法第90条、第709条

大和銀行事件から学ぶべき事柄

賞与の性質: 賞与は、通常の賃金とは異なり、労使の合意や使用者の決定によって支給が決まる特別な報酬です。
在籍要件の合理性: 賞与の支給日に在籍していることを要件とする規則は、労働者の意欲向上や離職防止の観点から合理的であると認められます。
退職者の受給権: 支給日前に退職した労働者は、賞与の受給権がないとされることがあります。

関連判決

三菱重工業事件(最高裁昭和63年2月18日):賞与の支給日前に退職した者に対しても、賞与の支給日に在籍している者と同等の賞与を支給するという就業規則があった場合、その就業規則に基づいて賞与の支払いを受ける権利が発生するとした事例。

日本電信電話事件(最高裁平成3年7月9日):賞与の支給日前に退職した者に対しても、賞与の支給日に在籍している者と同等の賞与を支給するという就業規則があった場合、その就業規則は不合理であるとして無効とした事例。

注意すべき事柄

賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則や慣行を採用する場合は、その合理性を明確にする必要がある。例えば、賞与の支給日を決算期の中間時点とし、その時点での業績に応じて賞与を決定するというような方法が考えられる。

賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則や慣行を採用する場合は、その内容を従業員に周知徹底する必要がある。また、就業規則に明確に定めておくことが望ましい。

賞与の支給日に在籍している者に対してのみ支給するという就業規則や慣行を採用する場合は、賞与の支給日を恣意的に遅らせたり、賞与の支給額を不公平に決めたりすることは避ける必要がある。そうした行為は、従業員の信頼やモチベーションを損なうだけでなく、労働契約法や労働基準法に違反する可能性がある。

経営者・管理監督者の方へ

  • 賞与の支給要件として在籍条件を設けることは、従業員の勤労意欲向上や離職防止の観点から合理的と認められる可能性があります。ただし、要件の設定が恣意的でないこと、従業員への周知が適切に行われていることが前提となります。
  • 賞与の支給時期や金額の決定については、客観的かつ公正な基準を設けるべきです。賞与を不当に遅らせたり、支給額に不合理な格差を設けるような行為は避ける必要があります。
  • 就業規則の賞与支給条件は、法令や判例に照らして合理性が認められるよう、定期的な見直しを行うことが重要です。

従業員の方へ

  • 賞与の受給権は、就業規則で定められた要件を満たせば発生します。就業規則等で支給条件を確認し、疑問点があれば上司や人事部門に確認することが重要です。
  • 賞与の支給時期や金額の決定が不合理である場合は、使用者に説明を求めることができます。納得がいかない場合は、労働組合や労働基準監督署に相談するなど、適切な対応を取ることが重要です。
  • 退職前に賞与の受給権が発生していれば、退職後も賞与の支払いを求めることができる可能性があります。退職に際しては、賞与の取扱いについて確認しておくことをお勧めします。
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