過労死ラインを超える残業が発覚。会社の責任と改善策

ご相談内容【想定相談事例】

大阪府内で従業員30名のサービス業を営んでいます。繁忙期が続き、ここ数か月、管理職や一部の社員の残業時間が増えていました。先日、社外の専門家から「タイムカードを集計すると、数名の社員が数か月連続で過労死ライン(残業80時間超)に達している」と指摘を受けました。

本人たちは「大丈夫です」「まだ頑張れます」と言っていますが、会社としては健康面や法的なリスクが不安です。このような場合、会社の責任はどこまで問われるのでしょうか。また、どのような改善策を取るべきか教えてください。

お悩み

  • 過労死ラインを超える残業があると、会社の責任はどうなる?
  • 法律上、どこまで対応しないといけない?
  • 今からできる現実的な改善策は?

結論:健康障害リスクと法的リスクが高い状態。早期に「是正」と「仕組みづくり」が必須

結論から申し上げますと、過労死ラインを超える残業が続いている状態は、健康面・法的面ともに非常にリスクが高い状態です。

  • 労災認定(過労死・過労自殺など)の際に、長時間労働の有無は重視されます
  • 会社には、労働者の安全と健康に配慮する「安全配慮義務」があり、それを怠ると損害賠償責任を負う可能性もあります
  • 放置すれば、行政指導・是正勧告、労働基準監督署の調査につながるおそれもあります

一方で、「いきなり残業ゼロ」は現実的ではありません。
まずは、長時間労働の実態を正確に把握し、負担の大きい部署・人から優先的に、残業削減と業務の見直しに着手する必要があります。

過労死ラインとは何か

目安とされる時間外労働の水準

一般的に「過労死ライン」としてよく言われるのは、次のような水準です。

  • 月80時間を超える時間外・休日労働が続いている状態
  • 特に、2~6か月にわたり、この水準が続く場合は、健康障害との関連が強く疑われやすい

これは、脳・心臓疾患やメンタル不調などの発症と、長時間労働の関連性を判断する際の一つの目安として用いられています。

ポイントは「ラインぎりぎりでも安全とは言えない」こと

  • 79時間なら安全、という意味ではありません
  • 会社としては、このラインに近づかないように配慮する必要があります
  • 特定の人に負担が集中している場合は、特に注意が必要です

会社の責任の考え方(安全配慮義務)

安全配慮義務とは

会社には、従業員が安全に・健康を害さないように配慮する義務があります。
具体的には、

  • 無理な長時間労働をさせない
  • 健康診断を実施し、その結果に応じた配慮を行う
  • 長時間労働が続く社員に対して、医師の面接指導などを行う
  • メンタル不調のサインを見逃さないようにする

といった対応が求められます。

責任が問われやすくなるケース

  • 長時間労働が常態化していたのに、是正措置を取らなかった
  • 健康診断で「要精査」「要注意」と出ていたのに、そのまま放置していた
  • 本人や家族からの体調に関する訴えがあったのに、勤務を軽減しなかった

こうした事情があると、「安全配慮義務を尽くしていない」と判断される可能性が高まります。

実態把握とリスクの洗い出し

まずは数字で状況を確認

  • 過去数か月分の勤怠データ(タイムカード・システム)を確認
  • 従業員ごとに、
    • 月ごとの時間外・休日労働時間
    • 特に多い人、連続して多い人
      をリストアップする
  • 管理職・特定の部署に偏りがないかを見る

健康面の情報も合わせて確認

  • 健康診断の結果(要注意者、再検査対象者)
  • 最近の欠勤・遅刻・早退の状況
  • 上司から見て「疲れが溜まっていそうな人」がいないか

数字だけでなく、現場の感覚も含めてリスクの高い人を把握することが大切です。

緊急対応(これ以上悪化させない)

特に残業が多い人についての暫定措置

  • 一時的に残業時間の上限を設定し、それ以上はさせない
  • 業務量の調整(他のメンバーへの分担、外注の活用など)
  • 有給休暇の取得を促し、休養の機会をつくる

医師の面接指導の検討

  • 一定の長時間労働が続いた社員について、産業医や医療機関での面談を検討する
  • 本人が「大丈夫」と言っていても、専門家の目から健康状態を確認することが重要

ここでは、「これ以上悪化させないためのブレーキ」をかけるステップと考えてください。

業務の見直しと人員配置の工夫

業務を「洗い出す」

  • 長時間労働が多い部署・職種について、
    1日の仕事の流れ
    1週間の仕事のパターン
    を具体的に書き出してもらう
  • 「本当にその人でなければできない仕事」と、
    「他の人にも任せられる仕事」を分ける

人員配置・役割分担を見直す

  • 極端に負荷が集中している人の仕事を、複数人で分担できないか検討
  • パート・アルバイト・派遣などの活用も含めて、繁忙期の人員体制を検討
  • 管理職が一人で抱え込み過ぎている場合は、サポート役を付ける

「頑張りで何とかする」から、「仕組みと分担で何とかする」へと切り替えるイメージです。

ルールと仕組みの整備

36協定と就業規則の見直し

  • 現在の36協定の内容(上限時間・特別条項の有無)を確認
  • 実態と大きく乖離していないか、法令に適合しているかをチェック
  • 必要に応じて、現実的な範囲で残業時間の上限を下げることも検討

勤怠管理の仕組みを強化

  • タイムカード・勤怠システムでの正確な記録
  • サービス残業が発生しないよう、早出や持ち帰り残業にも目を配る
  • 一定時間を超える残業が続いている社員について、自動的にアラートが出るような運用を検討

管理職に対する教育・指導

  • 「長く働く人が偉い」という評価軸を見直す
  • 部下の残業時間を管理することも、管理職の重要な役割であることを伝える
  • 会議・打ち合わせの時間設定、業務の指示の仕方などを見直す

従業員とのコミュニケーション

一方的に「残業禁止」と言わない

  • いきなり「残業禁止」と言うと、現場は「仕事が回らない」と反発しやすくなります
  • まずは、会社として「長時間労働を減らしたい理由」(健康・家族・会社の継続性)を伝える
  • 改善の方向性を共有しながら、現場の意見も聞き、無理のない計画に落とし込んでいく

相談しやすい窓口をつくる

  • 体調や働き方について、上司や人事に相談しやすい雰囲気づくり
  • 「しんどい」と言えない空気が、過労死リスクを高めます
  • 必要に応じて、社外の相談窓口(産業医・専門家)も活用する

まとめ

過労死ラインを超える残業が発覚した場合、

  • その状態を放置すれば、健康障害リスク・法的リスクともに非常に高い
  • 「現状の見える化」→「緊急的なブレーキ」→「業務と人員の見直し」→「ルールと仕組みの整備」
    という流れで、段階的な改善が必要
  • 管理職の意識改革と、従業員とのコミュニケーションも不可欠

上本町社会保険労務士事務所では、

  • 残業時間の実態分析
  • 36協定・就業規則の見直し
  • 長時間労働是正に向けた社内ルール作りと運用支援

を通じて、「無理をさせない働き方」と「継続できる体制づくり」をサポートしています。

「過労死ラインと言われて不安」
「具体的に何から手をつければ良いか分からない」

そんなときは、一度ご相談いただければ、自社の状況に合わせた改善ステップをご提案します。

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