雇用契約書なしで働く社員がいる。リスクと改善方法は?

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で飲食店を経営しています。開業当初から勢いで従業員を雇ってきたため、雇用契約書を作成せずに口頭での約束だけで働いてもらっている社員が何名かいます。

最近、従業員から「給料の計算方法が分からない」「有給休暇は何日あるの?」といった質問が増えてきました。また、残業代をめぐってトラブルになりそうな雰囲気もあります。

今さらですが、雇用契約書がないことは法律的に問題があるのでしょうか?また、今からでも改善できる方法があれば教えてください。

お悩み

  • 雇用契約書がないのは違法?
  • どんなトラブルが起きる可能性がある?
  • 今から契約書を作れる?
  • 従業員に反発されない?

結論:違法ではないが、早急な改善が必要です

結論から申し上げますと、雇用契約書がないこと自体は違法ではありません。

雇用契約は口頭でも成立します。

しかし、労働条件通知書の交付は法律で義務付けられており、これがない場合は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、契約書がないことで、様々なトラブルが起きるリスクが非常に高くなります。

早急に雇用契約書と労働条件通知書を整備することをお勧めします。

雇用契約書がない場合の法的な位置づけ

雇用契約は口頭でも成立する

民法と労働契約法により、雇用契約は「働くこと」と「賃金を支払うこと」について、労使が合意すれば成立します。

つまり、口約束だけでも契約は有効です。

労働条件通知書の交付は義務

ただし、使用者には以下の労働条件を書面で明示する義務があります(労働基準法第15条)。

必ず書面で明示すべき項目

  • 労働契約の期間
  • 就業の場所・業務内容
  • 始業・終業時刻、休憩、休日
  • 賃金の決定・計算・支払方法、締切日・支払日
  • 退職に関する事項(解雇事由を含む)

これらを明示しない場合、30万円以下の罰金が科されます。

雇用契約書がない場合の5つのリスク

リスク①:「言った・言わない」のトラブル

口頭での約束だけでは、証拠が残りません。

よくあるトラブル例

  • 「月給30万円と聞いていたのに、実際は25万円だった」
  • 「残業代が出ると言われたのに支払われない」
  • 「転勤はないと言われたのに異動を命じられた」

証拠がないため、会社側の主張が認められにくく、不利な立場に立たされます。

リスク②:未払い残業代の請求

労働時間や残業代の計算方法が不明確だと、従業員から「未払い残業代がある」と主張された場合、会社側が反論できません。

最悪の場合、過去2年分(悪質な場合は3年分)の残業代を一括で請求される可能性があります。

リスク③:試用期間や固定残業代が無効に

契約書がないと、以下のような合意内容が無効と判断されるリスクがあります。

  • 試用期間中の条件
  • 固定残業代(みなし残業)
  • 転勤や配置転換の可能性

書面で明示していない場合、会社側の主張が認められないことがあります。

リスク④:不当解雇と判断される

解雇事由が明確でないと、正当な理由があっても「不当解雇」と判断され、多額の損害賠償を請求される可能性があります。

リスク⑤:会社の信用低下

労働基準監督署の調査で契約書不備が発覚すると、是正勧告を受け、企業イメージが損なわれます。

求人時にも「コンプライアンスが甘い会社」と見なされ、優秀な人材が集まりにくくなります。

改善方法:今からでもできること

ステップ1:現状の労働条件を整理する

まず、現在働いている従業員の労働条件を整理します。

  • 雇用期間(期間の定めの有無)
  • 勤務時間・休憩・休日
  • 給与(基本給、諸手当)
  • 業務内容

ステップ2:雇用契約書を作成する

労働条件通知書を兼ねた雇用契約書を作成します。

厚生労働省のひな形を参考にできます。

ステップ3:従業員に説明して署名をもらう

作成した契約書を従業員に渡し、内容を説明して署名をもらいます。

説明のポイント

  • 「今までの口約束を書面で確認するだけ」と伝える
  • 「トラブル防止のため、会社と従業員双方のため」と説明
  • 不利益変更がないことを明確にする

ステップ4:今後の運用ルールを決める

新規採用者については、必ず雇用契約書を交付するルールを徹底します。

よくある質問

Q1:今から契約書を作ると、従業員に疑われない?

A:丁寧に説明すれば大丈夫です。

「会社として労務管理を適正化するため」「トラブル防止のため」と説明すれば、多くの従業員は理解してくれます。

Q2:従業員が署名を拒否したら?

A:労働条件通知書は一方的に交付できます。

雇用契約書(双方の署名が必要)が難しい場合は、労働条件通知書だけでも交付しましょう。

Q3:過去の分も作り直す必要がある?

A:はい、できるだけ早く作成しましょう。

退職した従業員については必須ではありませんが、現在働いている従業員全員分を作成することをお勧めします。

Q4:契約書がない期間のトラブルは?

A:証拠が残っていれば対応可能です。

給与明細、タイムカード、メールなどの記録があれば、それらを証拠として対応できます。

まとめ

雇用契約書がないこと自体は違法ではありませんが、
労働条件通知書の交付義務違反となります。

  • 「言った・言わない」のトラブルが起きる
  • 未払い残業代請求のリスク
  • 不当解雇と判断されるリスク
  • 会社の信用低下

今からでも遅くありません。
現在働いている従業員全員に、
雇用契約書を作成・交付しましょう。

上本町社会保険労務士事務所では、
雇用契約書の作成から従業員への説明までサポートしています。

「何から始めればいいか分からない」
「従業員への説明が不安」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。


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雇用契約書なしで働く社員がいる。リスクと改善方法は?

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で飲食店を経営しています。開業当初から勢いで従業員を雇ってきたため、雇用契約書を作らず、口頭だけで働いてもらっている社員が何名かいます。
最近は「給料の計算方法が分からない」「有給は何日?」といった質問が増え、残業代をめぐる火種もあります。
今さらですが、雇用契約書がないのは問題でしょうか?いまからでも改善できますか?

お悩み

  • 雇用契約書がないのは違法?
  • どんなトラブルが起きやすい?
  • いま作っても大丈夫?
  • 従業員に反発されない?

結論:違法ではありませんが、早めの整備が必要です

雇用契約そのものは、口頭でも成立します。
いっぽうで、採用時に「労働条件を明示すること」は法律上の義務です。とくに重要な項目は書面(または電子交付)で示す必要があり、ここが不足していると法違反の指摘や罰則のリスクが生まれます。放置せず、雇用契約書と労働条件通知書を整えましょう。

雇用契約書がない場合の位置づけ

  • 雇用契約は口頭でも成立
    働く内容と賃金で合意があれば契約自体は有効です。
  • 労働条件の明示は「義務」
    採用時に、賃金・労働時間などの条件を明示します。重要項目は書面や電子での明示が求められます(名称は「労働条件通知書」と呼ばれることが多いです)。
  • よくある誤解を整理
    「雇用契約書がない=即違法」ではありません。ただし、明示義務を果たしていない(必要事項が抜けている・周知が不十分)ことは問題になります。

必ず明示したい主な項目(抜け漏れ注意)

  • 契約期間(有期か無期か)
  • 就業の場所・業務内容
  • 始業・終業、休憩、休日・休暇
  • 賃金の決め方・計算方法・締切日・支払日・支払方法
  • 退職・解雇に関する事項(解雇の事由など)
  • 短時間・有期の方がいる場合の追加明示(パート・有期向けの説明事項)

雇用契約書がないと起きやすい5つのリスク

  1. 「言った・言わない」の泥沼
    月給・手当・残業の取り決めが曖昧だと、双方で認識がズレます。証拠がなく、会社側の主張が通りにくくなります。
  2. 未払い残業代の請求
    労働時間の管理・計算方法が不明確だと、過去分の請求に反論しづらくなります。
  3. 試用・固定残業代の無効リスク
    書面で条件や内訳が明確でないと、合意が認められない場合があります。
  4. 不当解雇とみなされるおそれ
    解雇事由や手続が曖昧だと、正当な対応でも争いになりやすくなります。
  5. 信用低下(採用・監督対応)
    調査で不備が出ると是正対応が必要に。求人でも「管理が甘い会社」という印象につながります。

改善方法:いまからできる4ステップ
ステップ1:現状の条件を洗い出す

  • 雇用期間(定めの有無)、勤務時間・休憩・休日、有給の付与・管理、賃金(基本給・手当・残業の扱い)、業務内容・勤務地 を整理。

ステップ2:「労働条件通知書 兼 雇用契約書」を作る

  • 重要項目を網羅しつつ、実態に合わせた分かりやすいひな形に。固定残業や試用がある場合は内訳・期間・評価の考え方まで明確に。

ステップ3:丁寧に説明し、署名・交付

  • 伝え方のコツ
    • 「今までの取り決めを紙にまとめ、ズレをなくすためです」
    • 「会社と皆さん、双方の安心のためです」
    • 不利益が出る変更はしない(必要なら別途協議)ことを明確に。
  • もし雇用契約書への署名が難しい場合でも、労働条件通知書は交付してください(会社から一方的に交付できます)。

ステップ4:今後のルール化

  • 新規採用時は必ず書面(または電子)で明示・交付。
  • フォーマットと運用手順(説明→確認→保管)を社内で固定化。

よくある質問

Q1:いま作り直すと不信感を持たれませんか?

  • 説明の仕方で変わります。「トラブルを未然に防ぐため」「皆さんの安心のため」という目的を率直に伝えると理解されやすいです。

Q2:署名を断られたらどうしますか?

  • 雇用契約書は双方署名が原則ですが、労働条件通知書は交付できます。まずは通知書で条件を明確にし、対話を重ねていきましょう。

Q3:過去分もさかのぼって整備が必要?

  • いま働いている方の分は早めに整備を。過去の出来事は、給与明細・打刻・メール・LINEなどの記録を整理しておくと対応に役立ちます。

Q4:電子交付でも大丈夫?

  • 受領・閲覧が確実に担保できる方法なら可能です。紙でも電子でも、内容が正確で、本人が確認できることが大切です。


「雇用契約書なし」自体は直ちに違法ではありませんが、採用時の労働条件の明示は義務です。
いま整えれば、将来の大きなトラブルを避けられます。
まずは現状の条件を洗い出し、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」を作成・説明・交付するところからはじめましょう

上本町社会保険労務士事務所では、
ひな形の作成、現場向けの説明台本、固定残業・試用・シフトの設計、電子交付の手順づくりまでセットでお手伝いします。
「どこから手をつければ?」という段取りから一緒に整えますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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