制度概要
65歳超雇用推進助成金は、高年齢者が年齢に関わらず働き続けられる社会を実現するための制度です。事業主が65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢有期契約労働者の無期雇用転換を行った場合に助成されます。
重要なお知らせ:2025年4月から制度が改正され、申請手続きが大幅に簡素化されています。また、電子申請が可能になり、申請の利便性が向上しています。
この制度は、高年齢者の就業機会を広げ、企業の経験豊富な人材活用を促進することを目的としており、生涯現役社会の実現に向けた重要な施策となっています1。
2025年度の重要な変更点
申請手続きの簡素化
2025年4月1日から、支給対象事業主の要件における高年齢者雇用安定法の遵守期間の記載が削除され、申請手続きが簡素化されました。
申請期間の延長
申請期間が大幅に延長されています:
- 変更前:制度実施日の属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初~5開庁日
- 変更後:制度実施日の属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初~15日
電子申請の導入
2025年4月から電子申請が可能になり、申請の利便性が大幅に向上しています。これにより、申請書類の提出や進捗確認がオンラインで行えるようになりました。
助成金を利用するメリット
高齢者雇用の促進: 定年引上げや無期雇用転換により、高齢者が安心して働ける環境を整えられます
人材確保と活用: 経験豊富な高年齢者を活用することで、企業のノウハウ継承や組織力強化につながります
多様な働き方の支援: 高年齢者向けの柔軟な雇用管理制度を整備することで、多様な働き方に対応できます
人手不足対策: 少子高齢化による人手不足が深刻化する中、高年齢者の活用が企業の持続可能性に直結します
適用対象
対象となる事業者の条件
65歳超雇用推進助成金を申請するためには、以下の条件を満たす必要があります:
- 中小企業・小規模事業者であること: 資本金または従業員数によって定義されます
- 高年齢者を継続して雇用する意欲があること: 定年引上げや継続雇用制度導入の計画があることが必要です
- 労働関係法令を遵守していること: 労働基準法等の法令違反がないことが求められます
支援プランの概要
65歳超継続雇用促進コース
このコースでは、65歳以上への定年引上げ、定年廃止、または66歳以上の継続雇用制度導入に対する助成が受けられます。これにより、企業は高年齢者が長く働ける環境を整えることができます。
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
このコースでは、高年齢者向けに評価制度や職務設計などの雇用管理制度を整備した場合に助成されます。
支給条件:
- 助成率: 支給対象経費の60%(中小企業以外は45%)
- 実施期間: 1年以内
- 上限額: 60万円
高年齢者無期雇用転換コース
このコースでは、50歳以上かつ定年未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合に助成されます。
支給条件:
- 支給額: 対象労働者1人につき30万円(中小企業以外は23万円)
- 支給上限: 支給年度1事業所につき10人限度
- 実施期間: 2年~3年
支給額
65歳超継続雇用促進コース
① 65歳以上への定年引き上げの場合
| 対象社員数 | 65歳に引き上げ | 66~69歳(5歳未満の引き上げ) | 66~69歳(5歳以上の引き上げ) | 70歳以上 |
|---|---|---|---|---|
| 1~3名 | 15万円 | 20万円 | 30万円 | 30万円 |
| 4~6名 | 20万円 | 25万円 | 50万円 | 50万円 |
| 7~9名 | 25万円 | 30万円 | 85万円 | 85万円 |
| 10名以上 | 30万円 | 35万円 | 105万円 | 105万円 |
② 定年廃止または70歳以上への定年引き上げの場合
| 対象社員数 | 定年廃止 |
|---|---|
| 1~3名 | 40万円 |
| 4~6名 | 80万円 |
| 7~9名 | 120万円 |
| 10名以上 | 160万円 |
③ 希望者全員対象の66歳以上の継続雇用制度導入の場合
| 対象社員数 | 66~69歳への継続雇用引き上げ | 70歳以上への継続雇用引き上げ |
|---|---|---|
| 1~3名 | 15万円 | 30万円 |
| 4~6名 | 25万円 | 50万円 |
| 7~9名 | 40万円 | 80万円 |
| 10名以上 | 60万円 | 100万円 |
他社による継続雇用制度導入の場合
| 措置内容 | 支給額 |
|---|---|
| 他社による継続雇用制度導入(66~69歳) | 10万円 |
| 他社による継続雇用制度導入(70歳以上) | 15万円 |
申請手続き
申請の流れ
- 制度導入の検討・計画策定
- 制度の実施
- 申請書類の準備
- 申請書の提出(電子申請または郵送)
- 審査・支給決定
申請期間
制度実施日の属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初~15日(2025年改正により延長)
電子申請の活用
2025年4月から電子申請が可能になり、以下のメリットがあります:
- 24時間申請受付
- 書類の郵送不要
- 申請状況のリアルタイム確認
- 手続きの迅速化
必要書類
- 支給申請書
- 就業規則等の写し
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- その他制度実施を証明する書類
高年齢再就職給付金廃止との関連
重要な背景情報:高年齢再就職給付金が段階的に廃止されており、2025年4月から給付率が60歳以後の月額賃金の最大15%から段階的に引き下げられています。これにより、65歳超雇用推進助成金の重要性がより高まっています。
活用事例
製造業での定年引き上げと技術継承
ある中小製造業の企業では、熟練した高年齢者の技術を次世代に継承するため、65歳超雇用推進助成金を活用して定年を70歳に引き上げました。
成果:
- 技術継承の強化: 高年齢者による若手社員への技術指導が充実
- 人材不足の解消: 安定した人材確保の実現
- 助成金受給: 105万円の助成金を受給(対象者10名以上)
小売業での定年廃止と柔軟な働き方
ある小売業では、65歳超雇用推進助成金を活用して定年制を廃止し、高年齢者向けの新しい雇用管理制度を導入しました。
成果:
- 柔軟な働き方の実現: 高年齢者が自分のペースで働ける環境を構築
- 顧客サービスの向上: 経験豊富な高年齢者による接客で顧客満足度が向上
- 助成金受給: 定年廃止により160万円の助成金を受給
電子申請を活用した効率的な申請事例
ある企業では、2025年4月から導入された電子申請を活用し、申請手続きを大幅に効率化しました。
効果:
- 申請時間の短縮: 従来の半分の時間で申請完了
- 書類管理の簡素化: デジタル化により書類紛失リスクを回避
- 迅速な支給: 電子申請により審査期間が短縮
まとめ
2025年度の65歳超雇用推進助成金は、申請手続きの簡素化と電子申請の導入により、これまで以上に利用しやすい制度となっています。特に重要なポイントは:
- 申請手続きの簡素化: 高年齢者雇用安定法の遵守期間要件削除
- 申請期間の延長: 月初~15日への延長
- 電子申請の導入: 24時間申請受付と手続きの迅速化
- 高年齢再就職給付金廃止: 本助成金の重要性がより高まっている
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、高年齢者の活用は企業の持続可能性に直結する重要な課題です。この助成金を活用して、経験豊富な高年齢者が活躍できる職場環境を整備することで、企業の競争力向上と安定した経営基盤の構築を図ることができます1。
最新の詳細情報については、厚生労働省のホームページをご確認ください。
