社会保険制度大改正のポイント
2025年4月から社会保険制度に大幅な改正が実施されます。自己都合退職者の給付制限期間短縮、育児関連の新給付金創設、介護離職防止策の強化など、企業の人事労務管理に大きな影響を与える内容が含まれています。
雇用保険法、育児・介護休業法、年金制度の主要改正ポイントを整理しました。
特に、自己都合退職者への教育訓練による給付制限解除や、育児支援の拡充など、従業員への説明が必要な事項を中心に解説しています。
改正内容を十分にご理解いただき、就業規則の見直しや社内制度の整備にお役立てください。
ご不明な点がございましたら、いつでもご相談ください。
雇用保険法の主要改正ポイント
自己都合退職者の給付制限期間短縮と教育訓練による給付制限解除
2025年4月1日から、自己都合退職者の失業給付の給付制限期間が現行の2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。ただし、5年以内に2回を超える自己都合離職の場合は引き続き3ヶ月間の制限が適用されます。
また、離職期間中や離職日前1年以内に自ら教育訓練を受けた場合は、給付制限が完全に解除される新制度が導入されます。これはリスキリング(学び直し)を促進する政策の一環であり、転職を考えている従業員への情報提供が重要になります。
育児関連の新給付金制度創設
子育て支援強化のため、以下の新たな給付金が創設されます。
出生後休業支援給付金(2025年4月1日施行):両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が上乗せ支給され、育児休業給付と合わせて給付率が80%(手取りで10割相当)まで引き上げられます。ひとり親家庭や配偶者が就労していない場合などは配偶者の育児休業取得は要件となりません。
育児時短就業給付金(2025年4月1日施行):2歳未満の子を養育する短時間勤務者に対し、賃金の10%を上限として給付金が支給されます。
その他の雇用保険制度改正
就業促進手当の見直し:就業手当は2025年4月1日に廃止されます。一方、就業促進定着手当については給付率が従来の40%または30%から一律20%に引き下げられます。
高年齢雇用継続給付の給付率引下げ:最大15%から最大10%への縮小が2025年4月1日から施行されます。
育児・介護休業法の主要改正ポイント
子育て支援の拡充
子の看護等休暇(旧:子の看護休暇)の対象拡大
- 対象となる子の年齢が「小学校就学前」から「小学3年生修了時」まで拡大
- 学級閉鎖や入学式等の子どもの行事参加時にも取得可能に
- 勤続6ヶ月未満の労働者も対象に含まれるよう要件緩和
残業免除の対象拡大:3歳以上~小学校就学前の子を養育する労働者が、所定外労働(残業)の免除を請求できる権利が拡大されます。
短時間勤務制度の代替措置の拡充:3歳未満の子を育てる労働者については、短時間勤務制度の代替措置としてテレワークが追加されます。
短時間勤務制度の代替措置としてテレワークが追加: 3歳未満の子を育てる労働者について、短時間勤務制度の代替措置としてテレワークを選択可能にする措置が追加されます(努力義務)。 ※就業中は子供を保育所に預けることが前提です。
介護離職防止のための両立支援強化
介護休暇の労使協定除外規定廃止: 労使協定で除外できた「継続雇用期間6ヶ月未満」の規定が廃止され、入社直後でも介護休暇が取得可能になります。
介護離職防止策として事業主に雇用環境整備が義務付けられる:研修の実施や相談窓口の設置など、いずれかの措置を講じることが事業主に義務付けられます。
介護に関する個別の周知・意向確認の義務化
- 介護に直面した労働者に対し、事業主は個別に制度の周知や意向確認を行うことが義務化
- 介護に直面する前の早い段階(40歳到達時)での情報提供も義務化
介護のためのテレワーク導入:介護を行う労働者のためのテレワーク導入が事業主の努力義務となります。
育児休業取得状況の公表義務の対象拡大
育児休業の取得状況の公表義務(次世代育成支援対策推進法第15条)が、現行の従業員数1,000人超の事業主から300人超の事業主にも拡大されます。300人超500人以下の企業も公表義務の対象となるため、該当企業は早めの準備が必要です。
なお、「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け」と「柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け」は2025年10月1日施行予定である点に注意が必要です。
年金制度の改正ポイント
年金額の改定
2025年度(令和7年度)の年金額は、前年度から1.9%引き上げられます。
- 名目手取り賃金変動率:プラス2.3%
- マクロ経済スライド調整率:マイナス0.4%
- 結果:2.3%-0.4%=1.9%の引き上げ
ただし、この改定率は物価変動率(プラス2.7%)よりも低いため、実質的な購買力は目減りします。
在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げ
在職老齢年金の計算に用いる「支給停止調整額」が、令和6年度の50万円から令和7年度は51万円に引き上げられます。これにより、働きながら年金を受給するシニア層の収入上限が緩和されます。
国民年金保険料の改定
国民年金保険料は以下のように改定されます
- 令和6年度:16,980円
- 令和7年度:17,510円
- 令和8年度:17,920円
遺族厚生年金の改正
2025年の改正では、20代~50代の子のいない世帯に関して、「収入要件」が撤廃される予定です。また、5年間の有期給付への変更や年金額の増額(有期給付加算の創設)、死亡時分割の創設、中高齢寡婦加算の廃止などが計画されています。
2025年10月施行の主要改正ポイント
2025年10月1日からは、以下の重要な法改正が施行されます。
育児・介護休業法関連
「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け」と「柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け」が施行されます。特に「働き方の柔軟化措置」として、3歳以上の子を養育する労働者に対する「始業時間等の変更」などの措置を講じることが事業主に義務付けられます。
雇用保険法関連
「教育訓練休暇給付金の創設」が予定されており、リスキリング(学び直し)支援の一環として、教育訓練やキャリア形成に関する新たな給付制度が始まります。
これらの改正は、育児・介護と仕事の両立支援や人材育成の強化を目的としています。特に柔軟な働き方の実現に向けた措置は、従業員のワークライフバランス向上と企業の人材確保・定着に大きく影響するため、早めの対応準備をお勧めします。

