中小企業の経営者・人事担当者の皆様、2025年10月から育児・介護休業法がさらに大きく変わります。
4月の改正に続き、今度は企業に対してより具体的で実践的な両立支援措置が義務化されます。
近年の調査によると、小学校就学前の子を持つ働く親の約60%が「時間の融通が利く働き方」を最も重要視しており、従来の画一的な勤務体系では対応が困難な状況が浮き彫りになっています。
改正の背景と必要性
2025年は育児・介護休業法の大幅な改正年となっており、4月と10月の2段階で実施されます。
まず4月には所定外労働の制限対象拡大や子の看護休暇制度の拡充などの基本的な制度変更が行われました。
詳細については「【法改正】所定外労働の制限対象拡大【育児・介護休業法】~2025年4月施行~」をご参照ください。
10月の改正は、4月改正を踏まえてより実践的で具体的な両立支援措置を企業に求める内容となっています。
育児期における働き方の課題の深刻化
3歳以降の子育て期において、保育園の送迎時間、学校行事への参加、子どもの急な体調不良など、従来の勤務時間では対応が困難な場面が増加しています。特に共働き世帯では、どちらか一方に負担が集中する傾向があり、キャリア継続の大きな障壁となっています。
コロナ禍で変化した働き方への対応
テレワークや時差出勤など、コロナ禍を経て定着した多様な働き方に対する労働者のニーズが高まっています。しかし、これらの制度を育児支援として体系的に整備している企業はまだ少数にとどまっているのが現状です。
人材確保の戦略的重要性
労働力人口の減少が進む中、育児世代の優秀な人材を確保・定着させることは企業の持続的成長にとって不可欠です。特に中小企業では、限られた人材の離職は事業運営に直接的な影響を与えるため、積極的な両立支援が求められています。
この改正は、こうした現場の課題に対応するとともに、企業の競争力向上と労働者のワーク・ライフ・バランスの実現を目指すものです。
2025年10月改正の主要ポイント
柔軟な働き方を実現するための措置の義務化
対象労働者
3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者
選択制措置(5つから2つ以上を選択)
事業主は以下の措置から2つ以上を選択して講じる必要があります:
- 始業時刻等の変更(フレックスタイム制度、時差出勤制度)
- テレワーク等(在宅勤務制度:月10日以上の実施)※原則、時間単位での利用可とする。
- 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を短縮する制度)
- 育児両立支援休暇の付与(年間10日以上の特別休暇付与)※原則、時間単位での取得可とする。
- 保育施設の設置運営等(事業所内保育施設の設置・運営)
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
妊娠・出産申出時の意向聴取
労働者本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た際に、希望する勤務時間帯、勤務地に関する要望、両立支援制度の利用意向・期間、その他就業条件に関する要望について個別に意向聴取することが義務化されます。
3歳になる前の意向聴取
子が3歳になるまでの適切な時期(1歳11か月〜2歳11か月頃)に、同様の意向聴取を実施する必要があります。
聴取した意向への配慮
事業主は聴取した労働者の意向について、自社の状況に応じて配慮することが義務化されます。
柔軟な働き方に関する個別周知・意向確認の義務化
3歳未満の子を養育する労働者に対し、子が3歳になるまでの適切な時期に、5つの選択制措置の説明、自社で実施する措置の詳細周知、利用に関する意向確認を実施する必要があります。
中小企業への影響と対応策
本改正は中小企業と従業員の双方に大きな影響を与えることが予想されます 。
企業への影響と対応策
柔軟な働き方の実現措置の義務化
3歳以上小学校就学前の子を持つ従業員への柔軟な働き方を実現するための措置が義務化される。
対策:従業員のニーズを把握し、5つの措置から2つ以上を選択して導入を検討する。
個別意向聴取・配慮の義務化
妊娠・出産申出時と子が3歳になる前の意向聴取が義務化される。
対策:面談体制を整備し、聴取した意向への配慮方法を検討する。
制度周知・意向確認の義務化
柔軟な働き方に関する制度の個別周知・意向確認が義務化される。
対策:制度説明資料の準備と面談実施体制の構築を行う。
就業規則・規程の大幅見直し
新たな制度に対応した就業規則の改定が必要となる。
対策:労務関係法令に詳しい専門家と連携し、規程整備を進める 。
従業員への影響とメリット
ワーク・ライフ・バランスの向上
柔軟な勤務制度の導入により、家庭と仕事の両立が可能に。
メリット:育児による離職リスクが低減し、安心して働ける環境が整う。
キャリア形成の機会拡大
多様な働き方が実現されることで、従業員はスキルアップやキャリア形成を図りやすくなる。
メリット:長期的なキャリアプランを描くことができ、モチベーション向上につながる。
心理的負担の軽減
制度利用への心理的ハードルが下がり、安心して育児に取り組むことができる。
メリット:職場での理解促進により、孤立感や不安感が軽減される。
企業と従業員の双方にとっての対策
この法改正は、企業にとって新たな制度運用を求める一方で、従業員にはより良い働き方を提供する機会となります 。
企業は制度設計や周知を通じて柔軟な働き方を実現し、従業員は自ら積極的に制度を活用することで、両者が共に成長できる環境づくりが求められます。法改正への適切な対応は、人材確保・定着の強化につながり、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略となります。
よくある質問と回答
Q1: どの措置を選択すべきか判断に迷います
A1: 自社の業務特性と従業員のニーズを踏まえて検討してください。まずは従業員アンケートで実際の希望を把握し、導入コストと効果を比較検討することをお勧めします。
Q2: 個別意向聴取はどのような方法で実施すればよいですか?
A2: 面談、書面、メール等で実施可能です。重要なのは労働者が率直に意向を伝えられる環境を整えることです。面談の場合は記録を作成し、聴取内容を適切に保管する必要があります。
Q3: 小規模企業でも対応は必要ですか?
A3: はい、従業員数に関わらず適用されます。小規模企業の場合は段階的整備も可能ですので、まずは現在の従業員ニーズを把握し、実現可能な措置から検討を始めてください。
まとめ
2025年10月の改正に向けて、以下の準備が必要です
・5つの措置から2つ以上の選択・制度設計
・個別意向聴取の実施体制構築
・就業規則等の改定
・従業員への周知・研修実施
・運用開始後のフォローアップ体制整備
なお、本記事の内容は2025年9月時点の情報に基づいています。今後、運用に関する詳細なガイドラインが示される可能性がありますので、最新の情報にご注意ください。
相談窓口のご案内
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)では、育児・介護休業法に関する相談を受け付けています。制度の詳細や運用方法について、無料で相談することができます。
両立支援等助成金の相談窓口
テレワーク導入や両立支援に関する助成金について、都道府県労働局の助成金担当窓口で相談を受け付けています。
働き方改革推進支援センター
中小企業向けに、制度設計や就業規則の見直しなど、具体的な対応について無料でアドバイスを受けることができます。
企業の皆様が法改正に適切に対応できるよう、上本町社会保険労務士事務所でのご相談も承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

