夏の現場で熱中症が発生。労災になる?会社の責任は?

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で建設業を営んでいます。先日、屋外作業中に作業員が熱中症で倒れ、救急搬送されました。
幸い軽症で翌日退院しましたが、今後が心配です。現場では水分補給を声掛けしていましたが、十分な対策だったのか不安です。
これは労災になるのでしょうか?会社の責任はどこまで問われますか?再発防止のポイントも知りたいです。

お悩み

  • 熱中症は労災になる?
  • 会社の責任はどこまで?
  • どんな対策が必要?
  • 労災申請の手続きは?

結論:業務上の熱中症は労災になります

結論から申し上げますと、仕事中に発症した熱中症は、業務災害として労災認定される可能性が高いです。

労災認定には以下の2つの条件が必要です。

① 業務遂行性:仕事中に発症したこと
② 業務起因性:業務が原因で発症したこと

屋外作業中や高温多湿な環境下での作業中に熱中症を発症した場合、これらの条件を満たすため、労災認定されます。

また、会社には労働者の安全を守る「安全配慮義務」があります。適切な予防措置を講じていなかった場合、損害賠償を求められるリスクがあります。

熱中症が労災として認定される条件

  • 業務遂行性(仕事中の発症)
    会社管理下での作業中、事業場内での休憩・移動中などは該当し得ます。
  • 業務起因性(業務が原因)
    次の事情を総合的にみます。
    • 作業環境(気温・湿度・WBGT)
    • 作業の強度・時間・装備(防護具など)
    • 休憩・水分・塩分補給の機会
    • 当日の体調・既往症・服薬
      医学的診断(鑑別含む)が前提です。

会社の責任(安全配慮義務)

  • 会社には、労働者が安全に働けるよう配慮する義務があります。熱中症対策として、少なくとも次を整えます。
    • 環境管理:WBGT(暑さ指数)の測定・掲示、日陰・風通し・冷却設備
    • 作業管理:高温時間帯の回避、作業時間短縮、ローテーション
    • 休憩・補給:定期休憩、冷水・スポドリ・塩分補給の確保
    • 健康管理:作業前点呼で体調確認、単独作業の回避
    • 教育・訓練:症状の見分け方、応急手当、救急連絡手順
      これらが不十分だと、安全配慮義務違反として損害賠償を問われる可能性があります。

2024年4月から事業者の義務が強化

2024年4月から、労働安全衛生規則が改正され、熱中症予防対策が事業者の義務として明確化されました。

具体的な義務

  • WBGT値の測定・評価
  • 作業時間の短縮
  • 熱を遮る設備の設置
  • 休憩場所の整備
  • 作業前の健康状態の確認

違反すると、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。

労災申請の手続き

会社が行う手続き

熱中症で従業員が病院を受診した場合、会社は以下の対応をします。

① 労災指定病院の場合

療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)を提出

② 労災指定病院以外の場合

療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)を提出

③ 休業が4日以上の場合

労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出

会社が協力することで、従業員は治療費の自己負担なく治療を受けられます。

今からできる熱中症対策(建設現場向けの実務要点)

  • 作業環境
    • 日よけ・テント、ミスト・送風、クーラーボックス・保冷剤、空調服の活用
    • WBGTを定時に測定・掲示し、基準(警戒・厳重警戒・危険)に応じて作業強度・休憩頻度を切り替える
  • 作業管理
    • 高温時間帯の重作業を避け、1時間ごとに10〜15分の休憩を基本線に
    • 水分はのどが渇く前に、塩分もセットで(スポーツドリンク・経口補水・塩タブ)
  • 健康管理
    • 朝礼点呼で体調・睡眠・前日の飲酒の確認、単独作業を避け相互監視
    • 初期症状のサイン(めまい、こむら返り、手のしびれ、頭痛、吐き気)を全員で共有
  • 教育・訓練・備え
    • 毎シーズン開始時に5分教育+週間ミニ教育、ポスター掲示
    • 応急処置(涼しい場所へ、衣服ゆるめ、首わき腹の冷却、意識障害は救急要請)を手順化
    • 連絡網・搬送ルート、AED・保冷材・経口補水の配置を明示

よくある質問

Q1:軽症でも労災申請すべき?

A:はい、軽症でも申請できます。

治療費は労災保険から支給されますので、必ず申請しましょう。

Q2:従業員が「大丈夫」と言ったら責任はない?

A:いいえ、会社の安全配慮義務は免除されません。

本人の同意があっても、会社は予防措置を講じる義務があります。

Q3:熱中症対策にかかる費用は?

A:基本的な対策は比較的低コストです。

テント、クーラーボックス、スポーツドリンク、塩飴など、数万円から始められます。


夏の現場での熱中症は、
業務災害として労災認定される可能性が高いです。

  • 仕事中に発症すれば労災に
  • 会社には安全配慮義務がある
  • 2024年4月から予防対策が義務化
  • 適切な対策でリスクを減らせる

今のうちから熱中症対策を徹底し、
従業員の安全を守りましょう。

上本町社会保険労務士事務所では、
熱中症予防対策の具体的な実施方法をサポートしています。

「何から始めればいいか分からない」
「労災申請の手続きが不安」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

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