ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で製造業を営んでいます。従業員は正社員20名、パート従業員が3名でしたが、最近の繁忙期対応でパート従業員が急増し、現在15名になりました。
既存の就業規則は正社員を想定した内容で、パートの労働条件が明確ではありません。パート従業員から「有給休暇は?」「退職時の予告期間は?」といった質問が増えており、対応に困っています。
また、正社員とパートで待遇差があることで、不公平感を訴える声も出てきました。
パート用の就業規則を別途作る必要があるのでしょうか?それとも既存の規則を修正すればいいのでしょうか?
お悩み
- パート用の就業規則は必要なの?
- 既存の就業規則をどう見直せばいい?
- 正社員とパートで違う条件にしていいの?
- 就業規則変更の手続きは?
結論:パート用の規定整備が必要です
結論から申し上げますと、パート従業員が急増した場合、就業規則の見直しが必要です。
方法は2つあります。
① 正社員用とは別に「パートタイマー就業規則」を作成する
② 既存の就業規則に「パート従業員に関する規定」を追加する
どちらの方法でも問題ありませんが、労働条件が大きく異なる場合は、別規則を作成した方が分かりやすくなります。
また、同じ仕事をしているのに正社員とパートで待遇が違う場合、「同一労働同一賃金」の観点から説明が必要になります。
パート従業員も就業規則の対象です
パート・アルバイトの位置づけ
パート・アルバイトも労働者であり、就業規則の対象です。
「正社員だけが対象」という誤解がありますが、雇用形態に関係なく、すべての従業員に就業規則が適用されます。
従業員数のカウント方法
就業規則の作成義務がある「常時10名以上」には、パート・アルバイトも含まれます。
- 正社員:20名
- パート:15名
→ 合計35名なので、就業規則の作成・届出義務あり
労働時間や勤務日数に関係なく、雇用契約を結んでいる従業員すべてがカウント対象です。
パート従業員の就業規則で明記すべき項目
正社員と異なる条件を設定する場合、以下の項目を明確にする必要があります。
労働時間・勤務日
- 所定労働時間(例:1日4時間、週3日)
- シフト制の場合の決定方法
- 残業の有無と条件
賃金
- 時給額
- 賃金の締切日・支払日
- 残業手当の計算方法
- 通勤手当などの諸手当
休日・休暇
- 休日の決め方
- 年次有給休暇の付与日数(勤務日数に応じた比例付与)
- 特別休暇の有無
契約期間・更新
- 有期契約の場合の契約期間
- 更新の有無と判断基準
- 無期転換ルール(5年超勤務の場合)
退職・解雇
- 退職の申し出期限
- 契約期間満了時の手続き
- 解雇事由
正社員との待遇差の説明
同じ業務をしている場合、正社員とパートで待遇差がある理由を説明できるようにしておく必要があります(同一労働同一賃金)。
別規則にするか、追記にするか
別規則がおすすめのケース
労働条件の違いの程度によって判断します。
- 勤務時間、給与体系が正社員と大きく異なる
- パート従業員が多い(全体の3割以上)
- 将来的にパート独自の制度を設ける可能性がある
既存規則への追記でOKのケース
- パート従業員が少数
- 労働条件が正社員とほぼ同じ
- シンプルに管理したい
よくある失敗例と注意点
失敗例①:正社員の就業規則をそのまま適用した
正社員の規則には「月給制」「週5日勤務」などの記載があり、パート従業員の実態と合わないことがあります。
対策:パートの実態に合わせた規定を別途設ける
失敗例②:有給休暇の比例付与を知らなかった
パート従業員にも有給休暇がありますが、正社員と付与日数が異なります(比例付与)。
例:週3日勤務のパート
→ 6カ月勤続で5日の有給休暇
対策:勤務日数に応じた有給休暇付与表を作成
失敗例③:同一労働同一賃金への対応が不十分
正社員とパートが同じ仕事をしているのに、手当や福利厚生に差がある場合、説明義務があります。
対策:待遇差の理由を明確にし、説明できるようにする
失敗例④:契約更新基準が曖昧
「契約更新の可能性あり」とだけ記載し、具体的な判断基準がないと、トラブルになります。
対策:更新の判断基準(勤務態度、業務量、会社の経営状況など)を明記
よくある質問
Q1:パート全員の同意が必要?
A:いいえ、不要です。
従業員代表からの意見聴取で十分です。ただし、丁寧に説明して理解を得ることが望ましいです。
Q2:既存のパート従業員にも新しい規則が適用される?
A:はい、適用されます。
ただし、労働条件を不利益に変更する場合は、個別の同意が必要になる場合があります。
Q3:パート用の就業規則だけ労基署に届け出る?
A:正社員用とパート用の両方を届け出ます。
同時に届け出る場合は、「就業規則一式」として提出できます。
Q4:無期転換ルールへの対応は?
A:5年を超えて有期契約を更新した場合、従業員は無期契約への転換を申し込めます。
就業規則に「無期転換後の労働条件」を記載しておくことをお勧めします。
パート従業員が急増した場合、
就業規則の見直しは必須です。
- パート用の規定を整備する
- 正社員との違いを明確にする
- 有給休暇の比例付与に対応する
- 同一労働同一賃金を意識する
- 従業員への周知を徹底する
これらのポイントを押さえることで、
パート従業員が安心して働ける環境を整え、
トラブルを未然に防ぐことができます。
上本町社会保険労務士事務所では、
パート従業員の就業規則作成・見直しをサポートしています。
「正社員とパートの規定をどう分ければいい?」
「同一労働同一賃金への対応が不安」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
【上本町社会保険労務士事務所】
大阪市天王寺区上本町
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