高年齢者雇用安定法‐中小企業のための70歳雇用時代対応ガイド

こんにちは!高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。この記事では、中小企業の皆様向けに、制度の概要から具体的な対応方法までわかりやすく解説します。

高年齢者雇用安定法とは

法改正の背景と目的

少子高齢化の進行に伴い、労働力人口の減少や高齢者の就労意欲の高まりが進んでいます。

また、「人生100年時代」に突入し、健康寿命の延伸による就業機会の確保が一層重要になっています。

特に、年金支給開始年齢の引き上げに伴い、高齢者が就労を通じて収入を確保する必要が増していることから、年金制度との整合性を考慮しながら、多様な就労機会を提供することが求められています。

このような背景から、高年齢者雇用安定法の改正が行われ、高齢者の就業機会の確保と多様な就労ニーズに対応することが目的とされています。

2025年4月からの重要な変更点

高年齢者雇用安定法は、2025年4月から以下の重要な変更が実施されます

    ・65歳までの雇用確保措置の経過措置が終了し、完全義務化
    ・希望者全員の65歳までの雇用確保が必須に
    ・高年齢雇用継続給付の支給率が最大15%から10%に縮小

    これらの変更に伴い、企業には以下の対応が必要となります
    ・就業規則の改定
    ・賃金規程の見直し
    ・継続雇用制度の再設計
    ・労働条件の整備

    【在職老齢年金制度との関係】
    ・60歳以上65歳未満の在職老齢年金の支給停止基準

    賃金と年金の合計が28万円を超える場合、超過分の2分の1が支給停止
    ・65歳以上の在職老齢年金の支給停止基準

    賃金と年金の合計が47万円を超える場合、超過分の2分の1が支給停止

    【高年齢雇用継続給付の縮小への対応】
    現行の給付率(最大15%)から10%への引き下げに伴い、以下のような賃金設計の検討が必要です
    ・60歳時点の賃金水準を見直し(例:70%→75%)
    ・役割・職務に応じた新たな賃金テーブルの設定
    ・成果給・業績給の導入による収入確保の機会提供

    主な改正点

    項目改正前改正後
    65歳までの雇用確保経過措置あり 完全義務化
    70歳までの就業機会努力義務努力義務(継続)
    高年齢雇用継続給付最大15%最大10%
    就業確保措置5つの選択肢5つの選択肢(継続)

    70歳までの就業機会確保措置(5つの選択肢)

    就業機会確保措置

    1. 70歳までの定年引上げ
    2. 定年廃止
    3. 70歳までの継続雇用制度の導入
    4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    5. 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

    中小企業への影響

    中小企業への影響

    1. 人材確保のチャンス
      • 経験豊富な高齢者の活用
      • 技能伝承の促進
    2. 柔軟な働き方の導入
      • 多様な就業形態の検討
      • 高齢者のニーズに合わせた勤務体系
    3. 人事制度の見直し
      • 評価・報酬制度の再構築
      • キャリアパスの再設計
    4. 職場環境の整備
      • 安全衛生管理の強化
      • バリアフリー化の推進
    5. コスト面での考慮
      • 人件費の増加可能性
      • 生産性向上の必要性

    70歳までの就業機会確保措置

    雇用による措置

    企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

    【65歳までの雇用確保(義務)】

    2025年4月からの完全義務化により
    ・希望者全員を65歳まで雇用する制度が必須
    ・継続雇用制度を導入する場合の経過措置が終了
    ・対象者基準の設定が原則不可

    実施方法(以下のいずれかを選択)

    ①定年引上げ
    ・定年年齢を65歳まで引き上げる
    ・一括での引上げが可能
    ・段階的な引上げも可能(3年以内に完了)
    ・就業規則の変更が必要

    ②定年廃止
    ・定年の定めを廃止し、年齢に関係なく雇用継続
    ・就業規則の変更が必要

    ③継続雇用制度の導入
    ・現行の定年制を維持し、希望者全員を継続雇用
    ・労働条件は個別に設定可能
    ・就業規則の変更が必要

    【70歳までの就業機会確保(努力義務)】

    ①定年引上げ
    ・定年年齢を70歳以上に引き上げる
    ・段階的な引上げも可能(例:65歳→67歳→70歳)
    ・就業規則の変更が必要

    ②定年廃止
    ・定年の定めを廃止し、働ける限り働き続けられるようにする
    ・就業規則の変更が必要

    ③継続雇用制度の導入
    ・定年後も引き続き雇用する制度を70歳以上まで延長
    ・特殊関係事業主(子会社・関連会社等)だけでなく、他の事業主によるものも含む
    ・基準を設けて、継続雇用の対象者を限定することが可能

    雇用以外の措置(創業支援等措置)

    ④業務委託契約を締結する制度
    ・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
    ・例:フリーランス、個人事業主として業務を受託

      ⑤社会貢献事業に従事できる制度
      ・70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度を導入
      ・事業主が自ら実施する社会貢献事業
      ・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

      【創業支援等措置の注意点】
      ・過半数労働組合等の同意を得た計画作成が必要
      ・社会貢献事業は、不特定かつ多数の者の利益に資する目的であること
      ・雇用によらない措置のため、労働関係法令が適用されないことに留意

      これらの措置は、高齢者の多様なニーズに応じて選択・組み合わせることが可能です。

      制度設計のポイント

      雇用形態の選択

      高齢者の雇用形態を選択する際は、以下の点を考慮しましょう。

      【定年制度の見直し】
      ・定年延長:段階的な引き上げも可能
      ・定年廃止:年齢に関係なく働き続けられる
      ・継続雇用制度:希望者が働き続けられる仕組み

      【雇用契約の形態】
      ・正社員(無期雇用)
      ・有期雇用契約
      ・嘱託社員

      【勤務形態の多様化】
      ・フルタイム勤務
      ・短時間勤務
      ・フレックスタイム制
      ・在宅勤務

      賃金・評価制度の見直し

      【賃金制度】
      ・職務給・役割給の導入
      ・成果給の要素を取り入れる
      ・賞与制度の見直し

      【評価制度】
      ・年齢にとらわれない公正な評価基準の設定
      ・高齢者の経験・スキルを適切に評価する仕組み
      ・定期的な面談・フィードバックの実施

      【処遇】
      ・モチベーション維持のための報酬・褒賞制度
      ・福利厚生の見直し
      ・2025年4月からの高年齢雇用継続給付縮小への対応

      職務設計と配置

      【職務の再設計】
      ・高齢者の強みを活かせる業務の洗い出し
      ・負担軽減のための業務の見直し
      ・新たな職域の開発

      【適切な配置】
      ・個々の能力・経験に応じた配置
      ・若手・中堅社員とのペア就労
      ・技能伝承を考慮した配置

      【キャリアパスの設計】
      ・高齢期のキャリア選択肢の提示
      ・段階的な役割変更の仕組み作り

      制度導入の手順

      現状分析

      【現在の状況把握】
      ・高齢社員の人数、職種、役割、処遇などの実態
      ・現行の定年制度や継続雇用制度の内容
      ・2025年4月の法改正への対応状況

      【課題の特定】
      ・人材不足の有無
      ・技能伝承の必要性
      ・高齢社員のニーズ(継続就業の希望、希望する働き方など)
      ・経営方針や事業計画との整合性

      制度設計

      【新制度の骨子決定】
      ・65歳までの雇用確保措置(義務)の具体的内容
      ・70歳までの就業機会確保措置(努力義務)の選択
      ・段階的な導入スケジュール

      【具体的な制度内容の検討】
      ・対象者の範囲
      ・雇用形態
      ・処遇条件
      ・2025年4月からの高年齢雇用継続給付縮小への対応策

      【関連する人事制度の見直し】
      ・評価制度
      ・賃金制度
      ・役職定年制度
      ・必要な予算の試算と経営への影響検討

      労使協議

      ・労働組合や従業員代表への新制度案の説明
      ・制度の目的や内容についての十分な協議
      ・従業員の意見や要望の聴取
      ・必要に応じた制度案の修正
      ・労使協定の締結

      導入・運用

      【規定の整備】
      ・就業規則の改定
      ・労働基準監督署への届出
      ・賃金規程等の関連規定の整備

      【周知・説明】
      ・全従業員への新制度の説明会開催
      ・社内通達の発行
      ・管理職への研修実施

      【運用体制の整備】
      ・担当部署の設置
      ・運用マニュアルの作成
      ・相談窓口の設置

      【継続的な改善】
      ・定期的な制度の効果検証
      ・必要に応じた見直しと改善
      ・高齢者の意見や要望の収集

      これらのステップを丁寧に進めることで、2025年4月の法改正にも対応した、効果的な制度の導入・運用が可能になります。特に、従業員との十分なコミュニケーションを図りながら、段階的に進めていくことが重要です。

      活用できる助成金制度

      65歳超雇用推進助成金

      ・65歳以上への定年引上げ
      ・定年の定めの廃止
      ・希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する制度の導入

      高年齢者評価制度等雇用管理改善助成金

      ・高年齢者の雇用管理制度の整備
      ・雇用環境整備の措置の実施

      ※各助成金の具体的な支給額や要件は、最新の情報を確認してください。

      上部へスクロール