ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員15名のシステム開発会社を経営しています。従業員から「在宅勤務を導入してほしい」という要望が増えており、人材確保の面でもテレワークの導入を検討しています。
しかし、「自宅で本当に働いているのか分からない」「労働時間の管理ができるのか」「情報漏洩のリスクは大丈夫か」など、不安が多く、なかなか踏み切れません。
テレワークを導入する場合、労務管理の面で何から始めればよいのか、どんな点に注意すればよいのか教えてください。
お悩み
- テレワークで労働時間をどう管理すればいい?
- セキュリティや情報漏洩が心配
- 何から準備を始めればいい?
結論:就業規則の整備、労働時間管理の方法、セキュリティルールの3つが基本
結論から申し上げますと、テレワークを導入する際には、「就業規則の整備」「労働時間の管理方法」「セキュリティルール」の3つを整えることが基本です。
テレワーク導入の3つのポイント
① 就業規則にテレワークに関する規定を追加する
② 労働時間の管理方法を決める(始業・終業報告、勤怠システムなど)
③ 情報セキュリティのルールを定める(持ち出しデータ、通信環境など)
「とりあえず始めてみる」では、後々トラブルになるリスクがあります。最初にルールを整えてから導入することが重要です。
就業規則にテレワーク規定を追加する
就業規則への記載が必要
テレワークを制度として導入する場合、就業規則に規定を追加する必要があります。
記載すべき内容
- テレワークの定義(在宅勤務、モバイルワークなど)
- 対象者(全従業員、特定の職種のみ、など)
- 申請・承認の手続き
- 労働時間・休憩時間の扱い
- 通信費・光熱費などの負担
対象者の範囲を決める
全従業員を対象にするのか、特定の職種・条件を満たす人のみにするのかを決めます。
対象者の例
- 全従業員
- 入社○か月以上の従業員
- 育児・介護中の従業員
- 自宅に適切な作業環境がある従業員
最初は試験的に、希望者のみから始める方法もあります。
労働時間の管理方法を決める
始業・終業時刻の報告
テレワークでも、労働時間の管理は必要です。始業・終業時刻を報告する方法を決めます。
報告方法の例
- メール・チャットで報告
- 勤怠管理システム(クラウド型)を導入
- 電話・ビデオ会議での報告
「自己申告」だけに頼らず、客観的に記録が残る方法が望ましいです。
中抜け時間の扱い
テレワーク中に、私用で一時的に離席する「中抜け」が発生する場合があります。
中抜け時間の扱い
- 事前または事後に申告してもらう
- 中抜けした時間分、終業時刻を延長する
- 短時間(30分以内など)は許容する
就業規則で明確にしておくと、トラブルを防げます。
残業の扱い
テレワークでも、時間外労働には36協定と割増賃金が必要です。
残業管理のポイント
- 残業は事前申請制にする
- 上司の許可なく残業させない
- 深夜・休日労働も通常勤務と同じルール
「いつの間にか深夜まで働いていた」ということがないよう、管理が必要です。
フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制の活用
労働時間の柔軟な管理方法として、以下の制度を検討することもできます。
フレックスタイム制
- コアタイム(必ず勤務する時間帯)を設定
- その他の時間は自由に働ける
事業場外みなし労働時間制
- 労働時間の算定が困難な場合に適用
- あらかじめ決めた時間を働いたものとみなす
- 適用要件が厳しいため、慎重に検討が必要
情報セキュリティのルールを定める
持ち出しデータの管理
顧客情報や機密情報を自宅に持ち出す場合、情報漏洩のリスクがあります。
セキュリティ対策の例
- 会社支給のパソコンのみ使用
- USBメモリへのデータ保存を禁止
- クラウドストレージを活用(アクセス制限付き)
- VPN接続を必須にする
通信環境の確保
自宅のWi-Fi環境のセキュリティも重要です。
通信環境のルール
- パスワード設定されたWi-Fiを使用
- カフェなどの公共Wi-Fiは原則禁止
- セキュリティソフトのインストール
誓約書の提出
テレワーク開始前に、情報管理に関する誓約書を提出してもらいます。
誓約書の内容例
- 業務上知り得た情報を第三者に漏らさない
- 会社の指示に従ったセキュリティ対策を実施する
- 紛失・漏洩が発生した場合は速やかに報告する
費用負担のルールを決める
通信費・光熱費の扱い
テレワークにより発生する費用の負担を、どうするか決めます。
費用負担の例
- 会社が全額負担(通信費として月〇円支給)
- 一部を手当として支給(月3,000円など)
- 従業員が負担(就業規則に明記)
法律上、会社が負担する義務はありませんが、従業員の納得感を得るためには、一定の補助が望ましいです。
機器・備品の貸与
パソコン、モニター、椅子などを会社が貸与するか、従業員の私物を使うか決めます。
機器貸与のポイント
- 会社支給のパソコンは、セキュリティ管理がしやすい
- 私物使用の場合は、セキュリティ対策を徹底
- 故障・紛失時の責任を明確にする
コミュニケーションの確保
定期的なミーティング
テレワークでは、対面でのコミュニケーションが減るため、意識的に機会を作ります。
ミーティングの例
- 毎朝の朝礼(オンライン)
- 週1回のチーム会議
- 月1回の全体会議
チャットツールの活用
メールだけでなく、チャットツールを活用すると、気軽なコミュニケーションが取りやすくなります。
ツールの例
- Slack、Microsoft Teams、Chatworkなど
- 業務連絡用とプライベート用を分ける
よくある質問
Q1:テレワークを希望しない社員がいる場合は?
A:テレワークは強制ではありません。希望する人だけが利用する「選択制」とすることも可能です。
Q2:自宅に作業環境がない場合は?
A:サテライトオフィスやコワーキングスペースの利用を認める、または出社を基本とする、といった対応が考えられます。
Q3:労働災害はどうなる?
A:自宅での業務中のケガも、業務起因性が認められれば労災の対象となります。自宅の作業環境の安全確認も重要です。
まとめ
テレワーク導入にあたっては、
- 就業規則にテレワーク規定を追加する
- 労働時間の管理方法を決める(始業・終業報告、残業管理など)
- 情報セキュリティのルールを定める(データ管理、通信環境など)
- 費用負担やコミュニケーション方法も整備する
という流れで、段階的に進めることが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、テレワーク導入に伴う就業規則の整備、労働時間管理の方法の提案、セキュリティルールの作成サポート、従業員向けの説明資料作成などを通じて、スムーズなテレワーク導入をお手伝いしています。
「テレワークを導入したいが、何から始めればいいか分からない」
「労働時間の管理方法が不安」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

