第4回:企業側の予防策-円満退職を促す仕組み作り【リベンジ退職時代の退職リスク対策】

リベンジ退職時代の退職リスク対策

企業側の予防策—円満退職を促す仕組み作り

「退職の兆候を見逃してしまった」「もっと早く気づけたはず」といった後悔の声が、リベンジ退職を経験した企業から多く聞かれます。厚生労働省の「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、自己都合退職に関する相談が42,472件(全体の11.5%)と、「いじめ・嫌がらせ」の60,125件に次いで2番目に多い相談内容となっています。この数字は、多くの退職者が何らかの不満や問題を抱えていたことを示唆しており、予防的な取り組みの重要性を示しています。

効果的な1on1の実施による早期発見

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によれば、転職者が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」ことが男性で9.1%、女性では13.0%と高い割合を占めています。これらの問題は適切なコミュニケーションによって解決できる可能性があり、特に中小企業において1on1は従業員の不満や悩みを早期に発見する重要な機会となっています。

効果的な1on1の実施には、月1回以上の定期開催(繁忙期でも確実に実施)、30分から1時間程度の十分な時間確保、会議室などプライバシーに配慮した場所の選定、従業員の希望に応じたオンライン・対面の選択制といった基本設計が推奨されています。

従業員の本音を引き出すために特に効果的とされる質問として、「最近、特に充実感を感じる業務は何ですか」(モチベーションの源泉を把握)、「仕事を進める上で困っていることはありますか」(具体的な課題の早期発見)、「キャリアについてどのように考えていますか」(将来への不安や希望を確認)、「職場環境で改善してほしい点はありますか」(職場環境への不満を把握)などがあります。

退職前の従業員には、会議での発言量が通常の50%以下に減少する、ネガティブな発言が月間で3回以上増加する、キャリアや将来に関する話題を意図的に避ける、体調不良による欠勤が月2回以上発生するといった変化が現れやすいとされています。これらのシグナルを見逃さないためには、1on1での対話内容を記録し、定期的に変化を確認することが重要です。

評価制度の透明性向上

「評価基準が不明確」「頑張りが評価されていない」といった人事評価に関する不満は、リベンジ退職の主要な要因の一つとなっています。厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果の概況」によれば、転職入職者が前職を辞めた理由として「仕事の内容に興味を持てなかった」という理由が男性では9.1%(前年比2.9ポイント上昇)と増加傾向にあり、適切な評価と成長機会の提供が重要であることを示しています。

評価の透明性を高めるために、評価項目の具体化、行動指標の明確な定義、達成基準の数値化(可能な項目)、評価の根拠となる事実の記録方法、部門別の特性を考慮した基準設定といった施策が効果的です。実際の運用例として、業績評価60%(数値目標の達成度)、能力評価30%(スキルと成長度)、行動評価10%(チームへの貢献度)のような評価基準を導入し、従業員満足度が30%向上した事例もあります。

効果的なフィードバックの要素として、定期的な進捗確認、四半期ごとの目標達成度レビュー、月次での1on1での簡易評価、評価者間での認識合わせ、評価結果の文書化が重要です。コミュニケーションの工夫では、具体的な改善ポイントの提示、成功事例のデータベース化、評価者研修の定期的実施、従業員からの異議申し立て制度などが推奨されています。

評価制度の改善に成功した企業では、評価基準の定期的な見直し(年1回以上)、評価者訓練の充実、従業員の声を反映させる仕組み、評価結果の活用方法の明確化といった共通点が見られます。

キャリアパスの明確化と成長支援

「将来のキャリアが見えない」「成長の機会が少ない」といった不安は、特に中小企業で強く表れています。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によれば、転職入職者の賃金変動状況では前職より「増加」した割合が37.2%(前年比2.3ポイント上昇)となっており、特に若年層においては転職によってキャリアアップを図る傾向が顕著で、企業内でのキャリア展望が不明確であることが退職の一因となっていることを示唆しています。

従業員の将来像を明確にするため、役職・職責の体系化、等級制度の明確な定義(例:6等級制)、各職位に求められる能力の明示、昇格要件の具体的な提示、標準的な昇進年数の目安提示といった取り組みが効果的です。キャリアルートの多様化として、マネジメントコース、専門職コース、プロジェクトリーダーコース、部門間異動制度などを設けることも重要です。

実際の成功事例として、キャリアマップの作成と公開、四半期ごとのキャリア面談、社内公募制度の導入、ジョブローテーションの計画的実施といった施策で、若手の定着率が25%向上した事例があります。

スキル開発支援では、階層別研修プログラム、選択制の専門スキル研修、オンライン学習プラットフォームの提供、外部セミナーへの参加支援などの教育研修制度と、受験料の全額補助、資格手当の支給、学習時間の確保、合格祝い金制度といった資格取得サポートが効果的です。

特に効果的な取り組みとして、年間教育予算の明確化(一人当たり30万円など)、資格取得者の社内発表会、メンター制度の活用(定着率15%向上)、キャリア相談窓口の設置などが報告されています。


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