第2回:リベンジ退職の背景と従業員の視点【リベンジ退職時代の退職リスク対策】

リベンジ退職時代の退職リスク対策

リベンジ退職時代の退職リスク対策

現場では、「若手社員の本音が分からない」「突然の退職をどのように防げばよいか」といった声が人事担当者から多く寄せられています。リベンジ退職の予防や対応を考える上では、従業員がどのような不満や価値観の変化を抱えているかを、客観的なデータと実態から正しく理解することが重要です。

各種公的調査によれば、労働者が自己都合で職場を離れる理由は、「労働条件(賃金以外)への不満」が最も多く、「仕事内容への不満」「賃金の低さ」と続いています。さらに、転職者の多くが「より良い条件の仕事を探すため」に前職を離れる傾向があり、職場環境に対して何らかの不満を感じていることが見受けられます。特に中小企業においては、従業員との対話機会が限られているケースも少なくなく、不満が表面化する前の対応が難しくなりがちです。

従業員の不満の実態と具体的な背景

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、転職者が前職を離れた主な理由として、職場の人間関係に関する課題が女性で13.0%、男性で9.1%と高い割合を占めており、前年と比較して増加傾向にあることが示されています。

評価・処遇に関する不満では、「賃金が低かった」が全体の10.4%、「採用時の労働条件と実際の条件が異なっていた」が6.2%となっており、処遇面での期待と現実のギャップが離職の要因となっています。また、「仕事の内容に興味を持てなかった」という理由も男性で9.1%と、前年比で2.9ポイント上昇しており、業務内容への関心度も重要な要素となっています。

職場環境に関しては、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が女性で11.1%、男性で8.9%、「将来性が見込めなかった」が約6.5%となっており、労働条件や企業の成長性に対する不安も離職理由として挙げられています。

職場での不満は、しばしば職場での発言量の減少や上司との対話回避、社内イベントへの不参加、遅刻や早退の増加、休暇取得パターンの変化など、日々の言動に兆候として現れます。しかし、約3割の労働者が「職場で困ったことや悩みを相談できる相手がいない」と感じているという調査結果もあり、不満が表面化しにくい職場環境も課題となっています。

不満が顕在化しやすい職場の実態と退職のきっかけ

従業員が退職を決意する背景は、単一の問題に限らず、日々の業務や人間関係の中で少しずつ蓄積した不満がきっかけとなるケースが多く見られます。たとえば、期待していた昇進や昇給の見送り、希望する異動が認められなかったこと、上司からの厳しい指摘や否定的な言動、信頼していた同僚の退職などが、退職決断への直接的な要因となり得ます。また、長時間労働や業務量の増加、休日出勤の常態化、新しいスキルを習得できない環境、評価制度への不信感なども、不満の蓄積を促す要素です。

厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によれば、月80時間以上の残業をしている労働者が依然として存在しており、長時間労働が大きな不満要因となっている実態があります。総務省統計局の「労働力調査」によれば、転職者の約4割が「より良い条件の仕事を探すため」に前職を離れており、評価制度への不信感が根底にあることが示されています。

実際に退職を検討し始めてから実際に離職するまでの期間は、平均して3〜6ヶ月程度とされており、その間に転職活動や退職準備が進められていることが明らかになっています。単なる偶発的な退職ではなく、複数の不満や課題が積み重なって決断に至るというのが実態です。

世代ごとの価値観とキャリア意識

総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)」では、年齢階級別の転職率に明確な差があり、若年層ほど転職率が高い傾向が確認されています。

Z世代(1995年以降生まれ)については、15〜24歳の転職率が男性10.7%、女性12.8%と全年齢層で最も高く、効率性や柔軟な働き方を重視する特徴があります。厚生労働省の「若年者雇用実態調査」では、若年層の約6割が「仕事の内容・やりがい」を重視し、成果に応じた公正な評価を求める傾向が強いことが示されています。総務省の「通信利用動向調査」によれば、若年層のテレワーク経験率は他の年齢層より高く、デジタルツールを活用した柔軟な勤務形態への期待が高いことが分かります。

ミレニアル世代(1980-1994年生まれ)では、厚生労働省の「転職者実態調査」において、30代の転職理由として「職業能力の向上・キャリアアップ」が25.4%と高い割合を占めており、専門性の向上を重視する傾向が見られます。総務省統計局の「就業構造基本調査」では、30代の約4割が今後の転職意向を示しており、転職に対して柔軟な姿勢を持っています。また、厚生労働省の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する調査」によれば、30代の7割以上がワークライフバランスを「非常に重要」または「重要」と回答しており、仕事と私生活の両立を重視する姿勢が明確に表れています。

新型コロナウイルス影響下での働き方とキャリア意識の変化

総務省「通信利用動向調査」によれば、テレワーク実施率は2019年の9.8%から2022年には32.2%へと約3倍に急増しており、働き方に大きな変革が起きています。厚生労働省の「雇用の多様化に関する総合実態調査」では、フレックスタイム制度を導入している企業が約15%、時差出勤制度が約25%と増加傾向にあり、働き方の選択肢が拡大しています。

副業・兼業を認める企業についても、厚生労働省の調査によれば2018年の約30%から2023年には約45%に増加しており、働き方の多様化が進んでいることが確認できます。週休3日制の試験導入やジョブ型雇用への移行を検討する企業、短時間正社員制度の普及なども見られ、雇用形態の選択肢が広がっています。

雇用に対する意識についても大きな変化が見られます。東京商工会議所の調査によれば、「就職先の会社で定年まで働きたい」と回答した新入社員は2024年調査でわずか21.1%にとどまり、10年前の35.1%から大幅に減少しています。一方、「チャンスがあれば転職」との回答が26.4%で、2014年の11.9%から倍以上に増加しており、転職に対する意識の変化が顕著に表れています。

キャリア開発への姿勢においても、オンライン学習プラットフォームの利用増加、資格取得への投資意欲の高まり、専門性強化への意識向上、業界・職種を超えた転職への関心増加などが見られます。

厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によれば、転職入職者の賃金変動状況では、前職より「増加」した割合が37.2%(前年比2.3ポイント上昇)となっており、転職による待遇改善を実現する人が増えていることが分かります。

これらのデータが示すように、従業員の価値観や働き方への期待は大きく変化しており、企業側にはこうした変化に対応した人材マネジメントの構築が求められています。リベンジ退職の予防には、こうした背景を理解し、早期の対話と適切な対応体制を整備することが重要となります。従業員の価値観や働き方への期待を的確に把握し、早い段階で対話や適切な対応を取ることが、突然の退職やリベンジ退職を未然に防ぐために必要です。


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