三菱重工長崎造船所事件は、昭和56年(1981年)9月18日に最高裁判所で判決が下された労働事件です。この事件では、ストライキ期間中の家族手当の削減が争点となりました。
争点・結論
本事件の主要な争点は、ストライキ期間中の家族手当の削減が適法かどうかでした。最高裁判所は、この削減を適法とする判断を示しました。
判旨
- ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのが相当である。
- 本件では、家族手当の削減が長年にわたり実施されており、労働組合の了承も得ていたことから、労働慣行として成立していたと認められる。
- この労働慣行は、家族手当を割増賃金の基礎となる賃金に算入しないと定めた労働基準法37条2項及び本件賃金規則の趣旨に照らして著しく不合理であるとは認められない。
解説
この判決は、ストライキ期間中の賃金削減に関して重要な指針を示しました。
- 個別判断の原則:
賃金削減の対象となる部分は、労働協約や労働慣行に基づいて個別に判断すべきとしました。 - 労働慣行の重視:
長年にわたる実施と労働組合の了承により、労働慣行が成立し得ることを認めました。 - 家族手当の性質:
家族手当が必ずしも生活保障部分に該当するわけではなく、労働の対価としての性質を持ち得ることを示唆しました。 - 不利益変更の合理性:
労働慣行として成立している場合、著しく不合理でない限り、その変更は認められる可能性があることを示しました。
関連条文
- 労働基準法第24条(賃金の支払)
- 労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
- 労働組合法第16条(労働協約の効力)
三菱重工長崎造船所事件から学ぶべき事柄
- 賃金削減の範囲決定における個別判断の重要性
- 労働慣行の成立要件と効力
- 家族手当の法的性質の複雑性
- 労使間のコミュニケーションの重要性
関連判例
- 日本食塩製造事件(最判昭和50年4月25日)
- 大星ビル管理事件(最判平成2年11月26日)
注意すべき事柄
企業は賃金削減を行う際に、その範囲や方法について労働協約や労働慣行を十分に考慮する必要があります。また、労働者も自身の賃金の構成や労働条件について理解を深め、必要に応じて交渉する姿勢が重要です。
経営者・管理監督者の方へ
- 賃金削減を検討する際は、過去の慣行や労働協約を十分に確認してください。
- 労働組合や従業員代表との協議を十分に行い、理解を得るよう努めてください。
- 賃金規則や就業規則の変更には適切な手続きを踏んでください。
従業員の方へ
- 自身の賃金構成や労働条件について理解を深めてください。
- 賃金削減の提案があった場合、その根拠や過去の慣行について確認する権利があります。
- 不当な削減だと感じた場合は、労働組合や専門家に相談することを検討してください。
