中小企業の経営者・人事担当者の皆様、2025年4月から高年齢者雇用安定法の経過措置が終了し、65歳までの雇用確保措置が完全義務化されます。この改正は「65歳定年の義務化」ではなく、「65歳までの雇用確保措置」の義務化です。現在、経過措置を利用している企業は、期限までに対応が必要となります。
改正の背景と目的
労働人口減少への対応
日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は、2025年には7,000万人を下回ると予測されています。一方で、65歳以上の高齢者人口は増加を続けており、豊富な経験と技能を持つ高年齢者の活躍の場を確保することが、人手不足解消の重要な施策となっています。
高齢者の活躍推進
近年の医療技術の進歩や健康寿命の延伸により、65歳以降も働く意欲と能力を持つ高齢者が増加しています。また、デジタル化やAIの進展により、身体的負担の少ない働き方も増えており、高齢者が活躍できる職場環境も広がっています。
年金支給開始年齢との整合性
厚生年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられ、2025年度には65歳となります。この年金支給開始年齢と雇用確保措置の年齢を一致させることで、高齢者の生活の安定を図ることが重要となっています。
このような社会的背景から、高年齢者の雇用確保をより確実なものとするため、経過措置の終了と完全義務化が実施されることとなりました。
現行制度の概要
高年齢者雇用安定法の基本的な仕組み
高年齢者雇用安定法は、高年齢者の雇用の安定と就業の促進を図ることを目的とした法律です。企業に対して、65歳までの高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けています。
現行の高年齢者雇用確保措置の内容
企業は以下の3つの選択肢のいずれかを実施する必要があります
定年制の廃止
定年制を廃止し、従業員が自身の意思で退職時期を決定できる制度
定年の引上げ
定年を65歳以上に設定する制度
継続雇用制度の導入
定年後も希望者を65歳まで継続して雇用する制度
継続雇用先は、自社または特殊関係事業主(子会社・関連会社等)
経過措置の説明と現状
2013年4月の法改正以前から存在する労使協定に基づく継続雇用制度の対象者基準は、2025年3月31日までの経過措置として認められています。
経過措置の内容
2013年4月の法改正以前に労使協定を締結している企業は、継続雇用制度の対象者を限定できる経過措置が認められています。この経過措置は2025年3月31日で終了します。
現状における課題
経過措置を利用している企業では、継続雇用の対象者を「会社が定める基準に適合する者」に限定可能です。2025年4月以降は、原則として希望者全員を65歳まで雇用する必要があります。約2割の企業が現在も経過措置を利用していると言われています。これらの企業は、2025年4月までに希望者全員が65歳まで働ける制度を整備する必要があります。
2025年4月改正のポイント
経過措置終了の具体的内容
この改正は「65歳定年の義務化」ではなく、「65歳までの雇用確保措置」の義務化です。2025年4月1日以降、これまで認められていた継続雇用制度の対象者限定が完全に廃止されます。経過措置を利用している企業は、以下のいずれかの対応が必要となります
希望者全員を対象とする継続雇用制度への移行
定年年齢の65歳への引き上げ
定年制の廃止
企業に求められる対応
- 65歳までの定年引き上げ
就業規則における定年年齢の変更
賃金制度の見直し
役職定年制度との整合性確保
人事評価制度の調整
- 定年制の廃止
就業規則からの定年規定の削除
新たな退職制度の設計
能力・成果に応じた人事制度の整備
賃金体系の全面的な見直し
- 65歳までの継続雇用制度の導入
継続雇用規定の整備
再雇用時の労働条件の設定
職務内容・勤務形態の検討
賃金水準の決定
希望者全員への対応義務
基本的な考え方
原則として、65歳までの雇用を希望する社員全員を対象とします。心身の故障により業務に耐えられない場合等を除き、対象者の選別は不可となります。継続雇用時の労働条件は、労使で十分に協議して決定します。
留意点
形式的な基準や運用による実質的な対象者限定は認められません。健康状態や勤務実績による制限も、客観的かつ合理的な基準が必要です。本人の希望を踏まえた柔軟な勤務形態の検討が望ましいです。
これらの対応は、2025年4月までに確実に実施する必要があります。
よくある質問と回答
Q1: 経過措置終了後も、継続雇用制度の対象者を会社の基準で選定することは可能ですか?
A1: 原則として不可能です。健康上の理由で業務遂行が困難な場合や、懲戒事由に該当する場合などの客観的で合理的な理由がある場合を除き、希望者全員を65歳まで継続雇用する必要があります。
Q2: 継続雇用時の労働条件は、定年前と同じでなければなりませんか?
A2: 必ずしも同じ労働条件である必要はありません。ただし、労働条件の変更は、労使で十分に協議のうえ、合理的な内容とする必要があります。職務内容や勤務時間、賃金等について、高年齢者の希望も考慮しながら設定することが望ましいとされています。
Q3: 定年後の継続雇用について、グループ会社での雇用は認められますか?
A3: はい、認められます。自社での継続雇用が困難な場合、特殊関係事業主(子会社・関連会社等)での継続雇用も可能です。ただし、事前に特殊関係事業主との間で継続雇用制度の対象となることを約する契約を締結しておく必要があります。
Q4: 65歳までの雇用確保措置として、短時間勤務のみの選択肢を提示することは可能ですか?
A4: 一律に短時間勤務のみを選択肢とすることは望ましくありません。フルタイム勤務を希望する従業員の希望も考慮し、複数の勤務形態を用意することが推奨されます。ただし、業務の特性上やむを得ない場合は、合理的な説明ができることが前提となります。
Q5: 2025年4月の経過措置終了までに対応が間に合わない場合、罰則はありますか?
A5: 高年齢者雇用確保措置を講じていない企業に対しては、厚生労働大臣による勧告、企業名の公表等の行政措置が設けられています。また、助成金の支給対象から除外される可能性もあります。そのため、期限までに確実な対応を行うことが重要です。
Q6: 65歳までの継続雇用に関する就業規則の改定は、いつまでに行う必要がありますか?
A6: 2025年4月1日の施行日までに就業規則の改定を完了させる必要があります。具体的には、2025年3月31日までに、労働基準監督署への届出を済ませておくことが求められます。余裕をもって2024年内での対応を推奨します。
Q7: 継続雇用制度導入に伴う人件費増加への対応として、どのような施策が考えられますか?
A7: 以下のような対応が考えられます
役割・成果に応じた賃金体系への見直し
短時間勤務やフレックスタイム制の導入
業務の効率化・自動化による生産性向上
高齢者雇用に関する助成金の活用
※制度設計の際は労使での十分な協議が重要です。
Q8: 65歳以上の従業員に対する安全衛生面での配慮として、特に注意すべき点はありますか?
A8: 以下の点に特に注意が必要です
定期健康診断の確実な実施と結果に基づく配置転換等の考慮
作業環境の整備(照明、温度管理、休憩施設等)
身体的負担の大きい作業の見直しや補助機器の導入
高齢者特有の健康リスクに関する研修の実施
※労働安全衛生法に基づく適切な措置を講じることが重要です。
Q9: 2025年4月からの高年齢雇用継続給付の変更点について教えてください。
A9: 2025年4月からは高年齢雇用継続給付も縮小されます。具体的には、支給率が現行の最大15%から最大10%に引き下げられます。この変更は、65歳までの雇用確保措置の完全義務化と同時に実施される予定です。企業は、この給付金の縮小を考慮した賃金体系の見直しも検討する必要があるでしょう。
相談窓口案内
高齢・障害者雇用支援センター
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- 制度設計のアドバイス
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都道府県労働局
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ハローワーク
- 高年齢者の雇用支援
- 助成金の申請手続き
- 求人に関する相談
70歳就業確保措置の現状と今後の展望
現在の努力義務の内容
2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法では、企業に対して以下のいずれかの措置を講じることを努力義務としています
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
将来的な義務化に向けた動向
過去の法改正の経緯を見ると、以下のような展開が予想されます
- 努力義務化(2021年)から約6年後に法的義務化
- 2034年頃までには希望者全員の雇用確保が義務化される可能性
- この時期は団塊ジュニア世代が65歳を迎える時期と重なる
企業に求められる対応
現時点で以下の準備を進めることが推奨されます
- 世代別人員構成の把握と採用計画の見直し
- シニア世代の雇用想定の策定
- 人件費総額の中長期的な予測
- 多様な働き方に対応できる制度設計
なお、70歳までの就業確保措置は現在「努力義務」ですが、年1回の高年齢者雇用状況報告が必要であり、検討段階から具体的な取り組みが求められています。

