生理休暇日の賃金に関する判例です。この判例は、生理休暇日を欠勤扱いとして精皆勤手当を減額する措置が、労働基準法(昭和60年法律第45号による改正前のもの)第67条に違反しないとしたものです。
事案
会社が精皆勤手当の制度を導入し、出勤不足日数によって支給の有無や額が決まるようにしました。また、生理休暇を取得した場合は欠勤扱いとして、出勤不足日数に算入することとしました。そして、従業員が生理休暇を取得したため、会社は精皆勤手当を減額しました。これに対して、従業員が、そのような取扱いは生理休暇の趣旨に反するもので、労働基準法に違反すると主張し、精皆勤手当の減額分の支払いを求めて会社を提訴しました。
争点・結論
生理休暇日が労働基準法上の労働時間に該当するか否かと、生理休暇日に対する賃金請求権が発生するか否かとは別の問題であるとし、生理休暇日に対する賃金請求権の有無は、労働契約においていかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものであるとしました。そして、本件の労働契約においては、生理休暇日に対する対価として泊まり勤務手当を支払い、生理休暇日中に実作業に従事した場合にはこれに加えて時間外勤務手当等を支払うが、不活動生理休暇日に対しては泊まり勤務手当以外には賃金を支払わないものとされていたと解釈するのが相当であるとしました。また、生理休暇日を欠勤扱いとして精皆勤手当を減額する措置は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難にし、労働基準法第67条の規定が特に設けられた趣旨を失わせると認められるものでない限り、同条に違反しないとしました。以上より、会社の取扱いは、労働基準法第67条に違反するものとは言えないとしました。
判旨
最高裁判所第三小法廷は、昭和60年7月16日に判決を言い渡し、原告の上告を棄却しました。
解説
生理休暇日の賃金について、労働基準法の規定と労働契約の合意との関係を明らかにした重要な判例です。労働基準法第67条は、所定の要件を備えた女子従業員が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならないと規定しています。しかし、この規定は、生理休暇が有給であることまで保障するものではなく、また、生理休暇日を出勤扱いにすることまで義務付けるものでもありません。したがって、生理休暇日に対する賃金請求権の有無は、労働契約においていかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものであり、労使間に特段の合意がない限り、生理休暇日に対する賃金請求権はないというのが、最高裁の基本的な考え方です。しかし、それだけでは、生理休暇日を欠勤扱いとして、精皆勤手当等の経済的利益を得られないような措置や制度を設けたときは、その内容によっては、生理休暇の取得が事実上抑制される場合もあるという問題が生じます。そこで、最高裁は、そのような措置や制度は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難にし、労働基準法第67条の規定が特に設けられた趣旨を失わせると認められるものでない限り、同条に違反しないということを示しました。このように、生理休暇日の賃金に関して、労働基準法の規定と労働契約の合意との関係を明らかにした重要な判例です。
関連条文
労働基準法(昭和60年法律第45号による改正前のもの)第67条、第12条第3項、第39条第7項、第39条第8項、第32条の2、第37条等があります。
エヌビーシー工業事件から学ぶべき事柄
生理休暇日の賃金請求権の有無は、労働契約においていかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものである。
生理休暇日を欠勤扱いとして精皆勤手当等を減額する措置は、生理休暇の取得を著しく困難にし、労働基準法第67条の規定が特に設けられた趣旨を失わせると認められるものでない限り、同条に違反しない。
仮眠時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているか否かによって客観的に判断される。
関連判例
三菱重工長崎造船所事件(最高裁平成12年3月9日):仮眠時間中に作業を行わなかった場合でも、仮眠室で待機し、警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられている場合は、その時間は会社の指揮命令下に置かれているとして、労働基準法上の労働時間に当たるとした事例。
ビソー工業事件(最高裁平成26年8月26日):仮眠時間中に作業を行わなかった場合でも、仮眠室で待機し、警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられている場合は、その時間は会社の指揮命令下に置かれているとして、労働基準法上の労働時間に当たるとした事例。
注意すべき事柄
生理休暇日に対する賃金の支払いや取り扱いについては、労働契約や就業規則で明確に定めること。労働者との合意や協議を十分に行うこと。
生理休暇日を欠勤扱いとして精皆勤手当等を減額する措置を設ける場合は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等を考慮し、生理休暇の取得を著しく困難にしないようにすること。
仮眠時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かを確認し、必要に応じて労働条件の見直しや労働者との協議を行うこと。仮眠時間が労働時間であるとしても、労働基準法第32条の2に定める変形労働時間制の要件を充足している場合は、割増賃金の支払い義務が発生しないことを認識し、変形労働時間制の許可申請や労働者との合意を行うこと。
経営者・管理監督者の方へ
- 生理休暇の取得は労働基準法で定められた女性労働者の権利です。適切に制度を運用し、休暇を取得しやすい環境を整備することが重要です。
- 生理休暇の取得を理由に賃金を減額したり、不利益取扱いをすることは法律違反になる可能性があります。公正な処遇を心がける必要があります。
- 生理休暇の取扱い(有給/無給、欠勤扱い等)については、就業規則等で明確に定め、労働者と十分に協議した上で決めましょう。
- 出勤扱いにせず、賃金カットや手当減額等のペナルティを設ける場合は、生理休暇の取得を著しく困難にさせない配慮が必要です。
従業員の方へ
- 生理休暇は法律で定められた女性労働者の権利です。上司に気兼ねせず、必要に応じて積極的に取得しましょう。
- 生理休暇の取得を理由に賃金カットや不利益な扱いを受けた場合は、労働基準監督署に相談できます。
- 就業規則等で生理休暇の取扱いが不明確な場合は、会社に確認し、労使でルールを明確化することが大切です。
- 生理で体調が優れない場合でも、無理に出勤せずに休暇を取得することで、健康を守り、長期的な就労を維持できます。
