ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員30名の会社を経営しています。最近、「週末に副業をしたい」「平日の夜、ネットで副業をしたい」という相談が増えてきました。
正直なところ、本業に支障が出るのではないか、情報漏洩のリスクがあるのではないか、と不安です。また、長時間労働で体調を崩されても困ります。
就業規則で副業を禁止することはできるのでしょうか?それとも、認めなければいけないのでしょうか?副業に関する会社としての対応方法を教えてください。
お悩み
- 副業を禁止することはできる?
- 認める場合、どんな条件をつければよい?
- 副業による長時間労働の管理はどうする?
結論:原則として副業は自由。
ただし、合理的な理由があれば制限・禁止できる
結論から申し上げますと、労働時間外の時間をどう使うかは従業員の自由であり、原則として副業を禁止することはできません。ただし、会社として合理的な理由がある場合は、就業規則で制限・禁止することが認められています。
副業に関するルールのポイント
① 原則として、副業は労働者の自由(厚生労働省のモデル就業規則でも容認)
② 会社の業務に支障がある、競業にあたる、情報漏洩のリスクがある場合は制限可能
③ 就業規則で「届出制」「許可制」を設けることができる
④ 副業を含めた労働時間の管理(健康管理)が必要
「うちの会社では副業は一切認めない」という全面禁止は、時代の流れに合わず、優秀な人材の確保も難しくなる可能性があります。
副業に関する法律と国の方針
労働時間外は労働者の自由
労働契約は、会社が指定した労働時間内の労務提供を約束するものです。労働時間外の時間をどう使うかは、基本的に従業員の自由です。
厚生労働省のモデル就業規則の改定
2018年、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、モデル就業規則から「副業禁止」の規定を削除しました。
現在のモデル就業規則では、
- 「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」
- ただし、一定の場合には届出・許可を求めることができる
という内容になっています。
国の方針:副業・兼業を推進
政府は「働き方改革」の一環として、副業・兼業を推進しています。
副業のメリット(国の見解)
- スキルアップ・キャリア形成
- 所得の増加
- 起業準備
- 多様な働き方の実現
こうした流れを踏まえ、全面的に禁止するのではなく、一定のルールのもとで認める方向が望ましいとされています。
副業を制限・禁止できる場合
合理的な理由があれば制限可能
以下のような合理的な理由がある場合は、副業を制限・禁止することが認められています。
本業に支障がある場合
- 長時間の副業により、本業の業務遂行に支障が出る
- 疲労の蓄積により、業務に集中できない
- 遅刻・欠勤が増える
競業にあたる場合
- 同業他社でアルバイトをする
- 競合する事業を自ら営む
- 顧客を奪う行為
会社の信用を損なう場合
- 反社会的勢力と関わる副業
- 風俗業など、社会的評価を下げる可能性がある副業
- 会社名を使った副業
情報漏洩のリスクがある場合
- 業務上知り得た機密情報を副業先で利用する
- 顧客情報を持ち出す
「なんとなく不安」では禁止できない
「なんとなく副業は認めたくない」「他の社員に示しがつかない」といった抽象的な理由では、副業を禁止することはできません。
就業規則での副業ルールの定め方
全面禁止ではなく「届出制」「許可制」がおすすめ
副業を全面禁止するのではなく、「届出制」または「許可制」を採用することで、柔軟に対応できます。
届出制
- 従業員は副業をする場合、事前に会社に届け出る
- 会社は届出内容を確認し、問題があれば禁止・制限する
- 問題がなければ、基本的に認める
許可制
- 従業員は副業をする場合、事前に会社の許可を得る
- 会社は内容を審査し、許可・不許可を判断する
- 届出制より会社の裁量が大きい
就業規則の記載例
副業を認める場合の記載例
「従業員は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。ただし、以下のいずれかに該当する場合は、これを禁止または制限することがある。
① 本業の業務遂行に支障をきたす場合
② 会社の利益を害する競業行為にあたる場合
③ 会社の信用・名誉を損なう場合
④ 機密情報が漏洩するおそれがある場合
⑤ 長時間労働により健康を害するおそれがある場合
従業員は、副業を行う場合、事前に所定の届出書を提出しなければならない。」
届出書に記載してもらう内容
副業の届出書には、次のような内容を記載してもらいます。
- 副業先の会社名・業種
- 業務内容
- 勤務日・勤務時間
- 報酬(目安)
- 開始予定日
これにより、本業への影響や競業の有無を判断します。
副業を認める場合の注意点
労働時間の通算管理
法律上、複数の会社で働く場合、労働時間は通算されます。
例:本業で1日8時間勤務後、副業で3時間働いた場合
→ 合計11時間労働となり、副業先で3時間分の時間外労働が発生
この場合、副業先(後から契約した会社)が、割増賃金を支払う義務があります。
健康管理の責任
副業により長時間労働となり、健康を害した場合、会社にも安全配慮義務違反が問われる可能性があります。
健康管理のポイント
- 副業を含めた総労働時間を把握する
- 過重労働にならないよう、本業の労働時間を調整する
- 定期的に健康状態を確認する
情報漏洩のリスク管理
副業先で、本業で知り得た情報を使わないよう、念押しします。
秘密保持の徹底
- 就業規則に秘密保持義務を明記
- 副業の届出時に、秘密保持の誓約書を提出してもらう
社会保険・労災の取り扱い
副業先でも、一定の要件を満たせば社会保険に加入する必要があります。また、副業中の事故も、労災保険の対象となります。
複雑なケースでは、専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問
Q1:副業をしていることを隠していた場合、どうなる?
A:届出義務違反として、就業規則に基づき懲戒処分の対象となる可能性があります。
ただし、処分の前に事情を聞き、内容によっては注意にとどめることも検討します。
Q2:公務員の副業は禁止されているが、民間企業も同じ?
A:いいえ、異なります。
公務員は法律で副業が原則禁止されていますが、民間企業には法律上の禁止規定はありません。
Q3:副業で疲れて遅刻が増えた場合は?
A:本業に支障が出ている場合は、副業の制限・禁止を検討できます。
まずは面談で状況を確認し、改善を促します。
Q4:土日だけの副業なら、労働時間の通算は不要?
A:土日だけの副業でも、法律上は労働時間を通算する必要があります。
ただし、本業が週休2日で土日が休みの場合、実務上の影響は少なくなります。
まとめ
副業に関する会社の対応は、
- 原則として副業は従業員の自由であり、全面禁止は難しい
- 合理的な理由(本業への支障、競業、情報漏洩など)があれば制限可能
- 就業規則で「届出制」「許可制」を設けるのが現実的
- 副業を認める場合は、労働時間の通算管理と健康管理が必要
という点を押さえておく必要があります。
上本町社会保険労務士事務所では、副業に関する就業規則の整備、副業届出書のひな形作成、労働時間管理の方法、競業・情報漏洩を防ぐルール作りなどを通じて、時代に合った柔軟な働き方をサポートしています。
「副業を認めるべきか判断に迷っている」
「副業に関するルールを整えたい」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

