ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の会社を経営しています。先日、従業員の一人が「副業先でケガをして、1週間休む必要がある」と連絡してきました。副業は事前に届出を受けていたので把握していましたが、副業先でのケガも労災になるのでしょうか?
また、その従業員は本業で1日8時間勤務した後、副業先で週3回・1回3時間働いていると聞いています。労働時間を通算すると残業になると聞いたことがありますが、どのように計算すればよいのでしょうか?
副業と労災、労働時間の通算について教えてください。
お悩み
- 副業先でのケガは労災になる?
- 労働時間の通算とは?
- 会社として、どこまで管理する必要がある?
結論:副業先のケガも労災の対象。
労働時間は通算され、割増賃金の支払い義務が発生する
結論から申し上げますと、副業先での業務中のケガも労災保険の対象となります。また、本業と副業の労働時間は法律上通算され、1日8時間・週40時間を超える部分については、割増賃金の支払い義務が発生します。
副業と労災・労働時間のポイント
① 副業先での業務中のケガは、副業先の労災保険が適用される
② 労働時間は通算され、後から契約した会社(多くは副業先)が割増賃金を支払う
③ 過重労働による健康障害は、両社に責任が及ぶ可能性がある
④ 会社は副業を含めた健康管理に配慮する必要がある
副業が増える中、労働時間の管理と健康管理は、これまで以上に重要になっています。
副業先でのケガと労災保険
副業先での業務災害も労災の対象
副業先での業務中のケガや病気は、副業先の労災保険が適用されます。
労災認定の要件
- 業務遂行性:副業先の業務中に発生したこと
- 業務起因性:業務が原因で発生したこと
この2つの要件を満たせば、副業先でも労災として認定されます。
どちらの会社の労災保険が適用されるか
原則として、ケガや病気が発生した勤務先の労災保険が適用されます。
例
- 本業の勤務中にケガ → 本業の会社の労災保険
- 副業先の勤務中にケガ → 副業先の会社の労災保険
- 本業から副業先への移動中のケガ → 通勤災害として、移動先(副業先)の労災保険
給付額の計算方法
労災保険の給付額は、原則として事故が発生した勤務先の賃金をもとに計算されます。
ただし、2020年9月からは、複数の勤務先の賃金を合算して給付額を計算する制度が導入されました。
複数事業労働者の労災給付
- 複数の勤務先の賃金を合算して、給付基礎日額を計算
- より手厚い補償が受けられるようになった
本業の会社が気をつけること
副業先でのケガであっても、本業の会社も以下の点に注意が必要です。
- 副業を含めた総労働時間が過重労働になっていないか確認
- 過重労働が原因でケガや病気になった場合、本業の会社にも安全配慮義務違反が問われる可能性
- 副業先でのケガによる休業中も、本業の有給休暇や欠勤の扱いを整理しておく
労働時間の通算ルール
法律上、労働時間は通算される
労働基準法第38条により、複数の会社で働く場合、労働時間は通算されます。
労働時間の上限
- 1日8時間
- 週40時間
これを超える部分は、「時間外労働」として、割増賃金(1.25倍以上)の支払いが必要です。
通算の具体例
本業で1日8時間勤務した後、副業先で3時間勤務した場合
- 通算労働時間:8時間 + 3時間 = 11時間
- 法定労働時間(8時間)を超える3時間分は、時間外労働
- 割増賃金の支払い義務は、**後から契約した会社(副業先)**が負う
「後から契約した会社」が割増賃金を支払う
労働時間の通算により時間外労働が発生した場合、原則として「後から労働契約を結んだ会社」が割増賃金を支払います。
例
- 本業:A社(先に契約)
- 副業:B社(後に契約)
- → 時間外労働分の割増賃金は、B社(副業先)が支払う
36協定の締結も必要
副業先で時間外労働が発生する場合、副業先の会社も36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
副業先が36協定を結んでいない場合、時間外労働をさせることができません。
副業を認める場合の労働時間管理
本業の会社がすべきこと
副業を認める場合、会社として以下の対応が必要です。
副業の届出を受ける
- 副業先の会社名・業種
- 勤務日・勤務時間
- 業務内容
総労働時間の把握
- 本業と副業を合わせた総労働時間を確認
- 過重労働(月80時間超など)になっていないかチェック
健康管理
- 定期的に面談を実施
- 疲労の蓄積や体調不良の兆候がないか確認
- 必要に応じて、副業の制限や本業の労働時間の調整を検討
副業先の会社がすべきこと
副業先の会社も、本業での労働時間を確認する必要があります。
- 本人から本業での労働時間を申告してもらう
- 通算して法定労働時間を超える場合は、36協定の範囲内か確認
- 割増賃金を適切に支払う
過重労働による健康障害と会社の責任
両社に安全配慮義務がある
副業により総労働時間が長くなり、過重労働で健康を害した場合、本業・副業の両社に安全配慮義務違反が問われる可能性があります。
過重労働の目安
- 月80時間を超える時間外労働
- 長時間労働が数か月続く
このような状態が続くと、脳・心臓疾患やメンタル不調のリスクが高まります。
会社としての対応
副業を認める場合でも、以下の対応が必要です。
- 副業を含めた総労働時間を定期的に確認
- 過重労働の兆候があれば、面談を実施
- 本業の労働時間を調整する(残業を減らす、休日を増やすなど)
- 場合によっては、副業の制限を検討
「本人が希望しているから」「副業は自己責任」では済まされません。
よくある質問
Q1:副業先でのケガで休業中、本業の給与は払う必要がある?
A:法律上、本業の給与を支払う義務はありません。
ただし、有給休暇を使う場合は、通常通り有給扱いとなります。就業規則で、副業中のケガの扱いを定めておくとよいでしょう。
Q2:土日だけの副業でも、労働時間は通算される?
A:はい、通算されます。
ただし、本業が週休2日で土日が休みの場合、実務上は1日8時間・週40時間の範囲内に収まることが多く、割増賃金の問題は発生しにくくなります。
Q3:本人が副業先の労働時間を教えてくれない場合は?
A:届出制・許可制を採用している場合、副業先の労働時間を申告してもらうことができます。
申告を拒否する場合は、就業規則に基づき、副業を制限・禁止することも検討できます。
Q4:副業先が個人事業(フリーランス)の場合は?
A:個人事業主として働く場合は、労働基準法の「労働者」に該当しないため、労働時間の通算は不要です。
ただし、実態として「労働者」と判断される場合は、通算が必要になることもあります。
まとめ
副業と労災・労働時間の通算については、
- 副業先での業務中のケガは、副業先の労災保険が適用される
- 労働時間は通算され、後から契約した会社(多くは副業先)が割増賃金を支払う
- 過重労働による健康障害は、本業・副業の両社に責任が及ぶ可能性がある
- 会社は副業を含めた総労働時間を把握し、健康管理に配慮する必要がある
という点をしっかり押さえておく必要があります。
上本町社会保険労務士事務所では、副業に関する労働時間管理の方法、健康管理の体制づくり、就業規則での副業ルールの整備、労災発生時の対応方法などを通じて、副業時代に対応した労務管理をサポートしています。
「副業を認めたいが、労働時間の管理が不安」
「副業先でのケガの対応が分からない」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

