ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員25名の製造業を営んでいます。ここ数年、人手不足もあり、月の残業時間が多くなっていました。最近になって、従業員から「残業が多すぎる」「家族との時間が取れない」といった声が上がり、退職を検討している社員も出てきています。
また、先日社外の専門家から「このままでは過労死ラインに近い」と指摘され、法律上も問題がないか不安になってきました。
どこから手を付ければよいのか分からず、残業時間の削減と、法律を守った働き方に改善したいと考えています。
お悩み
- 残業時間が多いと言われたが、何から改善すればよい?
- 法律上の「アウトライン」はどこにある?
- 実際に残業を減らした中小企業の取り組み例を知りたい
結論:現状の「見える化」と、ルール・仕組み・現場改善の三本柱で進める
結論から申し上げますと、残業が多いと指摘された場合、まず「現状を数字で見える化」し、その上で「ルール」「仕組み」「現場のやり方」の三つをセットで見直すことが重要です。
- いきなり「残業するな」と言っても、現場は動きません
- 法律上の上限(時間外労働の上限規制)を踏まえたうえで、自社の目標ラインを設定する
- そのうえで、就業規則・36協定・勤怠管理・業務のやり方を、少しずつ現実的な形で変えていく
ここでは、実際に中小企業でよく行われている「改善のステップ」と「取り組み例」をご紹介します。
現状を「見える化」する
まずは数字で現状を把握する
- 従業員ごと・部署ごとの月ごとの時間外労働時間を集計する
- 繁忙期・閑散期の差、特定の人に負荷が集中していないかを確認する
- 「平均残業時間」だけでなく、「多い人はどれくらいか」も見る
ここで大切なのは、「何となく多い気がする」から、「誰が・どの部署で・どの時間帯に多いのか」が分かる状態にすることです。
過労死ラインとの関係も確認
一般的に、月80時間を超える時間外・休日労働が続くと、健康リスクが高まると言われています。
自社の実態がこのラインに近づいていないか、一度チェックしてみましょう。
ルール(就業規則・36協定)を確認する
今のルールと実態が合っているか?
- 就業規則に定めている始業・終業時刻、休憩時間
- 所定労働時間(1日・1週間)
- 時間外労働・休日労働のルール
- 36協定で定めている上限時間
これらの「書類上のルール」と、実際の働き方に大きなズレがないか確認します。
ありがちな問題点
- 36協定の上限いっぱいまで残業することが「当たり前」になっている
- そもそも36協定が結ばれていない、あるいは更新されていない
- 就業規則上の定時と、実際の「暗黙の定時」が違う
まずは、法律に合ったルールになっているか、そしてそのルールが現場で守られているかを見直すところから始めます。
勤怠管理の方法を整える
紙・自己申告だけに頼らない
- タイムカードや勤怠システムなどで、出退勤時刻を客観的に記録する
- サービス残業が発生しないよう、「早出」「持ち帰り仕事」も含めて把握する
- 管理職が部下の勤怠状況を確認できる仕組みをつくる
「残業が多い」と言われているのに、そもそも正確な時間が分からないという状態は、トラブルの元になります。
管理職への意識づけ
- 上司が「早く帰っていい」と言っているか
- 長時間働くことを評価していないか
- 会議や打ち合わせを、残業前提の時間帯に入れていないか
勤怠管理は「システム」だけでなく、管理職の意識改革とセットで考えることが大切です。
改善例1:業務の棚卸しと「やめる仕事」を決めたA社
背景
- 従業員20名、製造業
- 月平均残業:一人あたり40〜50時間
- ベテランほど残業が多く、若手が不満を抱いていた
取り組んだこと
- 全員に1週間の業務を書き出してもらう(見積り・製造・検査・会議・事務処理など)
- 「本当に必要な仕事」か、「昔から何となく続けている仕事」かを整理
- 経営者・現場リーダーが一緒に、「やめる仕事」「減らす仕事」「他の人に任せる仕事」を決めた
結果
- 毎日行っていた会議を週2回に減らし、資料も簡略化
- ベテランだけが行っていた事務処理を、事務スタッフへ移管
- 平均残業時間が、3か月で40時間→25時間程度に減少
- ベテラン社員からも「前よりムダが減った」との声が出るようになった
改善例2:「ノー残業デー」を形だけで終わらせなかったB社
背景
- 従業員30名、サービス業
- 形式的に「ノー残業デー」を設けていたが、実際はほとんど守られていなかった
取り組んだこと
- 「ノー残業デー」を週1回から月2回に減らし、その代わり徹底して実施する方針に変更
- ノー残業デーの日は、
- 会議・打ち合わせを17時以降に入れない
- 緊急対応以外のメール・電話対応は翌日に回す
- 経営者自身が、その日は早く帰る姿勢を見せた
結果
- 「どうせ守られないルール」という空気が変わり、
月2回は定時退社が定着 - その日に合わせて業務を前倒しする習慣がつき、
他の日の残業時間も少しずつ減少
改善例3:残業の「事前申請制」を導入したC社
背景
- 従業員15名、卸売業
- 「何となく」残業している社員が多く、内容も把握できていなかった
取り組んだこと
- 原則として、残業は**「事前申請・事後報告」方式**に変更
- 残業の理由と予定時間を、簡単なフォームで上司に申請
- 上司が、「本当に今日やる必要があるか」「他の日に回せないか」を確認
結果
- ダラダラとした残業が減り、
「今日中にやる必要がある仕事」に絞られるようになった - 上司も部下の業務量を把握しやすくなり、
繁忙期には人の配置を変えるなどの工夫ができるようになった
法律上、押さえておきたいポイント
時間外労働の上限規制
- 原則として、36協定で定める時間外労働には上限があります
- 特別条項つきの36協定を結ぶ場合でも、
「1か月〇時間」「1年〇時間」といった枠を超えないようにする必要があります - 上限を超える状態が続くと、行政指導や是正勧告につながるおそれがあります
健康管理上の配慮
- 長時間労働者への面接指導
- 定期健康診断の実施と結果のフォロー
- メンタル不調の早期発見・相談窓口の設置
残業時間の削減は、単に「数字を減らす」だけでなく、従業員の健康を守る取り組みとして位置づけることが大切です。
まとめ
残業が多いと指摘された中小企業では、
- まず「現状を数字で見える化」する
- 法律に合ったルール(就業規則・36協定)を整える
- 勤怠管理と管理職の意識をセットで変える
- 業務の棚卸しや残業の事前申請など、現場でできる工夫を積み重ねる
といったステップで改善を進めていくことができます。
上本町社会保険労務士事務所では、
- 残業時間の現状分析
- 36協定や就業規則の見直し
- 長時間労働の是正に向けた社内ルールづくり
などを通じて、「無理のない残業削減」と「従業員が定着しやすい職場づくり」をサポートしています。
「残業が多いと言われて不安」
「どこから手をつければよいか分からない」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

