採用のカギは”質問力”にあり
ここまで2回にわたって、採用で最も大切なのは「ミスマッチを防ぐこと」であり、そのためには「自社に合う人を見極める」視点が必要だとお伝えしてきました。そして前回は、面接の準備として「どんな人に来てほしいか」を言葉にし、職務整理表にまとめる方法をお伝えしました。
では、準備が整ったら、実際の面接ではどんな質問をすれば「この人は自社に合いそうか」が見えてくるのでしょうか。
面接で投げかける質問の内容次第で、その人の「人柄」や「考え方」「仕事への姿勢」が見えたり、逆に全く見えなかったりします。たとえば、「前職は何をしていましたか?」と聞くだけでは、経歴は分かっても、その人がどんな風に働いてきたのか、どんな価値観を持っているのかまでは見えてきません。
つまり、面接の質は「質問力」で決まると言っても過言ではないのです。良い質問ができれば、相手の本当の姿が見え、採用の精度が上がります。逆に、質問が表面的なままだと、結局「なんとなく良さそう」という感覚で決めてしまうことになります。
今回は、面接で効果的な質問のつくり方・使い方と、絶対に避けるべき質問について、具体的にお伝えします。
質問で知りたいのは「スキル」だけではない
中小企業の面接でよく見られるのが、職歴の確認だけで終わってしまうパターンです。
「前職は何をしていましたか?」「どれくらい経験がありますか?」「この資格は持っていますか?」といった質問を投げかけ、相手の答えを聞いて終わる。履歴書に書いてある内容を、口頭で確認しているだけという状態です。
たしかに、経験やスキルを確認することは大切です。しかし、それだけでは「その人が本当に自社に合うか」は見えてきません。
なぜなら、同じ経験を持っていても、仕事への向き合い方や人との関わり方は人それぞれだからです。
たとえば、「営業を5年やっていました」という経歴があっても、その5年間をどんな姿勢で過ごしてきたのかは人によって違います。
目標達成に向けて自分なりに工夫を重ねてきた人もいれば、言われたことをこなすだけで過ごしてきた人もいます。
お客様との信頼関係を大切にしてきた人もいれば、数字だけを追いかけてきた人もいるでしょう。
つまり、本当に知りたいのは「どんな考え方で仕事をしてきたか」「人とどう関わってきたか」「困難にどう向き合ってきたか」といった、その人の仕事への姿勢や価値観なのです。
経歴だけでは「その人らしさ」は見えない
履歴書や職務経歴書には、「いつ、どこで、何をしていたか」という事実が並んでいます。
しかし、それはあくまで表面的な情報です。その人が仕事の中でどんな場面で力を発揮し、どんなことに悩み、どう乗り越えてきたのか。そうした「その人らしさ」は、経歴だけでは見えてきません。
面接で経歴の確認だけに終始してしまうと、結局は「経験があるかないか」でしか判断できなくなります。
そして、経験があるように見えた人を採用したものの、入社後に「思っていたのと違った」というミスマッチが起きてしまうのです。
中小企業では、即戦力を求めるあまり、経験やスキルに目が向きがちです。
しかし、第1回でもお伝えしたように、本当に大切なのは「続く人」を見極めることです。
そのためには、スキルだけでなく、仕事への姿勢や人柄を確認する質問が必要になります。
行動の背景にある「考え方」を引き出す
では、どうすれば相手の考え方や姿勢が見えてくるのでしょうか。
それは、「行動」と「考え方」をセットで聞く質問に変えることです。
たとえば、「前職では営業をしていました」という答えに対して、そこで終わらせず、「営業の中で一番やりがいを感じたのはどんなときですか?」と聞いてみます。すると、「お客様から感謝されたとき」「目標を達成できたとき」「チームで協力して成果を出せたとき」など、その人が大切にしている価値観が見えてきます。
さらに、「逆に、苦労したことはありますか?」「そのとき、どうやって乗り越えましたか?」と深掘りすることで、困難に直面したときの対応の仕方や、周囲との関わり方も見えてきます。
「上司に相談しながら進めました」と答える人もいれば、「自分なりに調べて工夫してみました」と答える人もいるでしょう。どちらが良い悪いではなく、その人の働き方のスタイルが見えてくるのです。
このように、行動の背景にある「なぜそうしたのか」「そのとき何を考えていたのか」を引き出す質問をすることで、経歴だけでは分からない「その人らしさ」が見えてきます。次の章では、そうした質問を作るためのコツをお伝えします。
良い質問のコツ:自由に話してもらう質問で引き出す
相手の考え方や姿勢を知るためには、質問の仕方を少し工夫するだけで効果が大きく変わります。ここでは、面接で使える「良い質問」のコツを3つお伝えします。
「はい・いいえ」で終わる質問と、自由に話してもらう質問
まず意識したいのは、「はい・いいえ」で答えられる質問ばかりになっていないかどうかです。
たとえば、「残業はできますか?」「接客経験はありますか?」といった質問は、事実の確認には役に立ちますが、答えは「はい」「いいえ」で終わってしまい、その人の考え方や仕事ぶりまでは見えてきません。
一方で、「今までで一番たいへんだった仕事と、そのときどう乗り越えたかを教えてください」といった質問は、相手が自分の経験を具体的に話す必要があります。こうした「自由に話してもらう質問」を使うと、その人の考え方や行動の特徴が自然と表れてきます。
つまり、面接では「事実を確かめる質問」と「考え方や気持ちまで聞き出す質問」の両方が必要ですが、人柄や価値観を知りたい場面では、後者を意識的に増やしていくことがポイントになります。
「もう少し詳しく教えてください」で深掘りする
自由に話してもらう質問をしたあとは、その答えをきっかけに、少しだけ深掘りしてみましょう。
たとえば、「前職でクレーム対応が大変でした」と答えが返ってきたとします。そこで終わらせずに、「そのとき、具体的にどんな対応をしましたか?」「その場面で意識していたことは何ですか?」「振り返ってみて、どう感じていますか?」と、少しずつ質問を重ねていきます。
そうすることで、「まず相手の話を最後まで聞くようにしました」「上司に相談しながら進めました」「次は同じことが起こらないよう、事前の確認を徹底するようになりました」といった、その人なりの工夫や学びが見えてきます。
つまり、一度の質問と一度の答えで終わらせず、「もう少し詳しく」「そのとき何を考えていましたか?」と優しく掘り下げていくことで、本音や価値観に近い部分まで自然とたどり着けるのです。
テーマごとに「何を聞きたいか」を決めておく
さらに質問を組み立てやすくするために、あらかじめ「どんなテーマについて知りたいのか」を整理しておくと楽になります。たとえば、次の3つのテーマです。
一つ目は、仕事への姿勢です。
「仕事をする上で大事にしていることは何ですか?」「目標を達成するために、どんな工夫をしてきましたか?」といった質問から、その人がどんな意識で仕事に向き合っているのかが見えてきます。
二つ目は、人との関わり方です。
「職場で周りの人とは、どんなふうに関わることが多いですか?」「意見が合わない人と一緒に仕事をするとき、どんなことを心がけていますか?」と聞くことで、協調性やコミュニケーションの取り方が分かってきます。
三つ目は、失敗やトラブルへの向き合い方です。
「仕事で失敗した経験はありますか?そのとき、どう対応しましたか?」「注意されたとき、どんな気持ちになりましたか?その後、どう行動しましたか?」といった質問から、責任感や成長しようとする姿勢が見えてきます。
このように、テーマごとに聞きたいことを整理し、「はい・いいえ」で終わらない質問を用意しておくと、面接の会話はぐっと深くなります。相手のスキルだけでなく、人柄や価値観まで見えてくるようになるはずです。
職種別おすすめ質問例
ここからは、実際の面接でそのまま使いやすい質問例を、職種ごとに整理してみます。大事なのは「模範解答を探す」のではなく、その人の考え方や姿勢が見えるように問いかけることです。
現場職(製造・建設・サービスなど)の場合
現場職では、安全意識やチームワーク、指示の受け止め方がとても重要になります。つまり、「どんなふうに現場で立ち回ってきたか」をイメージできる質問がポイントです。
たとえば、「今までの仕事で、安全面で気をつけていたことは何ですか?」と聞くと、その人がどこまで周りに目を配れるタイプなのかが見えてきます。
続けて、「具体的にどんな場面で、その意識が役に立ちましたか?」と深掘りすると、口先だけの答えかどうかも分かりやすくなります。
また、「忙しいとき、どんなふうに周りと協力していましたか?」という質問からは、チームでの動き方が見えてきます。
ここでは、「自分のことだけに集中してしまう人か」「周囲の状況を見て、声をかけたり手伝ったりできる人か」といった違いが表れます。
さらに、「注意されたとき、どう受け止めて、どう行動しましたか?」と聞くと、素直さや改善しようとする姿勢が分かります。
この質問では、「あの上司が厳しすぎて…」と人のせいにばかりするのか、「最初は悔しかったが、言われたことを意識して行動を変えた」と振り返れるのかが、一つの見どころになります。
事務職の場合
事務職では、正確さ・段取り力・丁寧さが中心になります。つまり、「仕事の組み立て方」や「ミスへの向き合い方」が見える質問が効果的です。
たとえば、「仕事の優先順位をつけるとき、どんなことを意識していますか?」と聞くと、その人がどれくらい段取りを考えて動いているかが分かります。
ここで、「とにかく来た順に片づけます」と答えるのか、「締め切りや重要度を見て順番を決めています」と答えるのかで、仕事の進め方のイメージが変わってきます。
「ミスに気づいたとき、どのように対応しましたか?」という質問も大切です。ミスを隠そうとするタイプなのか、すぐに報告して対応策を考えられるタイプなのか。さらに、「その経験から、今はどんなことを気をつけていますか?」と聞くことで、同じ失敗を次に活かせる人かどうかが見えてきます。
事務職では電話対応も重要になることが多いため、「電話対応で心がけていたことはありますか?」と尋ねるのも有効です。丁寧さ・相手への配慮・言葉遣いへの意識などが、この質問から垣間見えます。
リーダー候補・将来の幹部候補の場合
リーダー候補には、自分の仕事だけでなく、「人と組織」にどう向き合ってきたかを聞いていくことが大切です。
たとえば、「部下や後輩に仕事を教えるとき、どんな点を大事にしていましたか?」という質問から、その人の指導スタイルが見えてきます。
「自分で見て覚えさせました」とだけ言うのか、「最初は一緒にやって、徐々に任せるようにしていました」と具体的に語れるのかで、関わり方の深さが分かります。
「意見がぶつかったとき、どのように調整してきましたか?」という質問では、対立をどう扱う人なのかが表れます。
一方的に押し切るタイプなのか、相手の話も聞きながら落としどころを探せるタイプなのか。ここでは、「自分の正しさ」を主張するだけでなく、「相手の事情も聞こうとしたかどうか」が一つのポイントになります。
さらに、「職場の雰囲気づくりで意識していたことがあれば教えてください」と聞くことで、チーム全体を見て動ける人かどうかが見えてきます。
たとえば、「忙しい時期こそ、こまめに声かけをするようにしていました」「朝礼で一言でもポジティブな話題を入れるようにしていました」といった答えが返ってくれば、周囲への配慮やリーダーシップの片鱗が感じられます。
何を見るための質問かを意識する
ここまで挙げた質問は、どれも「模範解答かどうか」を見るためのものではありません。大切なのは、次のような点です。
- どれだけ具体的に話せるか
- 失敗や問題を、他人のせいだけにしていないか
- 振り返りの視点や、「次はこうしよう」と考えた形跡があるか
つまり、答えの内容そのものよりも、「どう考え、どう受け止め、どう行動してきたか」という姿勢を見にいくイメージです。
同じ質問でも、答え方には人柄がよく表れます。職種に合わせた質問を用意しつつ、「この質問で何を知りたいのか」を意識して聞いてみてください。そうすることで、単なる一問一答ではなく、「一緒に働く姿」をイメージできる面接になっていきます。
面接で避けるべきNG質問と配慮
ここまで、相手の考え方や姿勢を引き出す質問について見てきましたが、一方で「聞いてはいけない質問」にも気をつける必要があります。
どれだけ良い質問を準備していても、配慮に欠けた一言があるだけで、応募者の信頼を一気に失ってしまうことがあります。場合によっては、法律上のトラブルにつながることもあります。
法的に問題となり得る質問
まず注意したいのが、法律や社会的なルールの面から、避けるべきとされている質問です。
典型的なものとして、家族構成や結婚・出産の予定、扶養家族の有無など、家庭の事情に踏み込む質問が挙げられます。
一見、雑談のつもりで聞いてしまいがちですが、「この人は結婚しそうだから採用を控えよう」といった判断につながると、差別的な扱いと受け取られる可能性があります。
また、宗教・思想・支持政党、出身地や国籍に関する質問も要注意です。
こうした情報は、仕事の能力や適性と直接関係がないことがほとんどであり、それを理由に採否を左右すると、不公平な扱いと見なされかねません。
病歴や障害の有無についてしつこく聞くことも同様です。必要な配慮を確認する目的ならともかく、「健康面が不安だから不採用にしよう」といった扱いになれば、差別につながるおそれがあります。
つまり、仕事の能力や働き方と関係のない個人的な事項を根掘り葉掘り聞くことは、「その情報を採否に使うのではないか」と受け取られやすく、差別的な扱いにつながるリスクがあるということです。迷ったときは、「この質問は、本当に仕事と関係があるか?」と自分に問いかけてみると良いでしょう。
応募者を不安にさせる聞き方
次に、内容そのものは問題がなくても、「聞き方」で応募者を不安にさせてしまうケースがあります。
たとえば、質問自体は普通でも、詰問調で責めるような言い方になってしまうと、相手は萎縮して本音を話せなくなります。
「どうしてそんなことをしたんですか?」「それはおかしいですよね?」と、裁くような雰囲気で質問を重ねるのは避けたいところです。
また、プライベートに踏み込みすぎる質問も要注意です。
「休日は誰と過ごしていますか?」「恋人はいますか?」といった私生活の話題は、仕事とは関係が薄く、応募者にとっては答えづらいものです。
前職や前の会社を悪く言わせるような聞き方も、あまり良くありません。「前の会社のどこがダメでしたか?」といった誘導的な質問は、応募者にとっても気持ちの良いものではなく、「この会社も人の悪口を気にしないのかな」と不信感につながることがあります。
大切なのは、「相手が安心して話せる雰囲気をつくること」です。同じ内容を聞くにしても、「よろしければ教えてください」「差し支えない範囲で構いません」といった一言を添えるだけで、受け止められ方は大きく変わります。
「雑談」のつもりが印象を悪くするケース
最後に、雑談のつもりで話したことが、応募者の印象を大きく下げてしまうケースにも気をつけたいところです。
たとえば、出身地や訛り、見た目に関する冗談です。
「そのしゃべり方、なかなかクセがありますね」「その髪型、個性的ですね」といった言葉は、言った側は軽い雑談のつもりでも、言われた側は「からかわれている」と感じるかもしれません。
結婚や子どもについての軽い話題も同様です。
「そろそろ結婚しないの?」「子どもができたら仕事はどうするの?」といった質問は、本人にとってとてもプライベートな話題であり、「この会社は、そういうことで人を見ているのではないか」と不安にさせてしまうリスクがあります。
面接の場では、「興味本位の質問」はぐっとこらえることが大切です。
たとえ雑談であっても、「これは本当に仕事と関係がある話題か」「相手はこの話をされて嬉しいだろうか」と一度立ち止まって考える習慣を持つと安心です。
つまり、面接では「何を聞くか」と同じくらい、「何を聞かないか」「どう聞くか」が大事になります。相手を評価する場であると同時に、相手からも見られている場であることを意識しながら、誠実で丁寧なコミュニケーションを心がけていきましょう。
ポイント
面接の質を左右するのは、どんな質問をするかにかかっています。職歴や経験を確認するだけでは、その人の本当の姿は見えてきません。大切なのは、「どんな考え方で仕事をしてきたか」「人とどう関わってきたか」「困難にどう向き合ってきたか」といった、仕事への姿勢や価値観を引き出す質問です。
「はい・いいえ」で終わる質問ではなく、自由に話してもらう質問を意識的に使うことで、面接は一問一答から対話へと変わっていきます。そして、「もう少し詳しく教えてください」と深掘りすることで、表面的な答えの奥にある本音や価値観が見えてきます。
職種ごとに聞きたいポイントを整理し、具体的な質問を用意しておけば、面接での迷いも少なくなります。一方で、法的に問題となり得る質問や、応募者を不安にさせる聞き方には十分に注意が必要です。面接は「評価する場」であると同時に、「評価される場」でもあることを忘れずに、誠実で丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
質問を工夫するだけで、面接の質は大きく変わります。そして、良い質問ができれば、「この人は自社に合いそうか」という判断も、感覚ではなく根拠を持ってできるようになるのです。
次回は、「聞いた内容をどう評価するか」について、具体的にお伝えします。感覚採用を防ぎ、採用判断の精度を上げるための評価の仕組みづくりに進んでいきます。

