ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の会社を経営しています。先月、新しく正社員を採用し、試用期間3か月という条件で働いてもらっていますが、入社後すぐに遅刻が続き、仕事のミスも多く、周りの社員からも「あの人と一緒に仕事をするのは大変」という声が上がっています。
まだ試用期間中ですし、「この人では無理だ」と判断して解雇することはできるのでしょうか?それとも、試用期間中でも簡単には解雇できないのでしょうか?
試用期間中の解雇について、どこまで認められるのか、法的なルールを教えてください。
お悩み
- 試用期間中なら自由に解雇できる?
- 解雇する場合、どんな理由が必要?
- 解雇予告や手続きは必要?
結論:試用期間中でも簡単には解雇できない。
客観的・合理的な理由と手続きが必要
結論から申し上げますと、試用期間中であっても、正社員と同様に解雇には「客観的・合理的な理由」と「適切な手続き」が必要です。
試用期間中の解雇のポイント
① 試用期間中は「解約権留保付きの労働契約」であり、通常の解雇より広く認められる傾向はある
② ただし、自由に解雇できるわけではなく、客観的・合理的な理由が必要
③ 入社14日以内を除き、解雇予告または解雇予告手当が必要
④ 指導や改善の機会を与えずに解雇すると、不当解雇と判断されるリスクがある
「試用期間だからいつでも辞めさせられる」という認識は誤りです。慎重に判断する必要があります。
試用期間とは何か
本採用の前提として、適性を見極める期間
試用期間とは、採用した従業員が会社の業務に適しているかどうかを見極めるための期間です。
一般的な試用期間
- 期間:1~6か月程度(多くは3か月)
- 性質:解約権留保付きの労働契約
- 目的:能力・適性・勤務態度などの確認
試用期間中も、労働契約は成立しており、従業員としての権利義務は発生しています。
試用期間の設定方法
試用期間を設ける場合は、就業規則や雇用契約書に明記する必要があります。
記載例
- 「試用期間は入社日から3か月とする」
- 「試用期間中の勤務態度、能力等により、本採用しない場合がある」
- 「試用期間中の労働条件は、本採用後と同一とする」
口頭だけの約束では、後でトラブルになる可能性があります。
試用期間中の解雇が認められる理由
通常の解雇より広く認められる傾向
試用期間中の解雇(本採用拒否)は、通常の解雇よりは広く認められる傾向があります。
ただし、「自由に解雇できる」わけではなく、客観的・合理的な理由が必要です。
解雇が認められやすい理由の例
能力不足
- 業務に必要な基本的なスキルが著しく不足している
- 指導しても改善が見られず、今後も改善の見込みがない
勤怠不良
- 無断欠勤が複数回ある
- 正当な理由のない遅刻・早退が頻繁に繰り返される
- 注意・指導しても改善しない
適性の欠如
- 経歴詐称(学歴・職歴を偽った)
- 健康上の理由で業務遂行が困難(ただし、差別的な扱いにならないよう注意)
- 協調性に欠け、職場の秩序を乱す
解雇が認められにくい理由の例
× 「なんとなく気に入らない」
× 「面接のときの印象と違った」
× 「他にもっと良い人が応募してきた」
× 「会社の業績が悪化した」(試用期間とは無関係)
単なる主観的な判断や、試用期間の趣旨とは関係のない理由では、解雇は認められません。
試用期間中の解雇の手続き
入社14日以内の場合
入社後14日以内であれば、解雇予告や解雇予告手当なしで解雇することができます(労働基準法第21条)。
ただし、これはあくまで「解雇予告が不要」というだけで、不当な理由での解雇は認められません。
入社14日を超えた場合
入社後14日を超えた場合は、通常の解雇と同様に、以下のいずれかが必要です。
- 30日前の解雇予告
- 30日分以上の解雇予告手当の支払い
- 予告日数が30日に足りない場合、不足日数分の手当
例:20日前に予告する場合 → 10日分の解雇予告手当が必要
指導・改善の機会を与える
いきなり解雇するのではなく、まずは指導・改善の機会を与えることが重要です。
指導の記録を残す
- いつ、どのような指導をしたか
- 本人がどう反応したか
- 改善が見られたか、見られなかったか
これらの記録が、後で「会社は適切な対応をしていた」という証拠になります。
本人に解雇理由を説明する
解雇する場合は、本人に対して解雇理由を具体的に説明します。
説明のポイント
- 「何が問題だったのか」を具体的に伝える
- 「どのような指導をしたか」を説明する
- 「今後の改善が見込めない」と判断した理由を伝える
感情的にならず、冷静に、事実に基づいて説明することが大切です。
試用期間を延長する方法
解雇ではなく、試用期間の延長を検討
「もう少し様子を見たい」という場合は、試用期間を延長する方法もあります。
試用期間延長の要件
- 就業規則に「試用期間を延長することがある」と明記されている
- 本人の同意を得る
- 延長の理由を具体的に説明する
- 延長後の評価基準を明確にする
一方的な延長は、トラブルのもとになります。
不当解雇と判断されないために
記録を残す
解雇の正当性を証明するため、以下の記録を残します。
- 遅刻・欠勤の記録
- 業務ミスの内容と日時
- 指導した日時・内容・本人の反応
- 改善が見られなかった経緯
段階を踏む
いきなり解雇するのではなく、以下のような段階を踏みます。
① 口頭での注意・指導
② 書面での警告
③ 改善の機会を与える
④ それでも改善しない場合に解雇
他の従業員と比較して不公平にならないようにする
同じような問題行動をした他の従業員は本採用したのに、この人だけ解雇する、といった不公平な扱いは避けます。
よくある質問
Q1:試用期間中は給与を低くできる?
A:試用期間中だからといって、最低賃金を下回る給与を支払うことはできません。
ただし、本採用後より低い給与を設定することは、事前に明示していれば可能です。
Q2:試用期間中でも、社会保険に加入させる必要がある?
A:はい、加入要件を満たす場合は、試用期間中であっても加入させる必要があります。
試用期間を理由に加入を拒否することはできません。
Q3:本人が「辞めます」と言った場合はどうなる?
A:本人からの退職申出であれば、会社から解雇する必要はありません。
退職届を提出してもらい、記録を残しておきましょう。
Q4:試用期間の延長は何回までできる?
A:法律上の制限はありませんが、延長を繰り返すと「本採用する意思がない」と判断され、トラブルになる可能性があります。
通常は1回、最長でも通算6か月程度が目安です。
まとめ
試用期間中の解雇については、
- 試用期間中でも「簡単には解雇できない」
- 客観的・合理的な理由と、適切な手続きが必要
- 入社14日以内を除き、解雇予告または解雇予告手当が必要
- 指導・改善の機会を与えずに解雇すると、不当解雇と判断されるリスクがある
という点をしっかり押さえておく必要があります。
上本町社会保険労務士事務所では、試用期間に関する就業規則の整備、本採用拒否の判断基準と手続きのアドバイス、試用期間中の指導記録の作り方、トラブルを防ぐための雇用契約書作成などを通じて、適切な試用期間の運用をサポートしています。
「試用期間中の社員の対応に困っている」
「本採用を拒否してよいか判断に迷っている」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

