メンタルヘルスの問題とその原因

メンタルヘルスの問題は多種多様であり、その原因も一様ではありません。しかし、一般的には以下のような要因が関係しています。

個人的要因
性格や気質、遺伝的な素因、生活習慣、健康状態、ストレス耐性や対処能力など、個人の特性や状況によってメンタルヘルスの問題の発生や重症度が影響されます。

環境的要因
職場や学校、家庭や地域など、個人が関わるさまざまな環境におけるストレスやトラブル、変化や不安定さ、支援や理解の欠如などがメンタルヘルスの問題を引き起こしたり悪化させたりします。

社会的要因
経済的な困窮や格差、情報化やグローバル化に伴う競争や変化の速さ、災害や事件などの社会的危機や不安定さ、偏見や差別による社会的排除などがメンタルヘルスの問題に影響を与えます。

メンタルヘルスの問題は、これらの要因が複雑に絡み合って発生し、持続し、悪化することがあります。そのため、メンタルヘルスの問題を抱える人は自分だけの責任ではなく、社会全体が関わって解決する必要があります。

メンタルヘルスの問題を抱えた場合の対処法

自分でできる対処法
メンタルヘルスの問題は早期に対処すれば回復しやすくなります。自分でできる対処法としては、以下のようなものがあります。

身体的なケア
睡眠や食事、運動などを規則正しく行い、身体的に健康を保ちましょう。アルコールや薬物などは避けましょう。

感情的なケア
気分が落ち込んだり不安になったりするときは無理に抑え込まずに感情を表現しましょう。泣いたり笑ったりすることでストレスが軽減されます。

精神的なケア
自分の長所や強みを認めたり、自分に合った目標や夢を持ったりすることで自信や希望を持ちましょう。趣味や好きなことをすることも大切です。

人間関係のケア
友達や家族など信頼できる人に相談したり話を聞いてもらったりすることで心の支えになります。孤立しないようにコミュニケーションを取りましょう。

相談できる窓口
自分で対処しても改善しない場合や深刻な症状がある場合は、専門家に相談することが必要です。相談できる窓口としては以下のようなものがあります。

メンタルヘルスの問題を抱えた場合の相談先

医療機関
メンタルヘルスの問題を抱えた場合に相談できる窓口として、最も一般的なのは医療機関です。医療機関では、精神科医や心理士などの専門家が診断や治療を行ってくれます。治療法には、薬物療法や心理療法などがあります。医療機関に相談することで、メンタルヘルスの問題の原因や状態を正しく把握し、適切な治療を受けることができます。

しかし、医療機関に相談する際には、以下のような注意点があります。

医療機関の種類や診療科によって、対応できるメンタルヘルスの問題の範囲や専門性が異なります。自分の症状や希望に合った医療機関を選ぶことが大切です。

医療機関に相談すると、診断名や治療内容がカルテに記録されます。これは、医師と患者の間の信頼関係を保つために必要なものですが、カルテは第三者に開示されることがあります。例えば、傷病手当金や生命保険などを申請する際には、カルテの提出が求められることがあります。この場合、カルテに記録された内容が不利益になる可能性があります。

医療機関に相談すると、治療費がかかります。健康保険を利用すれば自己負担は3割程度ですが、それでも高額になる場合があります。また、健康保険では対象外となる治療もあります。例えば、心理療法は一部の場合を除いて健康保険の適用外です。

以上のように、医療機関に相談することにはメリットとデメリットがあります。自分の症状や希望に応じて、医療機関を選ぶことが重要です。

メンタルヘルスの問題で休んだ場合の傷病手当金

メンタルヘルスの問題で休んだ場合、健康保険から傷病手当金を受給できる可能性があります。傷病手当金とは、業務外で発生した病気やケガの療養のために仕事に就くことができず、収入が喪失または減少した被保険者の生活を守るために設けられた健康保険の制度です。

傷病手当金を受給するための条件は以下のようになります。

・業務外の事由による病気やケガで療養していること
・労務不能と判断されること
・連続する3日間(待期期間)を含む4日以上仕事に就けないこと
・給与の支払いがないこと

傷病手当金は受給開始日から最長1年6か月受給できます。1日あたりの傷病手当金の額は、受給開始日以前の12か月間の標準報酬月額を平均した金額÷30日×2/3です。ボーナスは一般的に年3回以下であれば、給与の支払いには当てはまらないため、休職中に受け取っても問題ありません。

メンタルヘルスの問題で休んだ場合の復職支援と職場復帰のポイント

メンタルヘルス不調で休職した場合、復職する際には適切な支援が必要です。厚生労働省では、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きを作成しています。この手引きでは、休業開始から復職後のフォローまでの流れを5つのステップに分けて説明しています。

休業開始と休業中のケア
休業届と主治医からの診断書(病気休業診断書)を提出する
休業手順と注意事項を本人と家族に説明する
本人と家族へ定期的な連絡を取り、心身の状態や治療状況を確認する
主治医へ職場復帰支援に関する情報提供依頼書を渡し、意見書をもらう
主治医による職場復帰可能の判断
本人が復職意欲を持ち、主治医が職場復帰可能と判断した場合、復職診断書を提出する
主治医には職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報を提供する
職場復帰の可否の判断と職場復帰支援プランの作成
産業医・保健師を中心に、主治医からの情報や意見、職場環境などをもとに、最終的な職場復帰の可否を判断する
復職可の場合、復職日や試し出勤などの復職支援プランを作成する
復職支援プランは本人の状態や業務内容に応じて段階的に設計する
最終的な職場復帰の決定
復職支援プランに沿って試し出勤を行い、生活リズム表を記載する
復職日までに変化が起きたら、主治医や産業医へ相談する
復職日には本人と家族に説明し、必要な書類を提出してもらう
職場復帰後のフォローアップ
疾患の再発や新しい問題の有無を確認する
勤務状況や業務遂行能力を評価する
職場復帰支援プランの実施状況や見直しを行う
治療状況を確認する
職場環境の改善などを行う
職場の管理監督者や同僚への配慮をする

メンタルヘルスの問題で休んだ場合の社会的な偏見と対策

メンタルヘルスの問題は、社会的な偏見や差別にさらされる可能性があります。特に、休業や復職時には、周囲から理解や配慮が得られないことも多く、本人や家族は孤立感や不安感を抱くことがあります。

社会的な偏見や差別に対処するためには、以下のような対策が必要です。

・本人や家族への情報提供と相談支援
・メンタルヘルスの問題に関する正しい知識や理解を促すために、本人や家族へ情報提供や相談支援を行う
・本人や家族が偏見や差別に遭った場合は、適切なアドバイスや励ましを行う
・職場への情報提供と啓発活動
・本人の同意を得た上で、管理監督者や同僚へメンタルヘルスの問題に関する正しい知識や理解を促すために、情報提供や啓発活動を行う
・本人が休業中や復職後に偏見や差別に遭わないように、管理監督者や同僚への配慮をする