人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。この助成金には、7つのコースがあります。

人材育成支援コース:職務に関連した知識や技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に助成

教育訓練休暇等付与コース:有給教育訓練等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成

人への投資促進コース:デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に助成

事業展開等リスキリング支援コース:新事業への進出、新商品開発やデジタル化などに必要な人材を育成する訓練を実施した場合に助成

建設労働者認定訓練コース:建設業における技能認定試験に合格した労働者に対して、技能認定試験の受験料や賃金の一部を助成

建設労働者技能実習コース:建設業における技能実習を実施した場合に、技能実習経費や賃金の一部を助成

障害者職業能力開発コース:障害者を雇用する事業主が障害者に対して職業能力開発を行った場合に、訓練経費や賃金の一部を助成

適用対象業者

雇用保険の被保険者を雇用している事業主や事業主団体です。ただし、公的助成金の不正受給や労働基準法の違反などがある場合は、対象外となります。

条件

コースによって異なります。

事業主は、労働者の職業能力開発計画(訓練計画)を作成し、労働組合等の意見を聴いて、都道府県労働局に提出する必要があります。

事業主は、訓練計画に基づいて、訓練を実施する必要があります。

事業主は、訓練の実施後、支給申請書や添付書類を事業所の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークに提出する必要があります。

事業主は、訓練の実施にあたって、賃金要件や資格等手当要件などを満たす必要があります。

支給額

コースや訓練の種類や規模によって異なりますが、一般的には、労働者1人あたり、中小企業で15万円から50万円、大企業で11.25万円から37.5万円が支給されます。
支給額の詳細は、各コースのパンフレットや支給要領をご覧ください。

期限

訓練計画の提出期限と支給申請の期限があります。訓練計画の提出期限は、訓練期間開始日の前日までです。支給申請の期限は、訓練の実施日から1年以内です。

手続き

訓練計画の届出と支給申請の2つがあります。
訓練計画の届出は、訓練計画届や訓練計画書などを都道府県労働局に提出することです。
支給申請は、支給申請書や訓練実施報告書などを都道府県労働局またはハローワークに提出することです。令和5年6月からは、雇用関係助成金ポータルでの電子申請が可能になりました。

書類

コースによって異なりますが、一般的には、以下のようなものがあります。

・訓練計画の届出に必要な書類
・訓練計画届
・訓練計画書
・訓練計画書添付書
・訓練計画書添付書(認定実習併用職業訓練)
・訓練計画書添付書(有期実習型訓練)
・訓練計画書添付書(定額制訓練)
・訓練計画書添付書(長期教育訓練休暇等制度)
・訓練計画書添付書(事業展開等リスキリング支援コース)
・労働組合等の意見書
・事業主団体の場合は、事業主団体の構成員名簿

支給申請に必要な書類

・支給申請書
・訓練実施報告書
・訓練実施報告書添付書

成功事例

・A社は、IT分野の経験者を優先的に採用していたが、人員の確保が難しかったため、未経験者を採用することにしました。しかし、一から教育することは難しく、未経験者を採用することができていませんでした。そこで、「人への投資促進コース(情報技術分野認定実習併用職業訓練)」を利用して、外部教育訓練機関でプログラミング講座を受けさせた後、自社の従業員からOJTを受けさせるという訓練を実施しました。この訓練により、未経験者にも基本的な言語の習得や、実際に顧客からの発注にも携わってもらい、未経験者から一人前のSEに成長させることができました。また、資格を保持することで、従業員の自信にも繋がりました。この訓練にかかった経費や賃金の一部は、助成金で補助されました。


B社は、個々の従業員にあった訓練をそれぞれ実施していたが、訓練費用の削減のためにサブスクリプション型の訓練を実施することにしました。サブスクリプション型の訓練とは、一定期間内に受け放題となる訓練のことで、従業員の多様なニーズに応えることができます。この企業は、「人への投資促進コース(定額制訓練)」を利用して、営業職向けのeラーニング訓練を契約しました。この訓練により、新入社員から管理職までの幅広い層に訓練を行うことができ、個々の従業員にあった訓練を探す手間も省ける上に、複数の訓練を契約するよりも、安価な費用で抑えられました。結果的に企業全体の生産性向上に繋がりました。この訓練にかかった経費の一部は、助成金で補助されました。


・C社は、高度なデジタル分野の資格を持った核となる人材を育てることが課題でした。今までは、スキルの習得はそれぞれ自己学習が基本であったが、企業の組織力強化のため、計画的に高度なデジタル分野の資格取得を目指すことにしました。そこで、「人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)」を利用して、外部教育訓練機関でプロジェクトマネージャ試験対策講座を受けさせました。この訓練により、資格を取得してさらに専門的な知識を身につけることで、プロジェクトの管理等を行うことが可能となり、管理職へ登用することができました。また、高度な資格を保持している従業員がいることが会社の強みにもなっています。この訓練にかかった経費や賃金の一部は、助成金で補助されました。