ロックアウト期間中の賃金【丸島水門事件】

丸島水門事件

賃上げを巡る争いの中で、組合員が会社からロックアウトされ、その期間の賃金支払いを求めた事例です。

争点・結論

使用者によるロックアウトが、労働者の争議行為に対する正当な対抗手段として認められるかが問題となりました。
最高裁は、労使間の交渉の態度や経過、組合の争議行為の性質、使用者に与える影響の度合いなど、具体的な事情を考慮し、労働者の争議行為に対する相当な対抗手段としてロックアウトを正当と認めました

判旨

ロックアウトは、使用者の争議行為の一態様として行われるものであるから、それが正当な争議行為として是認されるかどうかは、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められるかどうかによってこれを決すべきであるとした。このような相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、ロックアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬかれるものといわなければならないとした。

解説

使用者のロックアウトが、特定の条件下で労働者の争議行為に対する正当な対抗手段として認められることを示しています。これにより、使用者の経営の自由が一定の範囲で保護されることになりますが、その正当性は具体的な労働争議の状況に応じて判断されるため、労働者の保護も考慮されます。

関連条文: 労働基準法24条1項ただし書(チェックオフ協定の要件)、120条1号(賃金全額払の原則の罰則)。

丸島水門事件から学ぶべき事柄

  • 使用者のロックアウトは、労働者の争議行為に対する相当な対抗手段として認められる場合があります。
  • ロックアウトの正当性は、具体的な労働争議の状況に応じて判断されます。

関連判決

  • 日本航空事件: 使用者のロックアウトが正当な争議行為として認められた事例。
  • 日本電気事件: 使用者のロックアウトが正当な争議行為として認められなかった事例。

注意すべき事柄

  • ロックアウトを行う際は、その必要性や合理性を明確に示す必要があります。
  • ロックアウトによる労働者の不利益を最小限に抑えるための措置を講じるべきです。
  • 労働争議においては、労働者との円滑なコミュニケーションを保つことが重要です。

経営者・管理監督者の方へ

  • ロックアウトは争議行為の一環として一定の正当性が認められる可能性がありますが、その発動には慎重な検討が必要です。
  • ロックアウトの正当性は、労使交渉の経緯、組合の争議行為の態様、使用者側への影響度合いなど具体的事情を総合的に勘案して判断されます。
  • ロックアウト中の賃金不払いが適法とされる場合でも、従業員に過度の不利益が生じないよう、代替的雇用維持措置などを検討する必要があります。
  • 労使紛争の平和的解決に向け、組合との建設的な対話を尽くすことが何より重要です。

従業員の方へ

  • ロックアウトは一定の正当性が認められる場合がありますが、使用者の権利濫用に当たらないか、注意深く判断する必要があります。
  • ロックアウト中の賃金不払いは違法の可能性もあり、組合を通じて適切に交渉し、権利を主張することが重要です。
  • 労使紛争に際しては、過激な争議行為に走らず、組合と協力して建設的な対話を尽くすことが求められます。
  • ロックアウトによる生活上の不利益を最小限に抑えるため、代替所得の確保など対策を検討するとよいでしょう。