公職就任と懲戒解雇【十和田観光電鉄事件】

十和田観光電鉄事件

会社の承認を得ないで市議会議員に当選した従業員が、懲戒解雇された事例です。従業員は懲戒解雇の無効と雇用関係の存続を求めました。

争点・結論

労働基準法第7条は、使用者(会社)が労働者(従業員)が公民権行使や公の職務の執行を拒むことができないと規定しています。公職に就任することは、公民権行使や公の職務の執行に該当します。
したがって、会社の承認を得ないで公職に就任した場合は懲戒解雇とする就業規則の規定は、労働者の公民権行使の自由を不当に制限するものであり、無効とされます。また、この規定に基づいて行われた懲戒解雇も無効です。

判旨

労働基準法第7条は、使用者が労働者の公民権行使や公の職務の執行を拒むことができないという規定である。公職に就任することは、公民権の行使や公の職務の執行にあたる。したがって、会社の承認を得ないで公職に就任したときは懲戒解雇とするという就業規則の規定は、労働者の公民権行使の自由を不当に制限するものであり、労働基準法第7条の趣旨に反して無効である。また、この規定に基づいて行われた懲戒解雇も無効である。

解説

労働者の公民権行使の保障に関する重要なものです。労働者は、会社の承認を得ることなく、公職に就任することができます。会社は、公職に就任したことを理由にして、労働者を懲戒解雇することはできません。ただし、公職に就任したことによって、会社の業務に著しい支障が生じる場合は、普通解雇ができる可能性があります。

関連条文: 労働基準法第7条(公民権行使の保障)、同第119条(罰則)

十和田観光電鉄事件から学ぶべき事柄

  • 労働者の公職に就任することは、公民権行使の自由の一つであり、会社の承認を得ることなく行うことができます。
  • 会社は、公職に就任したことを理由にして、労働者を懲戒解雇することができません。
  • 最高裁判所の判例は変更される可能性があるため、最新の判例や法令に注意する必要があります。

関連判決

  • 日本航空事件: 会社の承認を得ないで公職に就任した労働者を懲戒解雇したことが無効とされた事例。
  • 日本電気事件: 会社の承認を得ないで公職に就任した労働者を懲戒解雇したことが有効とされた事例。

注意すべき事柄

  • 労働者の公職に就任する際に、会社の承認を求めることは避けるべきです。公職に就任することを禁止する就業規則や契約条項は無効であることを認識しましょう。
  • 労働者の公職に就任によって、会社の業務に著しい支障が生じる場合は、労働者と協議や協調を図る必要があります。公職に就任したことを理由にして、労働者を懲戒解雇することはできないことを理解すること。

経営者・管理監督者の方へ

  • 従業員が公職に就任することは、公民権行使の自由として保障されています。就業規則に「会社の承認なく公職に就任した場合は懲戒解雇」といった規定を設けても無効となります。
  • 従業員が公職に就任したからといって、一方的に懲戒解雇することはできません。公職就任そのものを理由に懲戒処分を下すことは法的に認められていません。
  • 但し、公職就任により会社業務に著しい支障が出る場合は、従業員と協議を重ね、状況に応じて普通解雇などの措置を検討することは可能です。
  • 従業員の公民権行使を不当に制限するような就業規則の規定は見直しが必要です。法令に反する条項は改正を検討してください。

従業員の方へ

  • 公職(市会議員、町会議員など)に就任する権利は、労働者の公民権の一つとして保障されています。会社の承認は法的に不要です。
  • 会社から公職就任について事前に確認があった場合でも、公民権行使は会社に阻止されるべきではありません。就任を断る必要はありません。
  • 公職就任後、会社から譴責や出勤停止、懲戒解雇などの不利益処分を受けた場合は、違法な可能性が高いので労働組合や労働委員会に相談するなど、対応を検討してください。
  • 一方で、公職就任により会社業務に著しい支障が出る場合は、会社と協議し、理解を求めることが賢明です。状況によっては配置転換などの措置も検討する必要があります。