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採用コストをゼロに!ハローワークインターネットサービス活用法
「採用にお金をかけたいけど、余裕がない…」
「求人広告を出しても効果が薄く、費用対効果に悩んでいる…」
「無料で効率よく採用活動を進める方法はないものか…」
中小企業の経営者や人事担当者なら、このような悩みを抱えていることでしょう。前回までは、ハローワーク求人票の基本や職種欄・仕事内容欄の書き方、給与以外の魅力の伝え方についてお伝えしました。今回は、ハローワークのデジタルサービスである「ハローワークインターネットサービス」に焦点を当て、無料で効率的に人材を獲得するための具体的な活用法をご紹介します。
実は、ハローワークインターネットサービスには、多くの企業が見落としがちな便利な機能が数多く存在します。これらを使いこなすことができれば、採用コストを大幅に削減しつつ、効果的な採用活動を展開することが可能になるのです。
ハローワークインターネットサービスの可能性
まず、ハローワークインターネットサービスの規模と可能性について見ていきましょう。厚生労働省の最新データによると、ハローワークは年間の求職登録者数が約450万人、新規求人数約1,000万人を有する国内最大級の求人プラットフォームです。ハローワークインターネットサービスは月間約7,000万件のアクセス数があり、その規模は主要な民間求人サイトを上回ります。
年間の新規求人数は1000万人超という巨大なプラットフォームでありながら、掲載料は完全無料。中小企業にとって、この無料の大規模求人プラットフォームを活用しない手はありません。
インターネットサービスが持つ3つの強み
ハローワークインターネットサービスの強みは以下の3点です。
- 費用ゼロで全国の求職者にアクセスできる
求人掲載にかかる費用はゼロです。採用予算が限られている中小企業にとって、これ以上のコストパフォーマンスはないでしょう。 - オンラインで完結する効率的な採用プロセス
2020年1月のシステムリニューアル以降、求人申込みから応募者とのやり取り、選考結果の通知まで、ほぼすべてをオンラインで完結できるようになりました。 - ハローワーク職員のサポートを受けられる
民間の求人サイトと違い、ハローワークには職員がいて、求人内容のアドバイスや求職者への推薦などのサポートを受けられます。
「でも、ハローワークは古くさいのでは?」と思われるかもしれませんが、2020年のリニューアル以降、システムは大幅に改善され、使い勝手も向上しています。特に「求人者マイページ」機能を活用すれば、企業側からの積極的なアプローチも可能になりました。
求人者マイページの開設と基本機能
ハローワークインターネットサービスを最大限に活用するには、まず「求人者マイページ」を開設することが重要です。求人者マイページとは、企業がハローワークで求人活動を行うためのオンライン上の専用ページです。
求人者マイページの開設方法
求人者マイページを開設するには、以下の2つの方法があります。
- ハローワークインターネットサービスから手続きを開始する方法
ハローワークインターネットサービスにアクセスし、「求人者マイページを開設する」から手続きを進めます。ただし、最初の本人確認のために管轄のハローワークを訪問する必要があるケースがあります。 - ハローワークの窓口から手続きを開始する方法
直接ハローワークの窓口に行き、マイページ開設の申請を行います。
初めて求人者マイページから求人を申し込む場合や、2020年1月以降に初めて障害者専用求人を申し込む場合、同じく初めてトライアル雇用求人を申し込む場合などは、最初だけ管轄のハローワークに行く必要があります。
求人者マイページで利用できる主な機能
求人者マイページでは、以下の機能が利用できます。
- 求人申込み(求人内容の変更、取消等)
会社のパソコンから直接求人を登録でき、内容の変更や取消もオンラインで完結します。 - 求職者マイページからの応募の受付
「オンラインハローワーク紹介」と「オンライン自主応募」の2種類の応募を受け付けることができます。 - 応募者の管理
応募者の情報確認、選考状況の管理、選考結果の連絡などを一元管理できます。 - メッセージの送受信
求職者マイページを開設している応募者とメッセージのやり取りができます。 - 選考結果のハローワークへの連絡(登録)
選考結果をハローワークにオンラインで連絡できます。 - 求職情報の検索・直接リクエスト
条件に合う求職者を検索し、直接応募を呼びかけるリクエストを送れます。
これらの機能を使いこなすことで、ハローワークを訪問する回数を減らし、効率的な採用活動が可能になります。
オンライン求人申込みのメリットとポイント
従来、ハローワークに求人を出すには、ハローワークに出向いて手書きの求人申込書に記入するしかありませんでした。しかし、現在はオンラインで求人申込みが可能になり、手間と時間を大幅に削減できるようになりました。
オンライン求人申込みの3つのメリット
- 時間と労力の節約
ハローワークに行く時間を節約できるだけでなく、過去の求人データを活用して新しい求人を作成できるため、入力の手間も省けます。 - 求人内容の充実
「仕事内容」や「求人に関する特記事項」など、重要項目をじっくり考えて入力できます。ハローワークの窓口での手続きでは時間的制約がありますが、オンラインなら時間をかけて検討できます。 - 広範囲の求職者へのアピール
ハローワークインターネットサービスを通じて、全国の求職者があなたの求人を見ることができます。地元だけでなく、Uターン・Iターン希望者にもアピールできます。
オンライン求人申込み時の注意点
オンライン申込み時には以下の点に注意しましょう。
- 自動ログアウトに注意
一定時間操作がないと自動的にログアウトしてしまいます。あらかじめ入力内容を別のファイルで準備しておくと安心です。 - 必須項目と文字数制限の確認
各項目には文字数制限があります。例えば、職種名は28文字、仕事内容は300文字といった具合です。制限内で効果的に伝えることが重要です。 - 画像情報の活用
事業所の外観・職場風景や取扱商品、事業案内パンフレットなどの画像情報を登録することができます。これらの視覚情報は求職者の応募意欲を高める効果があります。
「直接リクエスト機能」で採用を積極的に推進
ハローワークインターネットサービスの中でも特に注目すべき機能が「直接リクエスト機能」です。これは企業側から求職者に直接アプローチできる革新的な機能で、従来の「応募を待つだけ」の受け身の採用活動から脱却できます。
直接リクエスト機能とは
直接リクエスト機能とは、ハローワークに登録している求職者のうち、自分のプロフィールを公開することを希望している方に対して、企業側から直接応募を呼びかけることができる機能です。
これにより、「良い人材がいるかもしれないけど、応募してくれない」という課題を解決できます。氏名や住所などの個人情報は非公開ですが、経歴、専門知識、資格や希望条件などは確認できるため、ターゲットを絞ったアプローチが可能です。
直接リクエスト機能の活用事例
ある地域密着型の介護事業所では、求人票を出しても応募がほとんどなく、採用活動が停滞していました。そこで「直接リクエスト機能」を徹底活用することを決めました。
具体的に以下の条件でターゲットを選定しました
- 地元在住で介護資格を保有している方
- 未経験だが介護業界に興味を持っている方
送信可能な10通のメッセージを大切に扱うため、対象者を慎重に選び、メッセージには事業所の特徴や働きやすさを具体的に盛り込みました。
結果として、10通送信 → 2件返信 → 2名応募 → 1名採用という成果につながりました。採用された方は「メッセージ内容に親しみを感じた」と話しており、現在では現場で中心的な役割を果たしています。
効果的な直接リクエストのポイント
直接リクエスト機能を効果的に活用するには、以下のポイントを押さえましょう。
- ターゲットを絞り込む
1求人につき10通までしかメッセージを送れないという制限があります。そのため、自社の求める人材像に近い求職者を慎重に選ぶことが重要です。 - メッセージ内容を個別化する
単なる定型文ではなく、求職者のプロフィールを見て、その方に合わせたメッセージを作成しましょう。「あなたの〇〇という経験が当社では活かせます」など、個別化したメッセージは反応率が高まります。 - 会社の魅力を具体的に伝える
中小企業の魅力(アットホームな雰囲気、意思決定の速さ、幅広い業務経験など)を具体的に伝えると、大企業志向ではない求職者の心に響きます。 - 迅速に対応する
返信があった場合は、できるだけ早く返信しましょう。素早い対応は企業の誠実さを示し、好印象につながります。
画像掲載機能で企業の魅力を視覚的に伝える
ハローワークインターネットサービスでは、求人情報に画像を掲載することができます。この機能を活用して、職場の様子や社内イベントの写真を掲載すると、文字だけでは伝わりにくい「雰囲気」を視覚的に伝えることができます。
効果的な画像掲載のポイント
- 実際の職場環境を見せる
オフィスや作業場の様子、社員が働いている姿など、実際の職場環境を撮影した写真は、求職者が「ここで働くイメージ」を持ちやすくなります。 - 社内イベントの様子を紹介する
社員旅行、忘年会、運動会など、社内イベントの写真は、社風や人間関係の良さを伝えるのに効果的です。 - 製品や施設を紹介する
自社の製品やサービス、設備などを紹介する写真も、会社の事業内容を具体的に伝えるのに役立ちます。 - 人物写真は許可を得る
社員の写真を掲載する際は、必ず本人の許可を得るようにしましょう。プライバシーや肖像権に配慮することは重要です。
中小企業だからこそ活かせる画像活用法
50人以下の中小企業は、大企業と比べて「顔の見える関係」「アットホームな雰囲気」という強みがあります。これらの強みを画像で効果的に伝えることで、大企業にはない魅力をアピールできます。
例えば、全社員で撮影した集合写真や、社長と社員が一緒にランチをとっている様子、少人数チームでのミーティング風景などは、中小企業ならではの距離感の近さを伝えるのに効果的です。
応募者管理とメッセージ機能の使いこなし方
求人者マイページでは、応募者の管理やメッセージのやり取りが一元的にできます。この機能を活用すれば、採用プロセスをスムーズに進められます。
応募者管理機能の活用ポイント
- 応募者情報の一元管理
ハローワークから紹介された求職者の情報(紹介状など)やマイページ経由で直接応募した求職者の情報を一元管理できます。書類選考の状況や面接日程など、採用の各段階を記録しておくと便利です。 - 選考結果の登録
選考結果をハローワークに連絡することは義務付けられています。求人者マイページからオンラインで選考結果を登録すれば、電話や訪問の手間が省けます。 - 応募者とのコミュニケーション履歴の管理
メッセージのやり取りの履歴が残るため、「どんなやり取りをしたか忘れた」ということを防げます。複数の担当者で採用を進める場合も、情報共有がスムーズです。
メッセージ機能を活用した効果的なコミュニケーション
- 迅速な返信
応募者からメッセージが来たら、できるだけ早く返信しましょう。返信の速さは企業の対応力の表れとして評価されます。 - 具体的な情報提供
「面接日時について」「準備いただきたい書類について」など、具体的な件名と内容で情報を提供しましょう。あいまいな表現は避け、明確に伝えることが重要です。 - 温かみのあるメッセージ
機械的な文面ではなく、「お問い合わせありがとうございます」「お会いできることを楽しみにしています」など、温かみのある言葉を添えると良い印象を与えられます。 - 返信が途絶えた応募者へのフォロー
一度応募してきたものの返信が途絶えた応募者に対して、「その後いかがでしょうか」と気軽にフォローの連絡を入れることで、応募意欲を再び高められる可能性があります。
ハローワーク職員との連携を強化するテクニック
ハローワークインターネットサービスをより効果的に活用するには、ハローワーク職員との連携も重要です。求人票だけでは伝わりきらない情報を職員に理解してもらい、適切な求職者を紹介してもらうことで、マッチング精度を高められます。
職員との連携で採用効果を高める方法
- 周知活動の実施
求人票が受理された後、ハローワークの職業相談部門の責任者らを訪ね、会社の強みや仕事の内容についてPRする「周知活動」を行いましょう。丸文通商株式会社では、この活動により「応募者の動きについてリアルな情報が得られる」というメリットを実感しています。 - 職員に求める人材像を具体的に伝える
「コミュニケーション能力が高い人」「細かい作業が得意な人」など、求める人材像を具体的に伝えることで、適切な求職者を紹介してもらいやすくなります。 - 会社案内や製品カタログを持参する
会社の事業内容や製品、サービスをより深く理解してもらうために、会社案内や製品カタログなどを持参すると効果的です。 - 定期的な情報更新
「今月は特に〇〇部門で人材を急募している」「△△の資格を持つ人がいれば優先的に採用したい」など、採用状況の変化を定期的に伝えることで、タイムリーな紹介につながります。
ハローワーク職員との関係構築のコツ
- 感謝の気持ちを伝える
紹介してもらった求職者が採用に至った場合は、必ず感謝の気持ちを伝えましょう。良好な関係を築くことで、今後も優先的に求職者を紹介してもらえる可能性が高まります。 - 採用結果のフィードバック
採用に至らなかった場合でも、「なぜ採用に至らなかったのか」という理由を適切にフィードバックすることで、次回はより適した人材を紹介してもらいやすくなります。 - 担当者と顔の見える関係を構築する
可能であれば、定期的にハローワークを訪問し、担当者と顔を合わせることで信頼関係を築きましょう。メールやオンラインだけのコミュニケーションでは伝わらない情報もありますし、「この会社のために良い人材を紹介したい」と思ってもらえるきっかけになります。
ハローワークインターネットサービス活用のためのチェックリスト
ハローワークインターネットサービスを効果的に活用するためのチェックリストをご紹介します。このチェックリストを参考に、自社の採用活動を見直してみてください。
基本設定のチェックリスト
□ 求人者マイページを開設している
□ 事業所情報を詳細に登録している
□ 職場の雰囲気がわかる写真を掲載している
□ オンライン自主応募を「可」に設定している
□ 「電話連絡可」の時間帯を広めに設定している
求人情報のチェックリスト
□ 職種名に具体的な情報を盛り込んでいる(例:「営業」→「医療機器のルート営業/未経験OK/営業車貸与」)
□ 仕事内容は具体的な業務や1日の流れがイメージできる内容になっている
□ 「求人に関する特記事項」欄を有効活用して会社の魅力をアピールしている
□ 勤務地情報は最寄り駅からの距離・時間を含め具体的に記載している
□ 賃金・手当の内容を詳細に記載している(基本給、各種手当、昇給・賞与の実績など)
応募管理のチェックリスト
□ 応募者への返信は24時間以内を心がけている
□ 応募者とのメッセージ履歴を適切に管理している
□ 選考結果はハローワークに必ず連絡している
□ 応募者に対して丁寧かつ迅速に対応している
□ 応募が少ない場合は求人内容の見直しを定期的に行っている
直接リクエスト機能のチェックリスト
□ 自社の求める人材像に合致した求職者を検索している
□ リクエストメッセージは個別化して作成している
□ 会社の魅力や具体的な仕事内容を簡潔に伝えている
□ 返信があった場合は迅速に対応している
□ 直接リクエスト後の応募状況を分析し、次回の戦略に活かしている
応募状況分析と改善サイクルの構築
採用活動を継続的に改善するためには、応募データの分析と改善サイクルの構築が重要です。ハローワークインターネットサービスの「求人者マイページ」では、自社求人の応募状況や閲覧数などのデータを確認することができます。
【分析すべきデータポイント】
・求人票の閲覧数:どれだけの求職者が求人を見ているか
・応募率(応募数÷閲覧数):閲覧から応募へのコンバージョン率
・応募者の属性:年齢層、性別、経験、資格など
・応募のタイミング:曜日、時間帯、更新からの経過日数
【改善サイクルの回し方】
- データ収集:2週間〜1ヶ月単位で応募データを集計
- 分析:傾向や課題を特定(例:閲覧は多いが応募が少ない)
- 仮説立案:課題の原因を推測(例:給与条件が不明確で不安を感じさせている)
- 改善実施:求人内容を修正(例:給与条件をより具体的に記載)
- 効果測定:改善後のデータを分析し、効果を確認
【よくある課題と改善策】
・閲覧数は多いが応募が少ない → 求人内容に不安要素や不明確な点がある可能性
・特定の年代からの応募が多い → その年代にアピールするポイントをさらに強化
・応募が増える曜日や時間帯がある → その時間に合わせて求人情報を更新
・応募はあるが書類選考通過率が低い → 求める人材像と求人内容のミスマッチがある可能性
このようなデータに基づく改善サイクルを回すことで、より効果的な採用活動が実現できます。
中小企業では採用担当者の経験や勘に頼りがちですが、データを活用することで採用活動の精度を高めることができます。
次回予告:「選考から入社までの流れを作る!中小企業の採用ミスマッチを防ぐ面接のポイント」
今回は「ハローワークインターネットサービスの活用法」について解説しました。オンラインでの求人申込みから応募者管理、直接リクエスト機能の活用まで、無料で効果的に人材を獲得するためのさまざまな方法をご紹介しました。
次回は「選考から入社までの流れを作る!中小企業の採用ミスマッチを防ぐ面接のポイント」と題して、求人票と連動した効果的な面接方法や、採用後のミスマッチを防ぐコツを解説します。「面接で何を聞けばいいの?」「どうすれば採用した人が長く働いてくれるの?」といった疑問にお答えする内容です。ぜひお楽しみに!
人材採用はゴールではなく、良好な雇用関係を構築するためのスタートラインです。次回もお見逃しなく!
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