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健康経営と就業規則
従業員の健康を企業の成長につなげる「健康経営」。
その理念と実践を就業規則に効果的に反映させるためのポイントを、全6回のシリーズでわかりやすく解説しました。
このダイジェスト版では、各回の重要ポイントをまとめています。
限られた経営資源の中で健康経営を制度化し、持続可能なものとするためのヒントとしてお役立てください。
健康経営は単なる福利厚生ではなく、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略です。健康経営優良法人認定企業では一般企業と比較して従業員一人当たりの労働生産性が約6%高く、離職率も低いというデータもあります。従業員の健康が企業の業績向上につながる好循環を生み出すために、就業規則という基盤づくりから始めてみませんか。
第1回:健康経営の概念と重要性
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践する経営の考え方です。従業員の健康を「コスト」ではなく「投資」と捉え、企業の成長や業績向上につなげていくことを目指しています。この考え方は1990年代のアメリカで生まれ、日本では2006年に「健康経営®」として商標登録され、2013年には経済産業省の「日本再興戦略」にも取り入れられました。
健康経営が企業にもたらす嬉しいメリットはたくさんあります。まず、従業員が健康になると病気による欠勤(アブセンティーイズム)が減り、出社していても体調不良で仕事の効率が落ちる状態(プレゼンティーイズム)も改善されます。経済産業省の調査では、健康経営優良法人に認定された企業は、一般企業より従業員一人当たりの労働生産性が約6%高いという結果が出ているんですよ。
また、「従業員を大切にする企業」というイメージが高まり、優秀な人材が集まりやすくなります。従業員の満足度も上がるので、大切な人材が辞めてしまう心配も減ります。特に中小企業では、一人ひとりの従業員がとても大切なので、この効果はとても大きいですね。
その他にも、医療費や健康保険料の削減、企業イメージの向上、労災や過労死などのリスク低減といった良いことがたくさんあります。中小企業では特に、少人数ならではの強み(意思決定の速さ、コミュニケーションの密度など)を活かした健康経営が効果的です。
健康経営の考え方を就業規則に取り入れることは、会社の本気度を示す大切なステップです。就業規則に健康経営の理念や具体的な取り組みを明文化することで、一時的なブームではなく会社の制度として定着させることができますし、従業員の権利と責任も明確になります。健康を大切にする会社の文化づくりにもつながりますよ。
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健康経営の概念と重要性 【健康経営と就業規則】1
第2回:就業規則における健康経営の反映
健康経営を就業規則に取り入れる際には、7つの大切な要素があります。まず「基本理念・目的条項」では、健康経営の基本的な考え方や会社の健康方針を明記します。例えば「私たちの会社は従業員の心と体の健康を大切な経営課題と考え、健康経営を進めていきます」といった言葉を入れると、会社の姿勢が伝わりますね。
「健康経営推進体制」では、誰が責任者になるのか、健康管理委員会はどんなメンバーで何をするのかなどを決めます。「従業員の権利と義務」では、健康診断を受ける権利や、自分の健康を管理する義務などを明記します。「健康関連制度の体系的整備」では、健康診断やストレスチェック、保健指導などの制度をわかりやすく整理します。
「健康状態に配慮した人事制度」では、体調に合わせて仕事の内容や時間を調整する基準を定めます。「復職支援・両立支援」では、病気で休んでいた人が職場に戻るときのサポート方法や、治療しながら働く人への支援について決めます。「健康情報の取扱い」では、健康に関する情報をどのように集め、使い、守るかを明確にします。
特に大切なのは労働時間と休暇の規定です。残業時間の上限(法律では月45時間、年360時間ですが、会社独自に月30時間、年300時間などと厳しくするのも良いでしょう)、勤務間インターバル(仕事と仕事の間に11時間以上の休息時間を確保する)、有給休暇を取りやすくする工夫(計画的な付与や連続休暇の推奨など)、特別な休暇制度(リフレッシュ休暇や健康管理のための休暇など)を定めると良いですね。
健康管理の規則を作る基本的な手順としては、まず自社の健康課題を知ることから始めましょう。次に健康経営の基本方針を決め、具体的にどんなことをするか、誰が担当するかを考え、就業規則にどう反映させるかを決めます。中小企業では、シンプルで実行しやすい内容にすること、段階的に整備すること、外部の専門家や機関の力を借りることがポイントですよ。
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第3回:メンタルヘルス対策と就業規則
最近は職場でのメンタルヘルス対策がとても重要になっています。厚生労働省の調査によると、働く人の約6割が仕事や職場生活で強い不安やストレスを感じているそうです。精神障害の労災請求も年々増えていて、特に中小企業では一人が心の不調で休むと、残りのメンバーへの負担が大きくなり、連鎖的に問題が広がることもあります。
会社には「労働者が安全に働けるよう、必要な配慮をする」という安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。これは事故や怪我の防止だけでなく、心の健康も含まれるんですよ。安全配慮義務違反かどうかは、主に「会社が従業員の健康状態の悪化を予測できたか」と「それを防ぐ手段があったか」の2点で判断されます。
厚生労働省は職場のメンタルヘルス対策として「4つのケア」を勧めています。「セルフケア」は自分自身がストレスに気づいて対処すること、「ラインケア」は上司が部下の状況を把握して対応すること、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は産業医などの専門家によるサポート、「事業場外資源によるケア」は外部の専門機関の力を借りることです。特に中小企業では外部の力を上手に活用するのがおすすめです。
就業規則には、メンタルヘルスに関する以下のような内容を盛り込むと良いでしょう。まず「休職制度」では、心の不調で連続または断続的に休む場合のルールを決めます。「受診命令と診断書提出」では、会社が医師の診断を受けるよう指示できることを明確にします。「復職支援制度」では、職場復帰の手続きや試し出勤制度について定めます。
「就業上の配慮」では、短時間勤務や残業禁止などの措置を明記します。「再発防止と再休職」では、同じ理由で再び休職する場合のルールを決めます。「相談窓口やサポート体制」では、悩みを相談できる窓口や専門家との連携について記載します。「自動退職・解雇」では、休職期間が終わっても復帰できない場合の扱いを明確にします。
中小企業では、社長さんや人事担当者による定期的な面談、外部カウンセラーの定期訪問、地域産業保健センターの活用などが効果的です。こうした体制を就業規則に明記し、掲示板やリーフレットなどで皆さんに知らせることが大切ですね。
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第4回:健康診断と就業規則
健康診断は健康経営の大切な柱であり、労働安全衛生法第66条に基づく法的な義務でもあります。雇入れ時の健康診断、年1回の定期健康診断、有害業務に従事する人の特殊健康診断、海外に派遣される方の健康診断などがあります。従業員が50人未満の小さな会社でも、定期健康診断は必ず実施しなければなりませんよ。
健康診断に関する就業規則の規定例としては、まず「健康診断の種類と実施時期」を明記します。「会社は、従業員に対し、雇入れ時及び毎年1回(深夜業などの業務に従事する人は6か月に1回)、定期的に健康診断を行います」といった内容が基本です。「健康診断の受診義務」では、「従業員は、会社が実施する健康診断を受けなければなりません。正当な理由なく健康診断を拒否した場合、就業を禁止することがあります」などと定めます。
「健康診断費用の負担」では、「会社が指定する健康診断の費用は会社が負担します。ただし、従業員の希望による追加検査の費用は自己負担となります」といった内容を記載します。「健康診断結果の通知と記録保存」では、結果をどのように伝えるか、どれくらいの期間保存するかを決めます。「健康診断後の医師の意見聴取と就業上の措置」では、「会社は、健康診断の結果、従業員の健康に異常があると診断された場合、医師の意見を聞き、必要に応じて仕事の場所や内容の変更、労働時間の短縮などの措置を行います」などと定めます。
健康診断結果のフォローアップとして、健康状態に応じた対応が効果的です。例えばA(健康)、B(要観察)、C(要医療)、D(要就業制限)などの区分を設け、それぞれに合った対応を決めておくと良いでしょう。また、長期的な健康管理計画も大切です。健康診断データの年ごとの変化を分析し、従業員の年齢や健康リスクに合わせた健康づくりを計画的に進めましょう。
中小企業向けのポイントとしては、シンプルで実行しやすい内容にすること、地域産業保健センターや健康保険組合などの外部の力を借りること、健康診断を受けやすくするための配慮(就業時間内の受診許可など)や特別休暇(人間ドック休暇など)を設けることがおすすめです。
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第5回:健康経営の評価と就業規則の見直し
健康経営を長く続けていくためには、取り組みの効果を測定し、就業規則を定期的に見直すことが大切です。健康経営の評価指標は5つの分野に分けられます。「従業員の健康状態」では、健康診断結果(有所見率、血圧・血糖値などの平均値)、BMI分布、喫煙率などを見ます。「勤怠・生産性」では、欠勤率、病気休暇の日数、残業時間、プレゼンティーイズム(出社はしているけれど体調不良で十分に働けない状態)などを評価します。
「組織活性度」では、従業員の満足度、職場のコミュニケーション活性度、離職率などを測ります。「施策実施状況」では、健康診断受診率、ストレスチェック実施率、健康関連セミナー参加率などを評価します。「経営的効果」では、医療費・保険料の変化、生産性指標、健康経営のROI(投資対効果)などを分析します。
中小企業では段階的に取り組むのがおすすめです。まずは「基本指標」(健康診断受診率、有所見率、残業時間など)から始め、次に「施策効果」(特定保健指導実施率、運動習慣のある人の割合など)を測り、最終的に「経営的効果」(医療費、生産性、離職率など)を評価していきましょう。
就業規則を見直す必要があるのは、法律が変わったとき(働き方改革関連法、パワハラ防止措置義務化など)、社会の状況が変化したとき(テレワークの普及、健康意識の高まりなど)、会社が成長・変化したとき(従業員が増えた、業務内容が変わったなど)、健康経営の取り組みが進化したとき(新しい健康課題が見つかった、施策の効果を確認したなど)です。
健康経営の視点から見直すべき就業規則の項目としては、基本理念・目的条項、労働時間・休憩・休日、休暇制度、健康管理、メンタルヘルス、健康増進活動の6つの分野があります。例えば労働時間では、残業時間の上限設定や勤務間インターバル制度の導入、休暇制度では有給休暇を取りやすくする工夫やリフレッシュ休暇の新設などを検討しましょう。
中小企業で就業規則を見直す際のポイントとしては、段階的に進める(優先順位の高いものから順に改定)、外部の専門家の力を借りる(社会保険労務士さんなど)、従業員の意見を取り入れる、わかりやすい表現にする、定期的に見直す仕組みを作る(年1回など)ことが大切です。従業員の意見を集めるには、アンケート調査、個別面談、意見箱、グループでの話し合いなどの方法が効果的ですよ。
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第6回:健康経営実現のための就業規則チェックリスト
健康経営と就業規則シリーズの最終回として、健康経営の考え方と実践を就業規則に効果的に反映させるための総合的なチェックリストをご紹介します。このチェックリストは、会社の健康経営への取り組みを制度として定着させ、長く続けていくための大切なツールです。
「基本理念・目的に関する項目」では、健康経営の基本的な考え方が就業規則の前文や目的の部分に書かれているか、「従業員の心と体の健康を大切な経営課題と考えています」という内容が含まれているか、会社と従業員がそれぞれどんな責任を持つのか明確になっているか、健康経営と会社の持続的な成長がどう関係しているか示されているかをチェックします。
「健康診断に関する項目」では、どんな健康診断をいつ行うか明確に決まっているか、健康診断を受ける義務が書かれているか、費用は会社が負担することが決まっているか、結果をどう伝えてどれくらい保存するか定められているか、医師の意見を聞いて必要な措置を取ることが決まっているか、再検査や精密検査を受けるよう勧める仕組みがあるか、小さな会社でもストレスチェックを行う規定があるかをチェックします。
「メンタルヘルス対策に関する項目」では、ストレスチェックの実施と面接指導について書かれているか、心の不調がある人への対応手順が決まっているか、相談窓口の設置について記載されているか、心の不調による休職・復職の制度が整っているか、試し出勤などの復職支援プログラムが決まっているか、ハラスメント防止の規定があるかをチェックします。
その他にも「労働時間・休暇に関する項目」「職場環境整備に関する項目」「治療と仕事の両立支援に関する項目」「健康情報の取扱いに関する項目」「健康経営推進体制に関する項目」「健康増進活動に関する項目」「評価・改善に関する項目」についても詳しくチェック項目を示しています。
このチェックリストは、会社の規模や業種に合わせて優先順位をつけ、段階的に取り組むことをおすすめします。特に小さな会社では、まず法律で決められている項目(健康診断、ストレスチェックなど)から整備し、徐々に健康経営の考え方や具体的な取り組みを反映させていくとよいでしょう。健康経営と就業規則の整備は、従業員の健康づくりと会社の持続的な成長を両立させる大切な経営戦略です。
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健康経営実現のための就業規則チェックリスト 【健康経営と就業規則】6
健康経営と就業規則についてさまざまな視点から解説しています。興味のある方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
- 健康経営の概念と重要性 【健康経営と就業規則】1
健康経営の基本概念や企業にもたらすメリット、就業規則との関連性について - 就業規則における健康経営の反映 【健康経営と就業規則】2
健康経営を就業規則に反映させるための基本構成や労働時間・休暇制度の規定方法について - メンタルヘルス対策と就業規則 【健康経営と就業規則】3
企業におけるメンタルヘルス対策の重要性と、それを就業規則に効果的に反映させる方法 - 健康診断と就業規則 【健康経営と就業規則】4
健康診断の法的根拠から就業規則への反映方法、効果的なフォローアップ体制の構築まで - 健康経営の評価と就業規則の見直し 【健康経営と就業規則】5
健康経営施策の効果測定方法と、その結果に基づく就業規則の定期的な見直しについて実践的なアドバイス - 健康経営実現のための就業規則チェックリスト 【健康経営と就業規則】6
健康経営の理念と実践を就業規則に効果的に反映させるための包括的なチェックリスト

