ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の会社を経営しています。先月、メンタル不調で休職した社員がいます。会社としては「見捨てているわけではない」と伝えたいし、傷病手当金の手続きや状況確認もしたい。でも、頻繁に連絡するとプレッシャーをかけてしまわないかと心配しています。
逆に「連絡しすぎ」で症状が悪化したと言われても困りますし、まったく連絡しないと休職期間の管理や復職支援が難しくなります。
休職中の社員への連絡は、どの程度、どんな内容であれば問題ないのでしょうか。
お悩み
- 休職中の社員に連絡してもよい?
- 連絡の頻度・手段はどうすればよい?
- やってはいけない連絡の内容は?
結論:連絡は必要。ただし「月1〜2回・窓口は人事・業務の話はしない」が原則
結論から申し上げますと、休職中の社員への連絡は、会社として適切に行うべきです。ただし、頻度や内容を誤ると、療養の妨げになり、最悪の場合「ハラスメント」と受け取られるリスクもあります。
休職中の連絡の基本原則
① 連絡の頻度は月1〜2回を目安にする
② 連絡の窓口は「人事担当者」に一本化する
③ 連絡内容は「体調確認」と「事務的な手続き」に限る
④ 業務の話・復帰の催促・同僚の話は原則しない
「心配しているから頻繁に連絡する」という善意が、休職者にとってはプレッシャーになることがあります。本人の療養を最優先に、適切な距離感を保つことが大切です。
休職中の連絡が必要な理由
会社として連絡する目的
休職中でも、次のような理由から会社は定期的な連絡を取る必要があります。
- 本人の体調・療養状況を把握するため
- 傷病手当金の申請などの事務手続きを進めるため
- 休職期間の満了が近づいた際に、復職・退職の意向を確認するため
- 連絡が途絶えた場合に、安否確認ができるようにするため
連絡しないことのリスク
休職中にまったく連絡しないと、本人が「会社に見捨てられた」と感じてしまい、復職意欲の低下や退職につながる可能性があります。また、休職期間の終了が近づいた際に慌てて対応することになり、双方にとって負担が増えます。
連絡の頻度・タイミング
休職初期(〜1か月程度)
休職直後は、心身ともに最も不安定な時期です。この時期は、まず休んでもらうことが最優先です。
- 頻度:月1回程度
- 内容:体調確認と事務手続きの確認のみ
- 手段:メールまたは電話(本人の負担に応じて選ぶ)
事務手続き(診断書の提出期限、傷病手当金の申請書類など)の連絡は、この時期でも必要ですが、それ以外の話は最小限にとどめます。
回復期(状態が徐々に安定してきた時期)
体調が落ち着いてきたら、少しずつ連絡の頻度を上げていきます。
- 頻度:2週間に1回程度
- 内容:体調確認、生活リズムの状況、復職に向けた準備状況など
- 手段:電話や対面面談も取り入れる
復職検討期(復職が視野に入ってきた時期)
復職が近づいてきたら、復職プランの確認や、主治医・産業医との連携を進めます。
- 頻度:週1回程度も可
- 内容:復職希望日、通勤練習の状況、職場への希望・不安など
- 手段:面談形式が望ましい
連絡の手段・窓口
窓口は「人事担当者」に一本化する
直属の上司から連絡が入ると、休職者が「職場での評価が心配」「早く戻らなければ」と感じてプレッシャーになることがあります。
人事担当者を窓口にする理由
- 業務・人間関係のストレスから切り離した関係で話せる
- 個人情報・プライバシーを適切に管理できる
- 連絡内容を記録として残しやすい
小さな会社で人事担当者が不在の場合は、経営者または信頼できる管理職が窓口となり、直属の上司からは連絡しないルールを徹底します。
電話・メールの使い分け
| 状況 | おすすめの手段 |
|---|---|
| 休職初期・体調が不安定 | メール(返信は「無理のない範囲で」と伝える) |
| 状態がやや安定してきた | 電話(声のトーンで状態を把握できる) |
| 復職が近づいている | 電話・面談(直接確認が必要な内容が増える) |
メールの場合は、「お体の具合がよいときにご返信ください」と一言添えることが大切です。
連絡するタイミング
連絡してよい内容・してはいけない内容
連絡してよい内容
- 体調の変化や通院状況の確認
- 傷病手当金・診断書の提出に関する手続き
- 休職期間の確認(あとどのくらい休む予定か)
- 社会保険料の支払い方法など、事務的な連絡
- 「会社はいつでも待っています」という安心感を伝える言葉
してはいけない連絡の内容
× 「今の業務の進捗はどうなってる?」(業務の話)
× 「早く復職できそう? 来月戻れる?」(復帰の催促)
× 「あなたが休んで、みんな大変なんだよ」(罪悪感を与える言葉)
× 「同僚の〇〇さんが最近こんなことを言ってたよ」(人間関係の情報)
× 「うつ病って、実際どのくらいつらいの?」(症状への過度な踏み込み)
これらの言葉は、善意から出ていても、休職者の療養を妨げるおそれがあります。特に「早く戻ってほしい」という会社側の本音は、伝え方次第でプレッシャーになるため注意が必要です。
連絡が取れなくなった場合の対応
「連絡が取れない」はよくあること
休職中に、電話をかけてもつながらない、メールを送っても返信がないという状況は、珍しくありません。
対応の流れ
- メール・電話を複数回試みても連絡がとれない場合、郵便(書面)で連絡する
- 書面には「〇月〇日までに返信・ご連絡ください」と期限を明示する
- それでも連絡がない場合は、緊急連絡先(家族・身元保証人)に状況を確認する
「対応した記録」を残す
連絡を試みた日時・手段・内容は、必ず記録に残してください。
記録を残す理由
- 会社として誠意を持って対応していた証拠になる
- 後々の復職・退職交渉でのトラブル防止につながる
- 休職期間の管理(期間満了の通知など)を適切に行うための根拠になる
休職前に決めておくべきこと
休職開始時に確認・合意しておくと安心
休職に入る前の段階で、次のことを本人と確認・合意しておくと、休職中の連絡がスムーズになります。
- 連絡の窓口となる担当者の氏名・連絡先
- 連絡の頻度・手段(電話かメールか)
- 診断書・傷病手当金申請書の提出スケジュール
- 緊急連絡先(家族など)の確認
- 休職期間の満了日と、満了前に確認する時期
これらを「休職開始時の確認書」として書面に残しておくと、後のトラブル防止に役立ちます。
よくある質問
Q1:直属の上司から「様子を見に行きたい」と言われた場合は?
A:休職者の同意なく自宅を訪問することは、プライバシーの侵害になる可能性があります。本人が希望した場合を除き、連絡は電話・メールにとどめましょう。
Q2:本人が「会社に迷惑をかけているから、復職を急ぎたい」と言ってきた場合は?
A:焦りが見られる場合は、「焦らなくて大丈夫です。しっかり回復してからにしましょう」と伝えましょう。無理な復職は再発のリスクを高めます。
Q3:休職中の社員の状況を、本人の了解なく他の社員に話してもよい?
A:プライバシーの問題があるため、他の社員への開示は最小限にとどめます。伝える場合も、「体調不良のため休職中」という程度にとどめ、病名や詳しい状況は伝えないのが原則です。
Q4:傷病手当金の書類を送る場合、どう連絡すればよい?
A:「書類をお送りしますので、体調が良いときにご記入・ご返送ください」と伝え、返送期限に余裕を持たせましょう。急かすような表現は避けます。
まとめ
休職中の社員への連絡については、
- 月1〜2回を目安に、人事担当者が窓口となって連絡する
- 連絡内容は体調確認と事務手続きに限り、業務の話・復帰の催促はしない
- 休職初期は特に頻度を抑え、回復に応じて少しずつ増やす
- 連絡が取れない場合は、試みた記録を残し、段階を踏んで対応する
- 休職開始時に連絡方法を合意しておくと、その後がスムーズになる
という流れを押さえることが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、休職開始時の確認書・連絡フローの整備、就業規則の休職規程の見直し、復職支援の仕組みづくりなどを通じて、休職者と会社の双方にとって安心できる対応をサポートしています。
「休職中の連絡の仕方が分からない」
「休職制度のルールを整えたい」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

