在宅勤務の通信費、会社負担すべき?テレワーク手当の相場

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で従業員20名のIT企業を経営しています。昨年からテレワークを導入し、週2〜3日は在宅勤務ができる体制にしました。

ところが最近、社員から「自宅のインターネット代や電気代が増えた分、会社に負担してほしい」という声が上がるようになりました。会社としては「自宅の回線を業務でも使っているだけで、プライベートと区別できないのでは」と思っており、どこまで会社が負担すべきか判断がつきません。

テレワーク手当は必要なのか、いくら支給するのが一般的なのか、就業規則にはどう定めればよいのかを教えてください。

お悩み

  • 通信費や光熱費は会社が負担しなければいけない?
  • テレワーク手当の相場はどのくらい?
  • 就業規則にはどう書けばよい?

結論:法律上の義務はないが、ルールを決めて就業規則に明記することが重要

結論から申し上げますと、通信費・光熱費を会社が負担する法律上の義務はありません。ただし、業務に必要な費用の取り扱いをあいまいにしておくと、社員の不満やトラブルにつながります。

テレワーク手当のポイント
① 通信費・光熱費の負担に関する法律上の義務はないが、就業規則への明記が必要
② 在宅勤務手当の相場は月額3,000〜5,000円程度が最多
③ 支給する場合は、金額・支給対象・支給方法を就業規則または「テレワーク勤務規程」に明記する
④ 「自己負担」とする場合も、就業規則に明確に記載しておく

「なんとなく支給していない」「本人が何も言わないから大丈夫」という状態は、後々のトラブルの原因になります。どちらの方針をとるにしても、ルールとして明文化することが大切です。

在宅勤務で発生する費用の種類

会社が負担を検討すべき主な費用

テレワーク導入によって従業員に新たに発生する費用は、主に以下の通りです。

通信費

  • 自宅インターネット回線の月額料金(目安:月4,000〜5,000円)
  • スマートフォンの通話・データ通信料

光熱費

  • 電気代(パソコン・空調・照明の使用増加分)
  • 水道代(在宅により増加する場合)

その他

  • 文房具・プリンター用紙などの消耗品
  • 作業用の机・椅子・モニターなどの備品

このうち、通信費と光熱費が従業員にとって最も負担感が大きく、手当の対象として取り上げられることが多いです。

業務とプライベートの切り分けが難しい

自宅のインターネット回線や電気は、業務時間外でも使用します。そのため、全額を会社負担とするのではなく、業務使用分の割合を考慮して一部負担とするのが一般的です。

テレワーク手当の相場

月額支給の場合

毎月一律で支給する場合の相場は、次の通りです。

  • 最多:月3,000〜5,000円未満(約4割の企業)
  • 平均的な支給額:3,500〜4,000円程度
  • 上位企業:月10,000円以上支給する例もあり

在宅勤務が週2〜3日のハイブリッド勤務でも、月3,000〜5,000円の支給が多い傾向にあります。

日額支給の場合

在宅勤務をした日数に応じて支給する方式では、1日あたり200〜300円が目安です。

ハイブリッド勤務(出社と在宅が混在する場合)では、日額支給の方が公平性を保ちやすいメリットがあります。

一時金支給の場合

テレワーク導入時に、環境整備費用として一括で支給する方法もあります。

  • 相場:10,000円〜100,000円程度
  • 使途:モニター・マウス・キーボードなどの購入費用に充てることが多い

一時金の場合、「設備整備に使用した領収書を提出する」実費精算型にする会社もあります。

手当の支給方法の選択肢

月額一律支給

毎月、在宅勤務の有無に関わらず一定額を支給する方法です。

メリット

  • 給与計算が簡単
  • 社員にとって分かりやすい

デメリット

  • 出社が多い月も同額になるため、不公平感が出ることがある

日額支給(勤務実績に応じる)

在宅勤務した日数×日額で支給する方法です。

メリット

  • 実態に即した支給ができる
  • 出社日数の多い社員との公平性が保ちやすい

デメリット

  • 毎月の計算が必要で、勤怠管理と連動させる必要がある

実費精算

通信費の明細を提出してもらい、業務使用分として認めた金額を支給する方法です。

メリット

  • 実際にかかった費用を負担できる

デメリット

  • 毎月の事務作業が増える
  • 業務使用分の算出基準を明確にしないと、トラブルになりやすい

実務上は、事務処理の手間が少ない月額一律支給または日額支給を採用する会社が多いです。

就業規則・規程への記載

テレワーク手当の規定を明記する

テレワーク手当を支給する場合、就業規則または「テレワーク勤務規程」に次のような内容を明記します。

  • 手当の名称(在宅勤務手当、テレワーク手当など)
  • 支給対象者(全員か、申請・許可を得た者のみか)
  • 支給額・支給方法(月額一律 or 日額 or 実費精算)
  • 支給日(給与支給日に合算するか、別途支給するか)

「支給しない」場合も明記する

会社が費用を負担しない方針の場合も、就業規則に「在宅勤務に伴う通信費・光熱費は、従業員の負担とする」と明記しておく必要があります。

明記しておくことで、「聞いていなかった」「入社前と話が違う」というトラブルを防ぐことができます。

既存の社員への周知

手当を新設・変更する場合は、従業員に内容を説明し、理解を得ることが大切です。
特に手当を設けない場合は、なぜ支給しないのかを丁寧に説明することで、不満の蓄積を防ぐことができます。

会社として整備しておくべきポイント

対象者の範囲を明確にする

テレワーク手当を支給する対象者の範囲を就業規則で明確にします。

  • 全従業員
  • 在宅勤務許可を受けた者のみ
  • 週〇日以上の在宅勤務者

機器・備品の貸与と費用負担を整理する

会社がパソコンを貸与するか、私物を使用させるかによって、費用負担の整理も変わります。

  • 会社支給のパソコンを貸与する場合 → 通信費・光熱費のみ検討
  • 私物パソコンを使用させる場合 → 機器の消耗・修繕費用も含めて検討

費用の精算申請ルールを決める

実費精算の場合は、申請期限・提出書類・承認フローを事前に決めておくと、現場での混乱を防ぐことができます。

よくある質問

Q1:テレワーク手当を支給しないことは問題?

A:法律上の義務はありません。ただし、就業規則に「自己負担とする」と明記しておくことが必要です。明記なく費用を負担させると、後々トラブルになる可能性があります。

Q2:出社日が多い社員と在宅が多い社員で手当に差をつけていい?

A:日額支給にすることで、在宅勤務日数に応じた公平な支給が可能です。一律支給の場合は不公平感が出やすいため、支給方法を選ぶ際に考慮が必要です。

Q3:手当を後から廃止したり、金額を下げたりできる?

A:手当は労働条件の一部です。就業規則を変更する場合は、労働者にとって不利益な変更にあたるため、社員への説明と合理的な理由が必要です。一方的な廃止・引き下げはトラブルになる可能性があります。

Q4:インターネット環境がない社員はどうする?

A:会社がモバイルWi-Fiルーターを貸与する、または通信機器の購入費用を会社が負担するといった対応が考えられます。就業規則で「会社が必要な機器を貸与する場合がある」と規定しておくと柔軟に対応できます。

まとめ

在宅勤務の通信費・光熱費の負担については、

  • 法律上の義務はないが、方針を就業規則に明記することが必須
  • テレワーク手当の相場は月額3,000〜5,000円が最多
  • 支給方法は月額一律・日額・実費精算から選択し、事務負担も考慮して決める
  • 「支給しない」場合も、就業規則への明記と社員への丁寧な説明が必要

という点を押さえておく必要があります。

上本町社会保険労務士事務所では、テレワーク手当の設計・就業規則への規定追加、テレワーク勤務規程の新規作成、費用負担ルールの社内説明資料の作成などを通じて、テレワーク時代に合った労務管理の整備をお手伝いしています。

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