ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の会社を経営しています。メンタル不調で休職していた社員が、就業規則で定めた休職期間(1年間)の満了日が近づいても、復職できる見込みが立たない状況です。
「休職期間が満了したら、どうなるのか」「解雇になるのか、退職になるのか」「手続きはどうすればよいのか」について整理できていません。
本人に対してどのように対応すればよいか、法的な違いと具体的な手続き方法を教えてください。
お悩み
- 休職期間満了は「解雇」になるの?「退職」になるの?
- 就業規則にどう書いてあるかで変わる?
- 手続きの流れと注意点は?
結論:就業規則の規定次第で「自然退職」か「解雇」かが決まる。どちらも一方的な強行はリスクが高い
結論から申し上げますと、休職期間満了による雇用関係の終了が「退職(自然退職)」になるか「解雇」になるかは、就業規則の規定によって決まります。
休職期間満了のポイント
① 就業規則に「満了をもって退職とする」とあれば自然退職、「解雇とする」とあれば解雇扱いになる
② 一般的には「自然退職(自動退職)」の規定を設ける会社が多く、これがトラブルになりにくい
③ 就業規則に規定がない場合は、合意退職または通常の解雇手続きが必要になる
④ いずれの場合も、事前の通知・記録・丁寧な対応が不当解雇トラブルを防ぐカギ
「期間が来たから突然終わり」という対応は、後のトラブルにつながります。早めに丁寧な対応を進めることが大切です。
「自然退職」と「解雇」の違い
自然退職(自動退職)とは
就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は退職とする」と定められている場合、満了日をもって自動的に雇用契約が終了します。これを「自然退職」または「自動退職」といいます。
自然退職の特徴
- 解雇予告・解雇予告手当が不要
- 会社からの一方的な解雇ではなく、就業規則の規定に基づく雇用終了
- トラブルになりにくく、実務上多くの会社で採用されている
解雇とは
就業規則に「休職期間満了の場合は解雇とする」と定められている場合、または規定がなく解雇手続きをとる場合は、通常の解雇として扱われます。
解雇の場合に必要な手続き
- 解雇予告:少なくとも30日前に予告が必要
- 解雇予告手当:30日前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金を支払う
- 解雇通知書の交付(書面で交付する)
- 解雇理由証明書の発行(本人が請求した場合)
2つの比較
| 項目 | 自然退職 | 解雇 |
|---|---|---|
| 根拠 | 就業規則の規定に基づく自動終了 | 会社の意思表示による雇用終了 |
| 解雇予告・予告手当 | 不要 | 必要(30日前または30日分の平均賃金) |
| 解雇通知書 | 不要(退職通知書は出す) | 必要 |
| 不当解雇リスク | 比較的低い | 高い(正当な理由が必要) |
| 実務での採用頻度 | 多い | 少ない |
自然退職の手続きの流れ
満了日の2〜3か月前から動き始める
休職期間満了が近づいてきたら、早めに対応を開始します。直前になってから通知すると、本人が準備できず混乱が生じます。
ステップ①:満了日と退職の可能性を書面で通知する
満了日の2〜3か月前を目安に、本人へ書面で次の内容を通知します。
- 休職期間の満了日
- 満了日までに復職できない場合は退職となる旨
- 復職を希望する場合は、主治医の診断書を提出してほしい旨
- 会社の連絡先と担当者名
書面での通知が、後のトラブル防止に非常に重要です。口頭だけでの通知は「言った・言わない」の争いになるリスクがあります。
ステップ②:復職意思と医師の判断を確認する
本人から「復職したい」という意思表示があった場合は、主治医の診断書を提出してもらいます。
- 主治医が「復職可能」としている場合 → 復職支援プランの作成へ(前回記事参照)
- 主治医が「まだ困難」としている場合 → 満了日をもって退職の手続きへ
ステップ③:満了日前に最終確認の面談を行う
満了日の2〜4週間前に、本人との面談を実施します。
面談で確認する内容
- 復職の意思・見込みの最終確認
- 退職後の健康保険・年金の手続き案内
- 退職金・有給休暇の残日数の確認
- 会社貸与品の返却方法
この面談の内容も記録として残しておきます。
ステップ④:退職日をもって各種手続きを行う
満了日(退職日)をもって、次の手続きを進めます。
社会保険関係
- 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届(退職日の翌日から5日以内)
- 健康保険証の返却
雇用保険関係
- 雇用保険被保険者資格喪失届(退職日の翌日から10日以内)
- 離職証明書の作成・ハローワークへ提出
- 離職票の本人への交付
その他
- 退職証明書の発行(本人が請求した場合)
- 会社貸与品の返却確認
- 退職金の支払い(就業規則の規定に基づく)
離職票の離職理由の記載
自然退職の場合の離職理由
休職期間満了による自然退職の場合、離職票の離職理由は「労働者の個人的な事情による離職(一身上の都合)」ではなく、適切に記載する必要があります。
記載の目安
- 私傷病による休職期間満了の場合:「特定理由離職者」に該当する可能性がある
- 特定理由離職者と認定されると、自己都合退職より早く失業給付を受けられる場合がある
離職票の記載を誤ると、本人が不利益を受ける可能性があるため、ハローワークに事前に確認することを強くおすすめします。
就業規則の規定がない場合の対応
規定がない場合はリスクが高い
就業規則に休職期間満了時の扱いが明記されていない場合、会社は自然退職を主張しにくくなります。この場合は次のいずれかの対応が必要になります。
- 本人との合意退職(本人が納得したうえで退職届を提出してもらう)
- 通常の解雇手続き(30日前の予告または解雇予告手当の支払い)
この場合は不当解雇リスクが高まるため、専門家(社労士・弁護士)に相談したうえで対応することを強くおすすめします。
今後のために就業規則を整備する
今回のケースを機に、就業規則の休職・復職規定を見直しておくことが大切です。
就業規則に明記しておくべき内容
- 休職期間の長さ(勤続年数に応じた設定も可)
- 休職期間満了時の扱い(「退職とする」か「解雇とする」か)
- 復職可否の判断基準
- 休職期間の延長規定(必要に応じて)
よくある質問
Q1:本人が退職を拒否した場合、どうなる?
A:就業規則に「満了をもって退職とする」という規定があり、かつ実際に復職できる状態にない場合は、本人の同意がなくても自然退職の効力が生じます。ただし、「復職できる状態にあるのに会社が認めなかった」という主張をされるリスクがあるため、主治医・産業医の意見を証拠として残しておくことが重要です。
Q2:休職期間を延長することはできる?
A:就業規則に延長規定がある場合は可能です。ただし、いったん延長すると「なぜ今回は認めないのか」という問題が生じやすくなります。延長する場合は、回数・期間の上限を就業規則に定めておくことをおすすめします。
Q3:満了前に本人が「退職する」と言ってきた場合は?
A:本人から退職の意思表示があった場合は、自己都合退職として扱います。退職届を書面で提出してもらい、退職日・有給休暇の扱いなどを確認します。
Q4:退職金は支払う必要がある?
A:就業規則・退職金規程に規定がある場合は支払いが必要です。「自然退職は退職金なし」と規定している場合はその規定に従いますが、あまりに不合理な内容は争いの原因になることもあります。
まとめ
休職期間満了での退職については、
- 「自然退職」か「解雇」かは就業規則の規定によって決まる
- 自然退職の規定があれば解雇予告・予告手当は不要で、トラブルになりにくい
- 満了日の2〜3か月前から書面で通知し、面談・記録を残しながら丁寧に進める
- 退職日には社会保険・雇用保険の手続きを速やかに行う
- 就業規則に規定がない場合はリスクが高く、専門家への相談が必要
という流れが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、就業規則の休職・復職規定の整備、休職期間満了時の対応フローの作成、離職票の作成支援などを通じて、スムーズかつトラブルのない対応をサポートしています。
「休職期間満了が近づいているが、どう対応すればよいか分からない」
「就業規則に休職の規定がなく、不安がある」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

