ご相談内容【想定相談事例】
大阪市内で従業員20名の会社を経営しています。メンタル不調で2か月間休職していた社員から、「そろそろ復職したい」と連絡がありました。主治医の診断書にも「復職可能」と記載されています。
会社としては「戻ってきてほしい」という気持ちがある一方、「以前と同じ働き方に戻して、また体調を崩されたら」という不安もあります。
復職させると決めた場合、具体的にどのようなプランを立てればよいのでしょうか。段階的な職場復帰の進め方を教えてください。
お悩み
- 復職支援プランとは何か?作る義務はある?
- 段階的な復職はどのように進めればよい?
- 復職後のフォローアップはどこまですべき?
結論:厚生労働省の「5ステップ」に沿って進めるのが基本。プランの作成と記録が再発防止のカギ
結論から申し上げますと、復職支援プランとは、復職の可否判断から段階的な勤務の進め方、フォローアップまでを一つにまとめた計画書です。法律上の義務はありませんが、厚生労働省の手引きに基づき作成することが、再発防止とトラブル防止の両面で有効です。
復職支援プランのポイント
① 厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」に基づく5ステップで進める
② 復職支援プランには、復職日・勤務時間・業務内容・フォロー体制を明記する
③ 段階的な復職は「時短勤務→定時勤務→通常勤務」の流れが基本
④ 復職後も定期的な面談でフォローし、記録を残す
「復職した日から以前と同じ働き方に戻す」のではなく、段階を踏んで職場に慣れさせることが、再発を防ぐ最大のポイントです。
復職支援プランとは
厚生労働省の「手引き」が基準
厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しており、復職支援を5つのステップに分けて体系的に整理しています。
この手引きはメンタル不調による休職・復職に特化したものですが、身体的な疾患による休職にも応用できます。
プランに記載する主な内容
- 復職(予定)日
- 復職後の勤務形態(時短・フレックスなど)
- 業務内容と制限事項(残業禁止・出張不可など)
- 管理職による就業上の配慮の内容
- フォローアップ面談のスケジュール
- 産業医・主治医との連携方針
5ステップで進める復職支援の流れ
第1ステップ:休業中のケアと情報収集
休職中から、定期的な連絡を通じて本人の状況を把握します。
- 月1〜2回程度、体調・生活リズムの確認を行う
- 診断書の提出スケジュールを管理する
- 本人が「復職したい」と申し出たら、次のステップへ進む
第2ステップ:主治医の判断を確認する
主治医から「復職可能」の診断書が提出されたら、内容を確認します。
確認すべきポイント
- 復職可能の根拠(症状の回復状況)
- 配慮が必要な事項(残業不可、特定業務の制限など)
- 復職後の通院・服薬の継続有無
ただし、主治医の判断だけで復職を決めるのではなく、会社として独自に判断することが重要です(前回記事「メンタル不調で休職した社員。復職の可否をどう判断する?」参照)。
第3ステップ:復職可否の判断とプランの作成
会社として復職の可否を最終判断し、復職支援プランを作成します。
復職可否の判断に使う情報
- 主治医の診断書
- 本人との面談(生活リズム・通勤練習の状況)
- 産業医がいる場合は産業医の意見
第4ステップ:復職日の最終決定
本人・上司・人事・産業医(いる場合)が揃って、復職支援プランを共有・合意します。
- 復職日・当面の勤務条件を書面で確認する
- 本人がプランの内容を理解・納得していることを確認する
- 職場の受け入れ側(上司・同僚)にも、必要な範囲で共有する
第5ステップ:復職後のフォローアップ
復職後も、定期的な面談でフォローします。
面談の頻度の目安
- 復職後1か月:週1回程度
- 2〜3か月目:2週間に1回程度
- 4か月目以降:月1回程度
段階的な復職の進め方
「時短→定時→通常勤務」の3段階が基本
復職直後からフル勤務に戻すのではなく、次のような3段階で進めるのが一般的です。
第1段階:慣らし勤務(復職後2〜4週間)
- 勤務時間:1日3〜4時間、週3〜4日程度
- 業務内容:軽作業・資料整理・定型業務など負担の少ないもの
- 残業・休日出勤・出張:禁止
- 目標:職場環境への再適応、生活リズムの安定
第2段階:定時勤務(2〜4週間程度)
- 勤務時間:所定の始業〜終業(例:9時〜18時)
- 業務内容:通常業務の一部、判断を要さない業務中心
- 残業:引き続き禁止
- 目標:フルタイムでの勤務継続
第3段階:通常勤務への移行(4〜8週間程度)
- 勤務時間:通常勤務
- 業務内容:以前の業務内容に徐々に近づける
- 残業:上限を設けたうえで、少しずつ解禁
- 目標:完全復職の確認
各段階の期間はあくまで目安であり、本人の回復状況に応じて柔軟に調整します。焦って先へ進むより、「安定している」と確認できてから次の段階に進むことが大切です。
復職前の準備状況も確認する
- 休日も含めて規則正しく6〜8時間眠れているか
- ラッシュ時間帯での通勤練習ができているか
- 60〜90分程度の集中作業(読書・軽作業など)ができているか
これらが整っていない状態での復職は、再発リスクが高くなります。
復職後のフォローアップで確認すること
面談で定期的に確認するポイント
- 体調・睡眠・食欲の状態
- 業務量や内容のきつさ・プレッシャーの有無
- 職場の人間関係に問題はないか
- 通院・服薬を継続できているか
- 「また休みたい」という気持ちがないか
「無理していないか」を確認する
復職者は「早く役に立たないといけない」「周りに迷惑をかけたくない」という気持ちから、無理をしてしまうことがあります。
「大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です」と答えることが多いため、「業務が多いと感じることはありますか?」など、具体的な質問をするほうが本音を引き出しやすいです。
記録を残す
面談の日時・内容・本人の様子を記録に残します。この記録は、万が一再発したときに「会社として適切なフォローをしていた」という証拠になります。
プランを運用するうえで注意すること
プランを「作るだけ」にしない
プランを作成しても、実際の現場で守られなければ意味がありません。
- 上司に「残業禁止」が共有されているか確認する
- 業務量を調整できているか定期的にチェックする
- プランに沿って進んでいるか、人事担当者が定期的に確認する
本人・上司・人事の三者で情報を共有する
復職支援は、本人・直属の上司・人事担当者の三者が連携して進めることが重要です。
一方が知っていても他方が知らない、という状況が生まれると、職場での配慮が抜け落ちてしまいます。
よくある質問
Q1:プランの期間が終わっても本人の回復が不十分な場合は?
A:無理に通常勤務へ移行させず、プランの延長を検討します。産業医や主治医の意見を確認し、本人と話し合って期間を延ばしましょう。
Q2:「試し出勤(リハビリ出勤)」制度とは?
A:正式な復職前に、段階的に職場に来て慣らす制度です。法律上の制度ではないため、就業規則に規定を設けたうえで導入します。出勤中の労災扱いや給与の有無を、事前に明確にしておく必要があります。
Q3:産業医がいない小規模な会社はどうすればよい?
A:地域産業保健センター(産業保健総合支援センター)では、産業医による無料相談が受けられます。外部の産業医サービスを単発で利用することも可能です。
Q4:プランに本人のサインは必要ですか?
A:法的な義務はありませんが、プランの内容を本人が理解・合意したことを示すために、書面への署名・押印をもらうことをおすすめします。後のトラブル防止にもなります。
まとめ
復職支援プランの作成と段階的な職場復帰は、
- 厚生労働省の手引きに基づく5ステップで進める
- プランには復職日・勤務時間・業務内容・フォロー体制を明記する
- 段階的復職は「慣らし勤務→定時勤務→通常勤務」の3段階が基本
- 復職後も定期的な面談でフォローし、記録を残す
- 本人・上司・人事の三者が連携して進める
という流れが基本です。
上本町社会保険労務士事務所では、復職支援プランのひな形作成、段階的復職の運用方法のアドバイス、就業規則への復職支援制度の規定追加などを通じて、再発を防ぐ復職支援の仕組みづくりをサポートしています。
「復職支援プランを初めて作る」
「以前復職させたら再発してしまった」
そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

