残業代の未払いを指摘された!正しい計算方法と遡及対応は?

ご相談内容【想定相談事例】

大阪市内で従業員25名の製造業を経営しています。先日、退職した元社員から「在職中の残業代が支払われていなかった」として内容証明郵便が届きました。

確認すると、残業時間を30分単位で切り捨てていたことや、役職手当を残業代の計算から除外していたことが判明しました。どのように計算し直せばよいのか、どこまで遡って支払う必要があるのか教えてください。

お悩み

  • 残業代の正しい計算方法は?
  • 何年前まで遡って支払う必要がある?
  • 今後同じ問題を起こさないための対策は?

結論:残業代は「1分単位・正しい基礎賃金」で計算。時効は原則3年で、放置するほどリスクが増大する

結論から申し上げますと、残業代は1分単位で計算することが原則であり、端数の切り捨ては違法です。また、時効は2020年4月以降の賃金について原則3年に延長されており、早急に計算し直して対応することが重要です。

未払い残業代対応のポイント
① 残業代は「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間(1分単位)」で計算する
② 基礎賃金から除外できる手当は法定の7種類のみ。役職手当・資格手当などは含める
③ 時効は原則3年(2020年4月以降の賃金)で、将来的に5年へ延長の可能性がある
④ 指摘を受けたら、まず事実確認・計算し直し・誠実な対応が最善策

「うちは問題ない」と思い込んでいる場合でも、計算方法に誤りが潜んでいることが多くあります。

残業代の正しい計算方法

基本の計算式

残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間数

① 残業時間は1分単位で計算する

15分・30分単位での切り捨ては違法です。「18:17退勤→18:00として計算」ではなく、17分分の残業代を支払うことが必要です。

② 割増率

労働の種類割増率
法定時間外労働(月60時間まで)25%以上
法定時間外労働(月60時間超)50%以上
深夜労働(22時〜翌5時)25%以上
法定休日労働35%以上
法定時間外+深夜50%以上

③ 基礎賃金の計算

月給制の場合の計算式は次の通りです。

時間あたりの基礎賃金 =(月給 − 除外できる手当)÷ 月の所定労働時間

除外できる手当は次の7種類のみです。

  • 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

役職手当・資格手当・皆勤手当・精勤手当などはすべて基礎賃金に含める必要があります。

計算例

  • 基本給:22万円、役職手当:2万円、通勤手当:1万円、月所定労働時間:160時間、月45時間の時間外労働
  • 基礎賃金:(22万円+2万円)÷ 160時間 = 1,500円/時間
  • 残業代:1,500円 × 1.25 × 45時間 = 84,375円

遡及請求の時効:何年前まで戻れるか

現行の時効は原則3年

2020年4月の労働基準法改正により、賃金請求権の時効は原則3年に延長されました。

対象期間適用される時効
2020年3月31日以前の賃金2年
2020年4月1日以降の賃金3年

2026年5月現在、最大で2023年5月まで遡った分が請求対象になります。

また、将来的に5年への延長が検討されており、放置するほど遡及リスクが拡大します。

指摘された場合の対応

ステップ①:事実確認と自社計算の見直し

感情的にならず、勤怠記録と実際の残業時間を照合し、基礎賃金の計算方法・端数処理の誤りがないか確認します。

ステップ②:金額を計算し直す

正しい方法で過去3年分を月ごとに計算し直します。計算が複雑な場合は社労士に依頼することをおすすめします。

ステップ③:誠実に対応する

未払いが判明した場合は、速やかに支払いの意思を示します。対応が遅れると遅延損害金(在職中:年3%、退職後:年14.6%)が加算され、会社の負担が増大します。

ステップ④:労働基準監督署への対応

元社員が監督署へ申告した場合は、勤怠記録・給与明細・就業規則の提出を求められることがあります。誠実な対応が原則です。

よくある計算ミスのパターン

会社側が気づかないまま誤りが続いているケースには次のものが挙げられます。

  • 残業時間の切り捨て:15分・30分単位での切り捨ては全て違反
  • 固定残業代の設計ミス:固定残業代を超えた部分の追加支払いをしていない
  • 年俸制・管理職への誤解:年俸制でも時間外割増は必要。「名ばかり管理職」も同様
  • 手当の除外ミス:役職手当・皆勤手当などを基礎賃金から除外している

よくある質問

Q1:「固定残業代を払っているから大丈夫」は本当?

A:固定残業代を超えた分の追加支払いは必要です。また、時間数・金額が就業規則・雇用契約書に明示されていない場合は無効と判断されることがあります。

Q2:退職した社員からの請求にも応じる必要がある?

A:時効(原則3年)内であれば、退職後でも残業代の請求は有効です。正当な請求には支払い義務があります。

Q3:支払いを拒否した場合のリスクは?

A:裁判では未払い残業代に加えて付加金(最大で同額)の支払いを命じられる場合があります。早期解決が会社にとっても有利です。

まとめ

残業代の未払い問題については、

  • 残業代は「基礎賃金 × 割増率 × 残業時間(1分単位)」が原則
  • 基礎賃金から除外できる手当は法定の7種類のみ
  • 時効は原則3年で、将来的に5年への延長も検討されている
  • 指摘を受けたら事実確認・再計算・誠実な対応が最善策
  • 定期的な給与計算の点検と勤怠管理の整備で再発を防ぐ

という流れが基本です。

上本町社会保険労務士事務所では、残業代計算の点検・見直し、就業規則・賃金規程の整備、労働基準監督署対応のサポートなどを通じて、未払い残業代リスクの解消をお手伝いしています。

「残業代の計算が正しいか不安」
「未払いの指摘を受けてどう対応すればよいか分からない」

そんなお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。

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